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チェルノブイリの場合「薪」のセシウム基準値はどうなっているのか?――五山送り火「薪」問題

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「国連チェルノブイリ・フォーラム環境報告書(2006)」表4.8

京都五山送り火の「薪」問題では、「国内では基準がない」という話が報じられていた。それではチェルノブイリの事故が発生したロシアではどうなのだろうか。

冒頭の画像の表を見ていただきたい。「国連チェルノブイリ・フォーラム環境報告書(2006)」に掲載されている表だ。これはロシア健康省が1997年に出した基準値であり、ロシアにおける木材・木材製品に含まれるセシウム137の暫定許容基準値がこれでわかる。これをボランティア有志の方々が日本語に翻訳したものがあるのでご紹介する。

■ロシアにおける木材及び木材製品中のセシウム137に対する暫定許容基準値(ベクレル/キログラム)
樹皮を含む丸材 11100
樹皮を剥いだ切断前の材木 3100
切断後の木材(板材) 3100
建設用木材 370
パルプ及び製紙用木材 3100
家庭使用及び産業加工用の木材製品 2200
包装及び食品保存用木材製品 1850
燃料用木材 1400
キノコ及び森林小果実(採取直後重量) 1480
キノコ及び森林小果実(乾燥重量) 7400
薬用植物及び薬用原材料 7400
樹木・低木の種子 7400

※この表は「国連チェルノブイリ・フォーラム環境報告書(2006)」表4.8をボランティアの方が翻訳したものです

「燃料用木材」という項目に注目して欲しい。暫定許容基準値は1400ベクレル/キログラムとなっている。薪もここに相当する。つまりロシアでは1400ベクレル/キログラムの薪は使うことはできない。京都市で検査し問題となった松の薪の表皮からは「1130ベクレル/キログラム」の放射性セシウムが発見されたと報じられている。この数値はロシアのこの暫定基準値と照らし合わせれば下回っており、使用可能な数値だということができる。ただ京都の送り火の場合は「野焼き」だという点には留意する必要があるだろう。尚、林野庁は12日、福島県に対して県内の薪の管理状況調査と利用・譲渡の自粛を要請した。しかしどのような数字に基づいて規制をおこなうのか。その基準は未だに決まっていない。

この件に関して、福島原発事故後いちはやく「放射能漏れに対する個人対策」というテキストを公開し多くの人に読まれたスウェーデン国立宇宙空間研究所(IRF)の山内正敏氏にコメントをいただいた。

チェルノブイリでは薪の放射能汚染が1400Bq/kg以上だったら使用禁止です。薪が生活必需品であるにもかかわらずです。なぜなら灰や火の粉の吸い込みが危険だからです。さらに放射線に対して警戒している地域であればそれなりの心構えがあるでしょうが、安全なはずの土地で薪を燃やしてしまうと心構えが足りずに危ないことになりかねません。特に灰が残っていると、子供がその灰を吸い込む危険があります。逆に言えば、灰の回収をきちんとするという条項を国が作れば問題ない筈です。そもそもの問題の発端は、国が未だにこの手の基準を示していないことじゃないでしょうか。それだけでなく、チェルノブイリで使われている暫定基準すら公表していない(翻訳していない)ことに問題があります。私自身も灰の危険性や回収の必要性に関する知識は全て「国連チェルノブイリ・フォーラム環境報告書(2006)」から得ました。
(IRF 山内正敏氏のコメント)

チェルノブイリを教訓として関連する資料を翻訳するだけでも確かに参考となるだろう。いつもながらの素人考えで恐縮だが、それを暫定として参考にし、順次日本での基準を固める、という進め方ではダメなんだろうか。

ちなみに上で紹介した「国連チェルノブイリ・フォーラム環境報告書(2006)」であるが、この資料はボランティア有志が日本語訳をおこなっている。しかし現在、残念ながらこの日本語訳の公開には「壁」がある状態。実はこのボランティアによる翻訳に関して、IAEAが日本政府に翻訳内容の保証を求めているのだ。しかし外務省によればそれに対応できるリソース(人員・予算)がなく、対応が困難な状態。というわけで、そこで日本語訳公開の話が停滞してしまっている。報告書の内容が「都市汚染、農地汚染、動物汚染、森林汚染、河川・湖沼汚染、地下水汚染、海洋汚染、それぞれへの対策」と多岐にわたっており、それを一手に確認できる所が国内にはほとんどないのだ。

現時点でも今回のような一部引用は可能ということなのでご紹介させていただいたが、はやく全文日本語訳が公開されこの貴重な「チェルノブイリの教訓」が日本で広く活用される日が早く訪れて欲しいと思う。

参考)
『ENVIRONMENTAL CONSEQUENCES OF THE CHERNOBYL ACCIDENT AND THEIR REMEDIATION: TWENTY YEARS OF EXPERIENCE』 Report of the Chernobyl Forum Expert Group ‘Environment’ (IAEA,2006)

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深水英一郎(ふかみん)

記者:

見たいものを見に行こう――で有名な、やわらかニュースサイト『ガジェット通信』発行人。トンチの効いた新製品が大好き。ITベンチャー「デジタルデザイン」創業参画後、メールマガジン発行システム「まぐまぐ」を個人で開発。利用者と共につくるネットメディアとかわいいキャラに興味がある。

ウェブサイト: http://getnews.jp/

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