池田信夫氏、地デジ化は「テレビ業界の古いビジネスモデルを守るため」

経済学者の池田信夫氏

 地上アナログ放送は2011年7月24日に終了する。現在、アナログ放送のテレビ画面には「アナログ放送終了まであと〇日」という表示があるが、これに対し「地上デジタル放送テレビを買えという恫喝だ」という意見もあるようだ。では、総務省とテレビ局が地上デジタル放送を推進した理由とは――。経済学者の池田信夫氏は「テレビ局の古いビジネスモデルを守るために、地デジというややこしい仕組みを官民(総務省とテレビ局)共同で必死にやってきた」と語る。

 池田氏がこのような発言をしたのは、2011年7月5日のニコ生トークセッション「アナログマをなぜ殺すのか?地デジ化の実態を考える」でのこと。元NHKディレクターの池田氏は、テレビ業界・放送行政の裏側に知悉(ちしつ)しており、「(番組制作の)技術はすごく驚異的な発達をした」とした上で「(テレビ局の)ビジネスモデルはまったく変わっていない」と指摘。さらに、

「テレビ局の古いビジネスモデルを守るために、地デジっていうややこしい仕組みを、官民(総務省とテレビ局)共同で必死にやってきたわけだ」

と語った。

■「誰のビジネスモデルを守ったか?」

 一方、地デジ化によって、民放キー局には1社あたり1兆円の設備投資のコストがかかるという試算がある。そのため、地上デジタルを使わず「衛星デジタル放送のみを導入した方がコストが低かったのでは」という意見もある。池田氏によると、NHKや民放キー局、テレビ業界の監督官庁である旧郵政省(現在は総務省)も、当初は地上デジタル化に反対だったという。

 番組の司会を務めたメディアジャーナリストの津田大介氏が「誰が(衛星デジタルではなく地上デジタルを)推進したのか」と質問すると、池田氏は「(それは)ローカル(地方の)民放局」と即答。さらに

「(衛星デジタル放送のみの導入がなされた場合)衛星から全国にキー局の放送(の電波)が降ってくる。すると、ローカル民放の番組は(地方の視聴者に)見られなくなるから」

と、その理由を語った。

 番組に同席していた放送レポート編集長の岩崎貞明氏は「(ローカル)局によっては9割以上東京の局(の番組を)もらって同じ放送しかしてないから、東京の番組がいきなり流れたら困るって言っている」と池田氏に同意。さらに岩崎氏は「地方局をそういう状況にさせたのはキー局」とし「(キー局が)自分ところの作った番組を全国に放送してもらったほうが、自分(=キー局)がスポンサー料を稼げるからだ」と語った。

(山下真史)

◇関連サイト
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http://live.nicovideo.jp/watch/lv55394576?po=news&ref=news#25:24

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