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「去るのは耐え難い苦痛」 飯舘村の農家、迅速な「土壌検査」の必要性訴える

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農業を営む伊藤延由さん

 計画的避難区域に指定され、全村避難の要請を受けている福島県飯舘村。村の災害対策チームによると、村民77%が村外への避難を完了しているが、5月末の避難期限を過ぎても未だ多くの人が村に残っている。農業を営む伊藤延由さん(67)もその一人だ。

 伊藤さんは昨年から飯舘村に来て米作りを始めた、いわゆるIターン就農者だ。定年退職後、自然に恵まれた飯舘の土地で除草剤を一切使わない米作りを始めた。初年度から米を作ることに成功した伊藤さんが、これからも飯舘村で農業に従事していく決意を固めた矢先、福島第1原子力発電所の事故で事態は一変した。

 事故により大量の放射性物質が飛散した飯舘村。政府は2011年4月22日、飯舘村を「計画的避難区域」に指定。稲の作付けを制限した。伊藤さんは絶望感に打ちひしがれたが、すぐには村を出る気にはなれなかった。きれいな水、空気、四季折々の景色、鳥のさえずり、夜空いっぱいに広がる星など、飯舘村の美しい自然が大好きだからだ。そして、何よりも自分が丹精込めて耕した土地を出ていくのは忍びない。

 すぐに避難はしないで田んぼの手入れを続けていた伊藤さんだが、一抹の不安があった。それは、伊藤さんの田んぼがどれくらい放射性物質に汚染されているかだ。そこで伊藤さんは、土壌汚染の深刻度を調べるため食品などの放射能分析を請け負っている財団法人九州環境管理協会に土壌の調査を依頼した。

土壌の調査結果

 土壌の調査結果が分かったのは6月2日。そこには驚くべき結果が記されていた。原子力災害対策本部から4月8日に発表された「土壌中放射性セシウム濃度の上限値」は1キロ当たり5000ベクレルだが、伊藤さんの4つの田畑から採取された放射性セシウムの合計値はいずれも大幅にそれを上回っていたのだ。一番高い数値が出た田んぼからは放射性セシウムが1キロ当たり9万3200ベクレルを検出。農林水産省の災害総合対策室によると、前例がないことなので一般的な平均値というものがなく、測定方法によっても値は異なるし、作物によって移行係数(吸収率)も異なることから「一概には言えない」としながらも、「数字的には高い。そこに田植えして稲ができても販売はできないので、作付けはしないで下さいという話になっている」という。

 調査結果が出た4日後の6月6日、文部科学省は放射性物質による土壌汚染の状況を地図化するために土壌調査を開始した。伊藤さんは「なんでもっと早く土壌の検査をやってくれなかったのか。行政がすぐにでも土壌検査をして、ここでこれ以上農業を続けることが困難だという指針を示してくれれば、ここに留まることもなかったのに」と怒りをあらわにした。

 伊藤さんは「飯舘村の農民は来年から米や農作物が作れるのではないかという望みをまだ持っている」とし、政府には「汚染表土の修復が可能なのか不可能なのか農民に知らせてほしい」と話す。伊藤さんは近く村外避難する予定だが、「飯舘村を去るのは耐え難い苦痛です」と悔しさをにじませていた。

(三好尚紀)

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