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『珍遊記』脚本・おおかわら&松原秀インタビュー「原作をリスペクトしすぎて難しかった」

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1990年より週刊少年ジャンプにて連載され、シリーズ累計販売部数約400万部を記録した、唯一無二の存在感を放つ孤高の漫画家・漫☆画太郎による伝説のギャグ漫画「珍遊記~太郎とゆかいな仲間たち~」が、まさかの実写映画化。映画『珍遊記』が現在大ヒット上映中です。

天下の暴れん坊である不良少年・山田太郎(ピエール瀧)は、通りすがりの坊主・玄奘(倉科カナ)と壮絶なバトルを繰り広げた結果、妖力は消え去り、3本の髪の毛を持つ子ザルに姿を変えられてしまった。本作では、玄奘(倉科カナ)と渋々天竺を目指すのだが……。

本作で脚本を務めたのは、2013年 キングオブコント準優勝など大人気のお笑いトリオ「鬼ヶ島」のおおかわらさん、『銀魂』『おそ松さん』等のアニメの脚本を手掛ける、作家の松原秀さん。山口雄大監督に『珍遊記』映画化の話を聞いた時は「頭おかしい」と思ったというお2人。作品について色々お話を伺ってきました。

―ガジェ通側の質問はここに―本作『珍遊記』が実写化というまさかの企画ですが、最初にお話を聞いた時は驚かれませんでしたか?

松原:最初は僕が山口監督と知り合いで、いつか仕事一緒にしようね等と話していたのですが、ある日「映画やる?」って言われて、それが『珍遊記』って聞いて、頭おかしいな、最高だなと(笑)。鬼ヶ島のコントはほぼ、おおかわらさんが書かれているのですが、僕が共同で書かせていただいた事があって、監督の好みだと思ったので「鬼ヶ島 イン ワンダーライブ」というライブにお誘いしたんですね。その中で一本すごく気に入ったのがあって、それで……。

おおかわら:まあ、松ちゃん(松原さん)言いづらいと思うけど、パッキパキにすべったんですね、そのネタ。「世界の終わり」っていうタイトルで(笑)、ただ僕が女装した相方にずっとセクハラするっていうだけのネタですけど。

松原:でもそれが監督は大のお気に入りで。

おおかわら:「なんでこれがウケないんだ!」ってかなり不満そうだったもんね。

松原:それで「このネタ書いてるの誰?」と聞かれたので、おおかわらさんをご紹介して。

おおかわら:今でも覚えていますよ、ライブの後渋谷の焼肉屋さんでね、「脚本をやってみないか?」と。そんな簡単に?!と驚きましたし、『珍遊記』と聞いて、青天の霹靂というか「えっ、何それ?!」って感じでしたね。

―山口雄大監督とはすぐに意気投合されたのですね。

おおかわら:監督も10年、20年映画監督をやられていて、自分がやりたい事を突き詰めてきて、最近仕事が無いと。「もうちょっと分かりやすく表現していく作業って大事だなと思ってる」とおっしゃってたんですね。それで僕らの事を同じ境遇なんじゃないかと思って、と言っていて、まさにそうだったんですね。監督とは価値観が似ているというか。

―2人で脚本を執筆するのは難しく無かったですか? 意見がぶつかったりとか。

松原:僕にとっておおかわらさんは先輩ですけど、めちゃくちゃやりやすかったんですよね。もちろん意見が異なる時もありましたけど、話し合いすればするだけ良い物が出来上がってきて。

おおかわら:僕もすごく楽しかったですね。大変だったのは尺くらいで、90分、100分という長さに心が折れそうになる事はありました。

―実際にお2人で顔を合わせて作業していたのですか?

おおかわら:24時間やっているラーメン居酒屋で軽く飲んで、監督の悪口言って、書いてました(笑)。

松原:「帰らなくて良いんですか? おおかわらさん、明日に響きますよ!」「もう、一杯だけお願い」なんてやりとりしながら。もう1年くらい経っていますけど、鮮明に思い出しますね。だいたい一ヶ月でギュッとつめて書いたので、書く前の準備に時間がかかったという感じでしょうか。

おおかわら:板の上だと、本を書いて小道具用意して自分が演者になるだけで良いんですけど、実写映画の場合は予算とかキャスティングとか、“待ち”の時間が結構長かったですね。

―おおかわらさんはお笑いの世界で、松原さんは放送作家やアニメの構成・脚本の世界で活躍されていますが、実写映画で感じた大きな違いってどんな事がありますか?

おおかわら:まず、当て書きが出来ないという所でしょうね。鬼ヶ島のコントだと「あいつがこういう台詞を言ったら面白いな」というのが出来ますけど、今回脚本を書いた時にはまだキャスティングが決まっていなかったので。

松原:そこらへんを監督が後から調整してくれた、という感じですね。後は実写映画というのもそうですが、原作物を脚本にするというバランスが難しかったですね。人が書いた物、しかも超有名作を、言い方は悪いですけどいじくらないといけないというのは大変な事ですよね。ここまで変えたらファンに嫌われるかな? とか、でも公開の時期は今だからアレンジしたいしなあ、とか。

おおかわら:原作をリスペクトしているからこそ、実写化は絶対不可能だと思っていたので、ある程度は別物として考えていた所はありますね。『珍遊記』の面白さって漫画のコマ振りだからこそ出来る演出もあったりとか。基本的な設定はもちろん残しますが。

―主演の松山ケンイチさんをはじめ、キャスティングを聞かれた時にはとても驚いたのでは無いですか?

松原:原作の山田太郎ってヴィジュアルにインパクトがあるし、突然出す大声が面白かったりするので、実写になったときにどうキャラクター性を表したらいいんだろうっていうのが、結構大きなハードルだったんです。しかも、太郎ってただ悪いヤツというわけではなく、意外と男気を見せることもあるので。だけど松山ケンイチさんと聞いて「キャラが立つ。これなら大丈夫だ」って、正直ホッとしましたね。

おおかわら:松山さんに決まりました、と聞いた時は「ああ大丈夫だ」って2人で思ったよね。原作でも、太郎って実は人格や感情が見えないキャラクターなんですよね。でも原作モノだからあまり太郎はいじりたくなかった。その分、龍翔(溝端淳平)は映画オリジナルのキャラクターなので感情をつけるのが楽しくなっちゃいましたけど(笑)。太郎のキャラクター性は、松山さんにお任せしちゃってる部分が大きいです。

―お坊さんの「玄奘」が倉科カナさん、というのも度肝を抜かれるキャスティングですよね。

松原:玄奘ってお坊さんだけどセリフがけっこうドギツイので、最初から3人で「女性がいいね」って話してました。女性が言うことでギャップが出て、セリフが際立つ気がしたんですが、倉科カナさんのおかげで最高なものになりました(笑)。もうあの冒頭のシーンがあるだけで、もらったって思いました。

おおかわら:あれは本当に倉科さんで良かった! 今回は、僕も謎の怪しい役で出演させてもらってるんですけど、アレは本当に必要だったのかという(笑)。あと、相方のアイアム野田も結構おいしい役で出させてもらっていて、長年一緒にやっている身としては「野田を大スクリーンで観る」というのは感慨深かったですね。野田が演じたたけしはまさに野田のためにあるような役なので。普段のコントでもほぼああいうキャラクターなので、ぴったりだなぁと思いましたね。今野浩喜さんも、ほぼ当て書きですね。

松原:本当に豪華なキャストで有り難かったですね。欲を言えば、ピエール瀧さんの特殊メイク無しver.も見たかったです。

―今回一緒にお仕事をされた中で、お互いにここがすごいなあと感じた事はありますか?

おおかわら:僕は「ト書き」(セリフの間に俳優の動き、照明・音楽・効果などの演出を説明したり指定する文章)の書き方も知らなかったので、松ちゃんがサラサラ〜っと書いていくのが本当にすごいな、って。脚本の基礎的な部分を教えていただきましたね。

松原:僕はおおかわらさんの書くセリフ、会話のやりとりが本当にすごいなと思って。ファンタジーだけどリアリティがあるというか。ファンタジーなシーンでケラケラ笑ったと思ったら、人間性むき出しのリアリティさにギョっとしたりとか、セリフだけで物語が出来ているのが、さすが芸人さんだなと。

おおかわら:なんだろう、こんなに褒められると全く悪い気がしないですね!

―お2人のお話を聞いていると、本当に良い雰囲気で脚本を書かれたんだなと感じます。今日は楽しいお話をどうもありがとうございました。

『珍遊記』ストーリー
天竺を目指して旅を続けていた玄奘(げんじょう)は、偶然立ち寄った家の老人から、天下の不良少年・山田太郎を更生させて欲しいと頼まれる。宝珠の力で太郎の恐るべき妖力を封印した玄奘は、嫌々ながらも太郎を引き取り、ともに旅をすることになるが……。

(C)漫☆画太郎/集英社・「珍遊記」製作委員会

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記者:

映画・アニメ・美容に興味津々な女ライター。猫と男性声優が好きです。

ウェブサイト: https://twitter.com/ZOKU_F

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