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東大・中川恵一准教授「正しいと思うことをお話しするしかない」

東京大学医学部附属病院放射線科で放射線治療を担当する「チーム中川」の中川恵一准教授

 いまだ収束の気配すら見えない福島第1原発事故。大量に飛散した放射性物質の存在は、人体や食物への影響が心配され、人々に不安を与え続けている。そんな中、東京大学医学部附属病院放射線科で放射線治療を担当する「チーム中川」の中川恵一准教授、芳賀昭弘助教が2011年7月14日、ニコニコ生放送に出演。メディアジャーナリスト津田大介氏や視聴者の質問に答えながら、放射能汚染の実態や、放射線被ばくと人体への影響などについて説明した。また、番組冒頭に視聴者コメントで「御用学者」と揶揄された中川恵一准教授は、政府や電力業界との癒着関係を完全に否定し、「どう言われても、正しいと思うことをお話しするしかない」と述べた。

「御用学者」という言われ方は”癪に障る”

 福島第1原発事故直後、「放射線関係の情報が錯綜するなか、かなり早い段階でツイッター(のアカウント)を立ち上げて、冷静な情報を流されていた印象がある」と津田氏が語る”チーム中川”。放射線治療に携わる医者や物理学者、原子力工学の専門家などの知見を生かし、ツイッターで放射線に関する知識や情報を流し続けた。しかし、その一方で「被ばくによる発がんリスクより、飲酒や喫煙のほうが危険」といった発言から、「御用学者ではないか」とささやく人々もいる。中川准教授はこの批判に関して、

「よく(御用学者と)言われるが、東京電力をはじめ電力会社から寄付金をもらったことは全くない。ゼロです。それから政府との関係についても、内閣参与になれと言われたことがあるが、お断りしました。自由な情報発信が出来なくなるからです」

と回答。「御用学者」と呼ばれることに関しては「なんとなく癪に障る」と言いながらも、「どう言われても、正しいと思うことをお話しするしかないと思っている」と毅然とした態度で述べた。

100mSv以下の人体影響は「哲学」の領域

中川准教授は、100mSv以下の被ばく線量と人体への影響の相関関係については「哲学の領域」であると話す

 中川准教授によると、放射線量による一般人(原発作業者ではない、また医療被ばくをしていない人々)の健康被害とは、広島・長崎の原爆データから考えて「発がんが増えること」だけだという。被ばく量が100mSv(ミリシーベルト)を超えると、「がん死亡率」が100mSvごとに0.5%ずつ相関して上昇するそうだ。しかし問題は100mSv以下の部分。100mSv以下の「がん死亡率」との相関については科学的に判明しておらず、明確に示すことが出来ないという。このことについて中川准教授は、100mSv以下のデータは生活習慣に埋もれてしまうから、被ばく量との明確な相関関係が最終的に分からないのだと説明する。

「例えば、100mSv~200mSvの被ばくに相当する(発がんリスク)というのは、だいたい野菜不足くらい。塩分摂り過ぎの方が実は100mSv~200mSv(の被ばく)よりも影響が大きい。運動不足も大きい。毎日だいたい日本酒2、3合ほどの飲酒で、100mSv~1000mSv被ばく分。煙草を吸うと、実は放射線で言うと2000mSvくらいに相当してしまう。もちろん生活習慣と原発事故を同一視するわけではないが、100mSv以下のようなあまりがんを増やさないような量では、さまざまな生活習慣(のリスク)に埋没してしまう」

 そして不明確ゆえに、100mSv以下の部分も被ばく線量に相関して発がんリスクが増すのか、それとも少量被ばくに関しては修復する仕組みが人体にあるので、ある一定の被ばく線量から人体に発がんリスクが出てくるのか、さまざまな考え方がある。しかし、人体の安全を確保するという放射線防護の観点から、国際放射線防護委員会は前者を仮説として国際基準に採用している。この仮説について中川准教授は

「100mSv以下は数字が無いから『科学』ではなく一種の『哲学』だ」

と主張。100mSv以下の発がんリスクについては、推論でしか言えないとした。

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