8月1日から規制が入るFXは、もう終わりなのか?

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FX Trading

FXの新しいルール、何がどう変わる?

2006年頃から大きなブームとなり、株取引に次いでおなじみになったオンライントレード、FX(外国為替証拠金取引)。今でも人気は根強く、口座開設数・取引量ともに増加し続けています。

FX最大の魅力の一つが、「高いレバレッジ」です。レバレッジとは、FX会社の口座に実際に入金している金額よりも、多額の金額を動かせる仕組みのこと。そのため、少ない投資金額で大きなリターンを得ることが可能です。

そのFXに、この8月1日から大きなルール変更が起こります。FX口座を開いて取引をしている方は、既にFX会社からの通知を受け取ってご存知でしょう。そう、FXの大きな魅力「高いレバレッジ」が、「最大25倍まで」制限されることになるのです。

「レバレッジ最大25倍」で規制完了

かつてレバレッジは、何百倍の高さであろうと許されていました。国が特に規制を設けていなかったからです。しかし内閣府令の改正によって「高いレバレッジ」に大幅な規制が入ることになり、どのFX会社でも等しく適用されることになってしまったのです。

この「レバレッジ規制」は2段階で進行しています。まず第1弾は1年前の2010年8月1日、最大レバレッジが50倍になりました。そして第2弾が今回、2011年8月1日の「最大レバレッジ25倍」というルール変更です。これをもって、国のFXレバレッジ規制はひとまず完了というわけです。

国が定めて全FX業者に命じた通達ですから、取引ルール変更内容は、各社でそんなに違いはありません。要するに、最大レバレッジが25倍まで下がるから同意してね、それ以上のレバレッジはダメですよ、ということです。ただし、FX取引を続けるには変更に伴う再承諾が求められますので、取引しているFX会社から来る通知を必ず確認・同意してください。こればかりはもう、仕方ありません。

簡単に「レバレッジが最大50倍から25倍に下がる」と言いますが、投資家にとってはかなりの痛手です。今までどおりの金額で取引を続けたければ、FX会社の口座に預けておく資金を2倍にしなければいけないからです。

アメリカ債務問題で、先行きは全く不透明

こうしたことから、長年FXをしている人の話や、ネットでの書き込みを見聞きすると「最大レバレッジが25倍だなんて、FXはもうオシマイだ!」という声が時々あがっています。

でも、本当にそう言い切ってよいのでしょうか?

今ちょうど、アメリカの債務問題がかつてないほど危機的な状況に陥っています。それもあって、この原稿を書いている7月30日現在、対円での米ドルレートは、東日本大震災の直後につけた戦後最安値「1ドル=76.25円」を今にも超えそうな勢いです。そのくらい、猛烈に円高ドル安が進んでいる状況なのです。

FXをかじったことのある方ならお判りかもしれませんが、為替レートには「なかなか超えにくい壁」のようなラインが存在します。米ドル/円に関していえば、今そのラインがまさに「1ドル=76.25円」になっているのです。なかなか超えそうで超えません。でも、この「壁」をいったん超えると堰を切ったように、円高ドル安が加速度的に進む可能性が高いです

もちろん、国際社会が共同で市場介入するでしょうが、為替市場は完全にコントロールなどできません。一度「戦後最安値」を大きく超えてしまったら、次に目安となる「壁」が全く存在しなくなるのです。そのため、1ドルが何円になるかなんて、誰も見当もつかないという状況になるでしょう。

為替レートが激動するなら、規制の悪影響は低下

輸出で国の経済が成り立っている日本にとっては、大変な経済的ダメージです。せっかく売上が上がっても、為替レートのせいで台無しになって、国内企業の業績は悪くなります。さらに円高が続けば、間違いなく日経平均株価も下がり続けるはずです。

でも、そうした社会的なことはいったん置いておくなら……あくまでも個人としてFXトレードに徹するという視点に立つなら、「為替レートの激変」は儲けやすくなることを意味します

事実、東日本大震災直後に円高が急激に進んだ時には、凄まじい為替レートの変動が起こりました。日本時間の3月17日早朝、たった30分間で、実に1ドル3円以上も動いたのです。短時間でそれだけ動いたということは、一瞬で大儲けした人もいれば、再起不能の大損をした人もいるということです。

今、奇しくも「レバレッジ規制」と「戦後最大クラスの円高」が、同じタイミングでやってきました。いくら最大レバレッジが下がったといっても、為替レートそのものが激変するのなら、「円売り」でも「円買い」でも大きくリターンを得る可能性があるのです

もちろん、それだけ為替が急変するということは、それに伴ってリスクも急上昇することを意味します。昔からある格言に「休むも相場」という言葉があります。「一攫千金を狙ってFXに全部突っ込んでやる!」というような考えはあまり持たず、ひと段落するまで様子を見るというスタンスでいれば、壊滅的な打撃を被ることはありません。

このように、いくらFXに規制が入って取引ルールが変わっても、今は為替レート激変の時期です。レバレッジ規制がキツくなったからといって、「FXはもう終わり」と結論づけるのは早合点、ということだけはハッキリしているのです。

※画像: FX Trading / shibuya246 / http://www.flickr.com/photos/shibuya246/3495782013/

※この記事はガジェ通ウェブライターの「池沢智史」が執筆しました。あなたもウェブライターになって一緒に執筆しませんか?
Webディレクター、個人トレーダーなどをこなしつつ、心の拠りどころはテキスト書き。執筆ジャンルは投資全般で、日本株・FXに関しては単著もあります。サッカーくじ・totoも「投資」だと言い張ってJリーグの試合に一喜一憂する、平和な日々を過ごしています。

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