日本の駅に“ホームドア”設置がなかなか進まない理由
駅プラットホームの線路側に設置される扉“ホームドア”。駅ホームからの転落を防止するために、国土交通省が整備を進めようとしているにもかかわらず、なかなか計画が進んでいません。この問題について、『togetter』に『ホームドアの設置が進まないわけ』というわかりやすいまとめができていましたので、一部抜粋しながらご紹介します。
一連のツイートをした @noname_labさんによると、ホームドアの本来の設置目的は「人身事故の防止」ではなく、「運転士や車掌、駅員を削減して人件費を浮かせる」ことにあるそう。実際に、ホームドアがいち早く導入された路線は新交通システムであることが多く、「共通して無人、もしくはワンマン運転」を行っています。
ホームドアには「駅員が列車の停車を目視して手動で開閉する方式」と「列車の停車と共に自動的に開閉する方式」があり、前者は比較的導入が容易なことから一般的な路線での採用が多いとのこと。しかし、後者は「停止位置に精密に止める」必要があることから、ATO(自動列車運転装置)やTASC(定位置停止装置)の採用が必須です。また、ATOやTASCを採用できるのは「電気指令式ブレーキを搭載した比較的新しい車両に限られる」ため、ホームドアは古い車両の走る路線ではほとんどみられません。駅員による手動操作は人件費がかかるため、「事業者によっては古い車両の更新コストがかさんでホームドアの設置がしづらい」ということになります。
しかし、問題は車両ブレーキにとどまりません。@noname_labさんは地上側の問題を2つの類型に分けて説明しています。ひとつ目の類型は「ドア数の違う車両が混在している」ため、「開口部をドアに合わせて設置する必要がある以上、開口部まみれになって(ホームドア設置に)構造上の無理が出てくる」こと。極端な例として東武伊勢崎線春日部駅には「1~6ドアすべて混在する駅がある」ことをあげています。JR線では、特急・急行列車が止まる関係でドア数の違う車両が混在しており、ホームドアが設置されているのは在来線6000駅のうち「恵比寿・目黒、北新地」の3駅だけしかないそうです。
もうひとつの類型は、「乗客をさばくため列車によって停止位置が異なる」こと。少ないホームで多くの乗客の乗り降りを可能にするため、列車によって停止位置を変更することがあり、たとえドア数が同じでも開口部は多数必要になってしまいます。停止位置変更を行っている例としては京急線品川駅、名鉄線名古屋駅などがあり、「前者では2・3・4ドア車両、後者では2ドアと3ドア、18m車と20m車が混在する」というのですからやっかいです。
(※@noname_labさんによる補足:第3の類型として「ホームが狭くホームドアを設置することが難しい」こともあげられます。)
ドア数も車両長もバラバラな規格の車両が乗り入れ、ホーム乗車位置が異なるうえに車両停止位置が違うこともある日本の鉄道において、ホームドア設置への道のりはあまりにも遠く感じられますね。あえて逆の発想で考えると、ホームドアのないホームには、どんな車両も自由に止められるというメリットがあるということ。そこまでしてホームドアを設置する必要があるのかどうか、ちょっと考えさせられてしまいました。
Togetter『ホームドアの設置がなかなか進まないわけ』
http://togetter.com/li/153926
※1枚目の写真:Teen-Gas(Platform screen doors 001.JPG)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Platform_screen_doors_001.JPG
京都在住の編集・ライター。ガジェット通信では、GoogleとSNS、新製品などを担当していましたが、今は「書店・ブックカフェが選ぶ一冊」京都編を取材執筆中。
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