弁護士は弁護士を裏切らない!? 役立たずの懲戒請求制度
※行政書士の柴田崇裕さんによる連載、第6回目です。
【これまでの記事】
(1)「非弁行為って?」縄張り争いを繰り広げる弁護士会と闘う行政書士の手記
(2)「非弁活動容疑で逮捕」という誤報をおこない謝罪も訂正もしない『毎日新聞』
(3)事件性必要説、不要説とは?
(4)「慰謝料の請求=事件性アリ」なんでしょうか?
(5)弁護士はオリンピック選手で、行政書士は国体選手!?
連載第6回「弁護士は弁護士を裏切らない!? 役立たずの懲戒請求制度」
弁護士に限らず、司法書士や行政書士などの士業者から悪いことをされて被害を受けたときは懲戒請求という制度を利用してその弁護士等を処分するように請求することができます。現大阪府知事である橋本知事がTV番組で懲戒を呼び掛けて話題になったこともありましたね。
この懲戒手続きについて誰が処分について判断するかというと…
行政書士の場合は都道府県知事が懲戒手続きを担当します。
司法書士の場合は法務局が懲戒手続きを担当します。
しかし、弁護士の場合は…
弁護士会が懲戒手続きを担当するのです。
つまり、弁護士を罰することができるのは弁護士だけというわけです。こういった身内だけで処分を判断するのは士業団体の中でも弁護士会だけです。
*懲戒手続きについて審査する委員には、弁護士以外にも検事、裁判官、大学教授なども選ばれているようですが、弁護士以外の委員で過半数を超すことは無く、弁護士が委員の大半を務めているようです。
なぜこうなっているかというと、弁護士は権力者と闘うこともあります。そのため、弁護士が権力者側とも闘うことができるように、どのような権力や組織からの監視も監督も受けないようにしているのです。これを弁護士自治といいます。
しかし、この懲戒制度は身内が身内を裁くわけですから、当然審査も甘くなります。実際にそういった批判は多いのです。
ですが、審査が甘いだけならまだしも、自分たちが気に入らない懲戒の申立ては調査すらまともにしてくれません。
気にいらない人間からの懲戒請求は放置する大阪弁護士会
調査をまともにしないことがなぜ分るかというと、僕自身が弁護士に対して懲戒を求めて申立をした経験があるからです。
僕は弁護士から「弁護士法違反だ!」という指摘を受けた際にこれは不当な圧力だと思ったので、大阪弁護士会にもこの弁護士への懲戒を求めて申立をしました。
この懲戒の申立てをしたのは2009年2月です。
今は2011年6月です。
大阪弁護士会によると通常は6~12カ月で懲戒の審査結果が出るそうですが、2年4カ月経っても、僕が起こした弁護士への懲戒申立てについて、未だに審査していません。当然僕への連絡も何もありません。
確かに僕は大阪弁護士会から見たら“悪いことをした人間で敵”なんでしょう。しかし、僕は法律に則って適正な手続きで懲戒の申立てをしています。例え、その懲戒を認めないとしても審査や調査をきちんとするのは大阪弁護士会の義務です。
弁護士自治は元々、弁護士が権力者に対抗できるようにするために、定められたもののはずです。それを大阪弁護士会は懲戒手続きも自分たちの好きなようにしていいとはき違えてしまったのでしょうか。
権力者に対抗できる手段を手に入れ、自分たちが権力者のようになってしまっては本末転倒です。
僕が申し立てた懲戒手続きについて大阪弁護士会にどうなっているのか問合せたところ、以下のような答えが返ってきました。
・懲戒の申立てを放置しているわけではない
・途中経過について知らせることは一切できない
・どのような調査をしたか知らせることはできない
・いつ終わるのかも分らない
大阪弁護士会は検察や警察の取り調べ等を可視化するように主張していますが、自分たちが行う調査や審査を可視化する気はまるで無いようです。弁護士から被害を受けて懲戒を申立てた一般人には、せめて調査がどのように進んでいるのかぐらいは教えてもらいたいものです。
こんな穴だらけの弁護士の懲戒制度ですが、甘いばかりではないのです。あることをした弁護士には非常に厳しい処分が待っています。
それは… 弁護士会の会費を滞納することです。
依頼者のお金を取り上げたりしても簡単には退会命令(所属する弁護士会を退会させること)は出ませんが、会費の滞納額が大きくなると退会命令という非常に重い処分が出てしまいます。お金を納めない弁護士を弁護士会は守らないということです。
弁護士会の皆さんにはなぜ自分たちに弁護士自治という特権が与えられているのか、その原点を思い出して欲しいです。
(つづく)
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