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『誰が小沢一郎を殺すのか?』著者と小沢氏本人が対談 全文書き起こし

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  『誰が小沢一郎を殺すのか?』――この衝撃的なタイトルの本を上梓したオランダ人ジャーナリストのカレル・ヴァン・ウォルフレン氏は、官僚・マスコミ・検察に代表される「非公式権力」によって、民主党の小沢一郎元代表が”抹殺”され続けていると日本のシステムを分析・紹介した。そのウォルフレン氏と小沢氏本人が2011年7月28日、自由報道協会主催の公開討論会で対談。本の感想について「私が露骨に言えないことを正確に言っていただいた」という小沢氏が、ウォルフレン氏とともに東日本大震災と原発事故対応、菅首相と民主党の問題点、検察、金融などさまざまなテーマについて、日本人の特性と日本社会への提言を織り交ぜながら語り合った。小沢氏の口からは「お悔みを申し上げるのが政治家の仕事なのか?」「菅さんは私の常識では理解できない」など、刺激的な言葉も飛び出した。

 以下、番組での小沢氏とウォルフレン氏のやりとりを全文、書き起こして紹介する(討論会の司会はジャーナリストの上杉隆氏)。

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http://live.nicovideo.jp/watch/lv57454701?po=news&ref=news#09:30

■「日本人のあり方」が日本国の大きな資源

上杉隆氏(以下、上杉): 公開討論会を始めたいと思います。その前にウォルフレンさん、一言ごあいさつを頂けますか。

カレル・ヴァン・ウォルフレン氏(以下、ウォルフレン): 今日はこのような機会をつくっていただき、お招きいただいたことを大変うれしく、また光栄に思っている。日本は第二次世界大戦以降、最大の災害に接した。災害に対する日本の皆さんのあり方と措置は、世界中の人たちの心の琴線に触れた。それは皆さんが冷静に対応されたことからだと思う。

 この大災害に対して、日本の皆さんが心してあたったことで、国際的には日本人の威信が高くなったと思っている。災害に瀕して、非常に尊厳を持って、秩序正しくあたられた。お互いに「大変だった」という言い方をせず、お互いを助け上げる、引っ張り上げるような対応だった。「日本の人たちはすごいな」ということを、多くの友人から聞いた。その時も、そして今も思っているのだが、日本の皆さんのあり方、これが日本の皆さんにとって、また日本の国にとって大きな資源だと思っている。

 この数年、日本の私の友人からは、「本当にイライラしてどうしようもない」という話を聞く。政権も交代したのだし、「何とか政治の体制、構造が変わってほしい」と、「より良い制度ができることを期待していたのに・・・」ということを聞いている。こういう大災害に接した時こそ、何か壮大なことができる、ひとつの大きな窓が開かれたという気がする。それを可能にする資源というか材料というのは、日本の皆さんの中にあると思う。そういう壮大な何かをしなければならない、今がその時期だ、という話を今日はできればと思って来た。

 個人的なコメントをさせていただくが、家内と私は災害(東日本大震災)が起きたあの時期、日本にいなかった。普通は日本にいて、この本(『誰が小沢一郎を殺すのか?』)が出版された時期でもあったから、通常であれば日本にいたのだが、息子がちょうど誕生したので、たまたま日本にいなかった。そういう時に災害が起きた。家内と私は「日本にいるべきだった」という気持ちがした。それだけ日本に対して深い気持ちを持っていた。日本の市民ではないし、日本の国籍を持っているわけではないけれど、日本をそれだけ近く感じているという立場からお話させてもらいたい。

■お悔みを申し上げるのが政治家の仕事なのか?

上杉: まずは「3.11」の震災について、その震災後のことについてお話を頂ければと思う。今ウォルフレンさんからお話いただいたので、小沢さんの方から。「3.11」の国を揺るがすような大震災以降、どうも既存メディアでは小沢さんの影が見えなかったのでは、何もしていないのではないか、という声もあった。果たして小沢さんはどのような活動をされていたのか。「3.11」の発災以降のことも含めて、お話をいただければと思う。

小沢一郎衆院議員(以下、小沢): 今度のいまだかつて経験したことのないような大災害、私も被災県の岩手県の出身だけれども、特に福島県の原発の損壊と放射能汚染の問題、それが非常に深刻な事態だと、私は当初から機会ある度に訴えてきた。このような時にあたって、今ウォルフレンさんが指摘されたが、世界でも非常に評価されるような日本人の長所が発揮されていると同時に、日本人の欠点も露呈されているというのが、正直なところではないかと思っている。長所というのは、それは一般的に言われているように、こんな大災害にもかかわらず、みんな一生懸命力を合わせて復興のために頑張っていること。その忍耐と努力と、そして能力というのは、当然日本人として誇っていいことだと思っている。

 ただ、放射能汚染といういまだかつて(ない)、ある意味においてはチェルノブイリやスリーマイル以上に、非常に大きな危険性を秘めているこの原発の事故と放射能汚染の拡大――。これほどの大きな深刻なことになると、単なる個人的な力の発揮ということ以上に、本来もっと国家として前面に立って、そして英知を集めて思い切って対策を講じていく仕組みと姿勢が必要だと思う。けれども、どうもその意味において、政治の面だけではなくて、一般の国民の中からもそういった強い要求というか、動きというものがなかなか出てこない。まさに非常に日本的な現象だと思っている。ほかの国ならば、こんなに黙って現状を見過ごしているような国民は多分ないだろうと思う。大きな大きな国民運動にまで広がりかねないと思うが、そういう(大きな運動にならない)ところがちょっと日本の国民性というか不思議なところであって、「まあまあ」という中で個人が一生懸命頑張っている。

 上杉さんがマスコミの話をしたけれども、マスコミ自体も、政治が何をすべきか、政治家が何をすべきかと(報じない)。お見舞いに現地を歩くのが政治家の仕事なのか? お悔やみを申し上げるのが政治家の仕事なのか? というふうに私はあえて憎まれ口をきくけれど、やはり政治の役割というのは、そういうことではないと思う。このような深刻な事態をどのようにして克服していくか、そのためには政治の体制はどうあるべきなのか、政治家はどうあるべきなのかと考えるのが、本当に国民のための政治家のあり方だと私は思っている。そういう意味で、今後もいろいろとご批判は頂きながらも、私の信念は変わらないので、その方向で頑張りたいと思う。

■財源があろうがなかろうが、放射能を封じ込めろ

上杉: 引き続いて、お二方に質問を。自由報道協会の面々は発災直後から現地に入り、取材活動をずっと行ってきた。その取材の中で相対的に、結果としていま現在、県単位で見ると岩手県の復興が意外と進んでいるという報告が上がってきている。おべんちゃらではなく。(小沢氏の)お膝元の岩手県の復興が進んだという見方もできるが、一方で岩手県だけがそういう形で支援が進めばいいのかという疑問もある。そこで、これはウォルフレンさんと小沢さんお二方に伺いたい。仮に現在の菅政権ではなく、小沢一郎政権だったらどのような形で国を復興させたのか。また、もし小沢一郎総理だったら、具体的な方法としてどのような形で今回の震災に対応したのか。ご自身のことでお答えにくいかもしれないが、まず小沢さんから。

小沢: 岩手県の震災復興の進捗具合が大変良いとお褒めいただいているが、別にこれは私が岩手県にだけ特別何かしているということではない。ただ、それぞれの国民あるいは県民の努力と同時に、地域社会を預かっている知事はじめ、それぞれの任務にある人たち、トップが先頭に立って、そしてその下で皆があらゆる分野の活動で一生懸命やっている。岩手県が他の県に比べて良いとすれば、そういう体制がきちんとされているので、復興の進捗状況が良いと言われている理由ではないかと思っている。

 私の場合は、かてて加えて原子力ということ、放射能汚染ということを強く主張している。これはもちろん東京電力が第一義的に責任を持っていることは間違いのないことだけれども、日本が政府として国家として、原子力発電を推進してきたことも事実だし、原発の設置運転等については許認可を与えている。そういう意味から言っても、また今日の放射能汚染が依然として続いているという非常に深刻な事態を考えると、東京電力が第一義的責任者だといって済む状況ではないのでは。東京電力にやらせておいて、政府はその後押しをしますよ、支援しますよというシステムでは、本当に国民・県民の生活を守っていくことはできないのではないか。

 やはり政府、国家が前面にその責任をもって、最も有効と思われる対策を大胆に(行う)。これはお金がいくらかかる、かからないの問題ではない。メディアも含めてすぐ財源がどうだなんていう話が、また一般(財源)の時と同じような繰り返しの話ばかりしているが、そんな問題ではない。極端な言い方をすれば、財源があろうがなかろうが、放射能汚染は何としても封じ込めなければいけない話で、それは国家が政府が、前面に立って全責任でやる。私はそういうシステムを、仕組みをもっともっと早く、今でも遅くないから構築すべきだと思っている。今なお、東京電力が第一義的責任というやり方をしていたのでは、多分解決しないのではないかと思っている。

■菅さんは一人で何でもできると思い込んでいる

上杉: ウォルフレンさん、同じ質問だが、もし菅総理ではなくて小沢一郎総理だったら、この震災に対してはどうなっていたか。

ウォルフレン: いろいろな面があると思うが、まず3月11日にあの災害が起きた当時、私は阪神・淡路大震災の時と比べて政府の対応はどうだったかと、直感的に思った。当時の政府の対応と比べて、今回はずっと早く迅速に動いたという気がした。私はそのストーリーを書き、世界中に報道された。その時に私が言ったことは、「半世紀続いた一党体制が崩れて、新しい民主党という政党のもとに政権が建った。その政権は本当に国民のことを、人のことを大事に考えて中心に置いている」という書き方をした。ところが、せっかくの初動後の時間が経過するに従って、壮大な画期的な改革をする機会が与えられたにも関わらず――それはキャリア官僚の体制の上に政治的なコントロールを敷くということだったが――そこに至らないでズルズル時間が経ってしまった感じがする。

 なぜ、そうなってしまったのかを考えたわけだが、1993年という年以降、政治の改革をしようと集まった政治家たちが、新しい民主党という党をつくった。そして官僚体制に対して、政治がきちんとコントロールしよう、今までなかった真摯な政府をつくろうという人たちだったのに、どうなってしまったのかと思った。何が起きてしまったのか、正直いって私自身は分からない。ただ、ひとつ考えられるのは、首相が一人で何でもできると思ってしまっているのではないか、ということ。数日前に日本に来て、その間多くの方々といろいろ話をして感じたのは、どうも菅さんは、時々いいアイデアもあるのかもしれないが、それを自分一人でやるだけの政治力があると思い込んでしまっているのではないか、ということだ。

 菅さんにしても、誰であっても、一人ではとてもできないことではないか。災害に対処しながら、また原発事故に対処しながら、今までの官僚体制に政治がコントロールしていく――それを同時にやるのは大変なことだ。細かいことは存じ上げないが、原発事故が起きたということは、多くの人たちが新しいところで生活を始めなければならない。再定着が必要になってくるわけだから、政治家一人ではとても負えるものではない。民主党をつくった人たちが、官僚制度の上に政治的なコントロールを敷こうと、そして本当に政府をつくろうと、同じ志を持った民主党の政治家たちがお互いに、一緒に協力をしていかなければできないことなのだ。

 災害が起きる前年、去年の秋だったけれど、少なくとも三人(小沢氏、鳩山由紀夫氏、菅直人氏)のトロイカ体制という話を聞いた時に、ある意味では当たり前だが、私はすごく良いアイデアだと思った。明治維新ひとつをとってみても、一人で誰がやったというわけではない。志を同じくした人たちが、一緒にやったことだった。戦後の復興にしても同じ。皆で一緒にやって初めてできたこと。半世紀に渡って一党支配の体制を崩した新しい政党が、新しいシステムをつくる。それにはトロイカであれ、グループであたっていかなければならないと、私は去年思ったものだ。

 小沢政権ができた場合に、この災害にあたってどう対応されたかのは分からない。けれども、私は小沢さんは「官僚を制する」というよりは、「官僚と一緒に仕事をする」能力がある方だと思っているし、権限の委譲もできるし、官僚の下に置かれることは絶対にない方だと思っている。小沢政権ができた場合には、きちんと然るべき人たちと協調体制のとれた対応をとっていかれるのではないかと思う。

■現状を維持しようとする日本の免疫システム

上杉: (ウォルフレン氏が書かれた)『誰が小沢一郎を殺すのか?』という本のタイトルも衝撃的だが、その中で小沢一郎さんに対して、日本国内の権力構造が”人物破壊”のキャンペーンを張っているとウォルフレンさんは指摘している。「世界的に類を見ない人物破壊」――少し聞きなれない言葉だが、ウォルフレンさん、せっかくだから小沢さんが横にいらっしゃるので、この本で書ききれなかったこと、そしてぜひ聞いてみたいことを質問してはどうか。

ウォルフレン: 前にも言ったように、私は特別小沢さんを知っているわけではないし、友人ということでもない。小沢さんよりはむしろ、菅さんの方をよく知っているし、それよりさらに鳩山さんを知っている、ということが正しいかと思う。私が関心を持っているのは、政治体制をきちんと制する、その現象をもたらすためのタレント・才能を持った方、こういう有能な人を抹殺するというメカニズム、そのシステムに非常に関心を持っているわけだ。

 この(日本の)マスコミの問題というのは、不思議な逆説的な現象を呈している。マスコミの主流派は「政治的なリーダーシップが欠如している」「なぜ、そういう政治家が出てこないのか」と言うが、出てくるとその人を抹殺しようとする。なんて奇妙なシステムだと思っている。私はマスコミ自体が悪いからそうなっているとは言わない。ただ、どうも「既存の秩序を守る」――それが自分たちの義務であるかのようにマスコミが思っているのではないか。20年~25年、私はいろんな官僚やシニア編集者の方々と会い、話し合う機会があった。彼らはどうも秩序が覆ることや、それが脅かされることに対して、恐れを感じている。現体制を何としても守りたい、という気持ちがあるのではないか。

 また検察の小沢さんに対するやり方というのは、外から見ると、本当に馬鹿げていると言わなければならない。だから「日本には免疫システムがあるのだ」というふうに言うわけだ。私があえて「民主党政権になっても、小沢さんが首相にはならない」と予測したのは、2009年の春だったと思うが、先ほど言った”現状を維持しようという免疫システム”が存在しているから、そう思ったのだ。名前を忘れてしまったけれど、自民党のある人が私に漏らした。「検察が小沢さんに対してああだこうだ言っていることを代議士全部にやったら、国会は空っぽになってしまう」と言っていた。それで12月になって検察が十分な証拠が集まらなかったと言ったら、朝日新聞の論説のところで「証拠はないけれども彼は有罪だ」という言い方をした。どうやってそんなことが言えるのかと思う。

 検察審査会というものがある。いつ、どのようにできたか知っている日本の方は少ないと思うが、これはアメリカの占領下でできたシステムだ。どうやって検察審査会ができたのか、経緯を知らない方も多いと思うので、少し説明する。アメリカの占領軍は、日本の法務省を信頼しなかった。信用できないと思った。だから市民による、検察体制を審査しようというものをつくった。そういう新しい制度をつくって、日本にデモクラシー、民主政治を根付かせようとした。法務省関係者は非常に抵抗したが、抵抗しきれずに最終的には検察審査会なるものができたのだ。ところが、その検察審査会が今まで発動されたのは、交通事故とか軽犯罪とかそういうことだけだった。小沢さんのことにあたっては、どこから取り出してきたのか知らないけれども、”魔法の何か”を使った。それで、客観的に物事を見ることが大事だと思うわけだ。私は小沢さんのファンでもなければ、小沢さんの特別な友達でもないが、日本の政治状況を客観的に見るということでやっている。

■民主党の主張を実現する最大のチャンス

上杉: 小沢さんに対して質問は?

ウォルフレン: 本(『誰が小沢一郎を殺すのか?』)を読んで下さったのだろうか? 本を読んで、何か私の書いていることに過ちがあったら、指摘していただきたい。過ちから学ぶことが多いものだから。

小沢: もう読ませていただいた。本の中でも、私があまり露骨に言えないことを正確に言っていただいた。非常にわが意を得たりというか、よくここまで客観的に、公正に見て書いていただいたと思っている。

上杉: この本にも書いてあり、先ほどのウォルフレンさんの言葉の中にもあったが、日本は総理をつくるという形でマスコミ、国中が持ち上げる。持ち上げておいて、そういうリーダーができるとつぶすという、非常に不思議な国だと言っている。小沢さんとしては、その実感はあるか?

小沢: やはり日本社会の、日本人の特殊性ではないだろうか。歴史的な何千年の経過の中で、強力なリーダーというのはほとんど必要なかった。平和で豊かな国だったから。「和を以て貴しと為す」という言葉に代表されるような、いわゆる悪く言えば「談合社会」、良く言えば「コンセンサスの社会」というのが出来上がっていて、それは結局、結論は誰も責任をとらなくてもいい仕組み。

 だから今の状況を見て申し上げたいことは、われわれ(民主党)は官僚主導の政治から、政治家主導、国民主導の政治に変えるんだ、そして国民の皆さんの生活を第一にしていく政治を実現するんだと、皆さんに訴えて政権を任せてもらった。ところが現実には、自民党の時よりひどいじゃないかという批判もあるくらいに、官僚機構に乗っかっているだけ。こういう非常事態においては、まさにわれわれが主張した国民主導の政治を実現するために、国の統治の機構、中央集権から地方分権、いろいろな制度を含めて、震災に対処するという大義名分があるから、思い切ってやればできる絶好の機会。ウォルフレンさんも言っているが、われわれの主張を実現する最大のチャンスだ。

 ところが結果としては、今言ったように、「今まで以上に悪いじゃないか」と酷評される。そのゆえんは何かというと、国民主導、政治家主導の政治というのは、政治行政の政策を決定し実行する時に、国民そして国民の代表である政治家が、自分自身の責任で決定し実行するということだ。それがなければ国民主導とか政治家主導なんていうのは、ただの言葉でしかない。政治家が責任を取らないなら、何で官僚が言うことを聞くのか? 「俺が責任を取るから、こうこうこういう方針でやってくれ」と言えば官僚はついてくる、無茶苦茶な話でない限りは。だから、「それは俺は知らない、そっちで決めたんだ、あれはどうしたんだ」と、そういうことをやっていたのでは、われわれの主張はまったく国民に対してウソを言ったことになってしまう。なので私は、遅かりしだが、今からでも遅くないから、こういう危機にあたってこれをうまく活用して、本当の政治家主導の政治を実現して、「国民の生活が第一」というわれわれの訴えたキャッチフレーズに恥じることのないような震災対策、政治を実現しなくてはならない、そう思っている。

■トロイカ体制なくして菅総理なし

上杉: まさしくこの「3.11」の国難の後に、政治的な団結そして主導が望まれるわけだが、ウォルフレンさんの先ほどの言葉から代弁して質問する。当初、民主党政権に交代したときには、トロイカ体制ということで小沢さん、菅さん、鳩山さんの3人に期待したとあった。この震災においては、トロイカ体制どころか党内バラバラ、与野党との連携もできていない状況になっている。当事者である小沢さん、そのトロイカ体制すらできない理由は一体どこにあるのか。

小沢: それは菅さんに聞いてもらわないといけない。ウォルフレンさんも仰ったように、一人で全部できるわけがないから、神様じゃないから、いろんな皆さんの知恵と力を借りてやる。そのことはその通りだ。しかし、それぞれの部署、それぞれの責任ある立場にある人、なかんずく日本の政治機構の中では総理が絶大な権限を持っている。だから菅さんは、僕や鳩山さんのことは別に相手にしなくてもいいが、自分の責任でちゃんとやれればそれでいい。けれども、なかなかその時々に思いついたことを仰るが、すぐに撤回したり、あるいは自分の言葉に責任を持たない。それがやはり最大の問題ではないだろうか。

 何度も言うが、政治家、特にトップのリーダーは自分の言ったこと、自分の言動に責任を持たなければ誰もついてこないし、国民も全然信用しない。政治家の言うことなんかみんなウソっぱちだという話になってしまう。私はそれは今日の日本にとって非常に不幸なことだし、また将来の日本にとってもそういう事態が続くと、日本には永久に民主主義は根付かないということを非常に恐れている。こういうような形で、ぜひマスメディアもオピニオンリーダーというならばきちんと、それらしい論評と報道をしてもらいたいと思っている。

上杉: 今度はお二人に伺いたい。いま小沢さんの口からも、菅直人首相――今回の震災後、一応日本という国を率いているが、どうも海外からの評価では原発対応を含めてあまりうまくいってない、酷い、うんざりしているような状況を作り出しているというのが現状だ。その菅さんは6月2日、大手メディアの報道によれば、不信任案採決の直前に一定の目処ということで退陣を事実上表明されたが、いまだ総理の座に居座っている。菅さんについて、ウォルフレンさんが最も親しい一人というが、一体なぜ辞めないのか、そして彼は何をすべきなのか教えていただきたい。

ウォルフレン: 菅さんを知っていると言ったが、それほど知っているわけではないから、なぜこういうことになっているかは私にも分からない(笑)。菅さんが総理になったこと自体、小沢さんはもちろん鳩山さんも含めて、そういう(トロイカ)体制があったからこそ、総理になれたということ。そもそも93年に一緒にスタートしたが、特に小沢さんなくしては民主党はまとまらなかっただろうし、民主党がなければ菅政権などあり得なかった。菅さん自身、小さな存在の政治家でしかなかっただろうと思う。私は公約を実行するためには、いま小沢さんが仰ったように、やはりキャリアの官僚制度に対してきちんと政治家がコントロールすること、一緒にやっていくしかないと思う。

■今の状況を予測していたから、不信任案賛成の結論に至った

上杉: 同じ質問で、菅さんはなぜ辞めないのか、そして何をすべきなのか、ウォルフレンさんよりは(菅さんに)親しい小沢さんに伺いたい。

小沢: 菅さんの性格とか人間性は、私は知りません。私の常識ではなかなか理解できないという程度。ただ問題はすべて、日本社会、日本人のあいまいさ。あの時に辞めると言ったとか言わないとか。今度は菅さんは国会でも「私は辞めるなんて言ったことない」なんて後で言う。何事もクローズとあいまいさがいけない。私はそういう点でえらく批判されるけれど、まったく逆で、会談するにしても何するにしても、オープンで話して平気だし、記者会見で言うことと個人的にしゃべることは同じだ。

 そういう、きちんとしたオープンで明確なお互いの意見の交換、やりとり、詰めを日本人は嫌う。皆いい加減な言葉でごまかしてしまう。何の会議でも、皆さんの会社でも同じだと思うが、そうすると誰も傷つかない。結論を出さなければ。何となくということで、誰が決めたんだ、何となくあの会議で決まったということになる。だから、何となくの結論に意に沿わない菅さんは、「俺はそんなこと言った覚えはない」ということになるわけだ。そういう意味では私は単なる感情論や、何となくそうだろうという憶測の類で、大事なことを話し合ってはいけないと、そう思っている。日本人的常識では、菅さんはもう辞めるみたいなことを言ったんだろうけど、その常識が通用しない相手だとどうしようもないわけで、今のようになってしまうわけだ。私が制度的に総理を、内閣を辞めさせるには不信任案の通過しかないという結論に至ったのは、まさにこういう状況を予測していたからだ。

 私はそういう意味でもう少し、日本社会にオープンな、公正客観的な、そして正確な、必ず議論をし結論を出すという習慣を、日本人自身が身につけなければいけないのではと思っている。日本の会議というのは、民主党も自民党と同じだが、絶対に多数決しない。多数決の決を採れと言っても採らない。そうするとカドが立つとか波風がどうのこうのと言う。だから自民党では、何度も言うが、意見がまとまらない、どうしても反対者がいるときは、反対者に最後の会議に欠席してもらって、全会一致ということにするわけだ。民主党では、そもそもその決も採らないので、私は民主主義ということを一体理解しているのだろうかとさえ思うくらいだ。そこははっきりと自分の意見を言い、はっきりとした結論を得て、そして皆で得た結論には従う、そういう習慣を早く日本人は身につけなければいけないと思っている。

■選挙や政治活動への公権力の直接行使は後進国的

上杉: いま小沢さんも言及された「オープンなところで」ということでは、実は自由報道協会の会見――今回は公開討論会だが、過去最多の参加は小沢さんの4回。菅直人総理はずっと申し込んでいるが、0回だ。そういう意味でも、どちらがオープンかということは実績として皆さんご存じだと思う。ところが日本のメディア、記者クラブになると、「密室政治の権化」みたいな形の小沢一郎という像が出てくる。ウォルフレンさん、この全くの逆転状況はどうして起きていると思うか。

ウォルフレン: マスコミはいろんなことを言うと思う。私がこの本を書いたのは、皆さんに説明したいこともあるが、私自身も自分なりに結論を見出したいということもあった。なぜ一人の政治家に対して、かくも長い間――世界中そんなことはどこにもないが――こういう抹殺のキャンペーンを、しかも成功裏に続いているかというのが分からない。あえて言うならば、現状を維持できなくなるとか、壊れることへの恐れではないかと思う。「ウォルフレンさん、どうしたら良いと思いますか? 日本は何をしたら良いと思いますか?」とよく聞かれるが、本を読んでくださってからお聞きになれば、お答えしたいと思う。

 今ちょっと閃いたアイデアがある。結構良いアイデアかもしれない。国民は民主党に政権を託した。それは民主党のトップの人たちが集団で公約したことを実行してくれると思ったからだ。日本の国民が選んだのは政治家であって、検察やマスコミを有権者が選んだわけではない。日本の皆さんは法務大臣に対して陳情書を一緒に書いたらいいと思う。法務大臣、政治家であるあなたを私たちは選んだのだと。だから選ばれた権限を持って、小沢一郎のこの裁判を終わらせてほしいと、そして彼がリーダーとしてやるべきことを出来るような道を開いてほしいと、法務大臣に訴える。新聞は無視するだろうから、相当声を上げないといけない。そういう陳情書を出すということ、それから「そうだそうだ」と声を上げないと物事は起こらないと思う。ちょっと閃いたアイデアだが、効果が出るかもしれない。

上杉: 法務大臣への陳情は、皆さん気が向いたら勝手にやってください。私がここで煽ったりするとまたいろんなことを言われるので。今ウォルフレンさんの言葉であったが、いわゆる日本のシステムの問題、そして検察のことにも触れられた。その検察の問題に関して、当事者ということでお答えにくいかもしれないが、一連の検察のシステム、それに対する国の対応などは、小沢さんからご覧になってどうか。最近、石川知裕(衆議院議員)さんの検察側から出されていた証拠、検事の調書が不採用になったという非常に珍しいことがあった。それも含めてお答えいただければと思う。

小沢: 個別の問題については差し控える。私ども(民主党)のマニフェストというか主張の一つだが、いわゆる民主主義の根幹である選挙――これは主権者が唯一主権を行使する場だ。この選挙によって選ばれる政治家は、主権者たる国民自身を代弁して代表して活動するわけだ。その選挙とか政治活動については、欧米社会で見られるように、やはり独立した第三者的機関が、選挙や政治活動の管理・指導を行うというシステムを、私は作るべきだと思っている。直接、警察や検察が選挙のことや政治活動について公権力を行使するという仕組みは、私はいわば後進国的な要素を強くするばかりであって、健全な民主主義の発展のためにはよろしくないと思う。

 例えば選挙でも何でもそうだが、本当に些細なことまで言えば、個人の皆さんも年がら年中ずっと、朝から晩まで監視されていたとしたら、ちょっとした道交法違反とか軽犯罪法違反とかに触れない人は、まずいないだろうと思う。そういうことを考えてみれば、まさにスピード違反だろうが、駐車違反だろうが、立小便だろうが、公権力がとにかく介入することになれば何でもできるわけだ。1億2000万人を全員監視するわけにはいかないが、特定の人間にターゲットを絞ってやったら、誰もこれから免れる人はいないのではないだろうか。全員罪人になってしまう。

 選挙というものは、1億の主権者が参加する大事な民主主義の原点だ。1億人も参加するから、投票するほうも投票されるほうも、いろいろな問題点は些細なことを含めればたくさんあるはず。根本的な買収とか供応とかは別にして、ちょっとしたことで全部公権力が介入することになったら、今の日本がそうだけれども、狙われたらアウトだ。こういう中では民主主義は定着しないと思っていて、そのため制度的にしっかりと選挙や政治活動を監視する国民を代表する第三者機関、選挙委員会という仮の名をしているけれど、そういうものを作って、きちんと選挙の公明性、公正を確保していくというふうに、仕組みを変えないといけない。(今は)全部官僚機構で、あらゆる国民の生活の隅々まで官僚支配が行き届いている。これを打破するには、国民自身が自ら政治家を選んで、その政治家に思い切った活動をさせるというのが、私は民主主義の基本的なことであろうと思う。そういうようなことも一つの国民主導の政治への大きな改革であると考えている。

■今そこにある、もうひとつの危機

上杉: ウォルフレンさん、最後に一言。

ウォルフレン: 一言だけ言わせてほしい。無関心になってしまうのは容易いことだと思う。大災害があった、復興しなければならない、原発の事故を起こした、大変だ――。それだけではない、もっと大きな危機があるんだということ。国際的な金融の動きをフォローしていれば、そしてアメリカ国内で起きていることに目を向けているならば、何かが終わりに来ていることを感じるはずだ。第二次世界大戦後の国際金融システム、われわれが暮らしてきた間ずっとあった体制が、終わろうとしている。ということは日本に大きな影響があるということだ。

 日本はきちんとした政治的な主導なくして、何の目的もなしに漂流することはできないはずだ。言葉だけで大変なことが起きると言ってるのではなくて、本当に深刻な問題なのだ。でも日本の皆さんには、より良い将来があって然るべきだと思う。最終的に申し上げたかったこと、結論として言いたかったのはそのことで、先ほどからも随分お話したし、この本にも随分書いてあるので、買っていただくことができるかなと思う(笑)。

小沢: 今のウォルフレンさんが指摘されたことは、大変重要なことだと思う。まだ日本人はそれをあまり深刻に受け止めていないけれど。報道でお分かりのように、アメリカでもヨーロッパでも、財政、金融の危機的な状況が今出て、みんな深刻になっているところだ。これはちょっと話が違うけれども、「ミスター円」と呼ばれた榊原(英資)氏が『世界同時不況がすでに始っている!』という本を書かれていて、私も読んだ。今日の日本社会の無責任体制の社会の中で――これは政治家だけの問題じゃない――政治経済あらゆる分野での総無責任体制の中で、経済が大恐慌でも起きた日には、全くもう混乱して無秩序な体制、社会に陥ってしまうのではないかという心配を、一方においてしている。内では原発の放射能汚染の問題、そして(外では)世界全体を覆っている財政金融を中心とした経済の問題、これをやはり日本人はもっともっと深刻にとらえて、その対処の仕方をあらゆる社会の分野で整えていかなくてはならないと思う。

(了)

(協力・書き起こし.com

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