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永井豪先生“ぶっちゃけ”1万字インタビュー 『サイボーグ009 vs デビルマン』上映記念

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『サイボーグ009 vs デビルマン』が、2015年10月17日より2週間限定で上映スタートした。『サイボーグ009』そして『デビルマン』と言えば、日本漫画界の巨匠である石ノ森章太郎先生、そして永井豪先生の代表作である。

幾度となく映画やTVアニメ化がされたこれらの作品が、なんとコラボ作品として発表されたのだ。

日本漫画史に深い深い痕跡を残した『デビルマン』。その作品の印象から作者である先生には“強面”な印象があるが、ご本人は極めて柔和で、笑顔の絶えないインタビューとなった。(もっとも、『ハレンチ学園』や『けっこう仮面』といった作品もあるので一概に強面と決めつけるのは間違いだが)
かつて、石ノ森章太郎先生の元でアシスタントをしていたという永井豪先生に、今回の映画をはじめ、石ノ森先生との思い出や、デビルマンにまつわる裏話など、様々なお話を伺うことができた。

サイボーグ009を全部殺しちゃうんじゃないかと心配していた

― 今日はとても緊張しています。よろしくお願いいたします!

永井豪先生(以下永井豪):あははは。よろしくお願いいたします。

― 『サイボーグ009 vs デビルマン』、先生は既に全てご覧になられたとうかがいました(※)。ご覧になられた感想をお願いします。
※『サイボーグ009 vs デビルマン』は3話構成。フライヤー制作時点で先生は第1話しかご覧になっていなかったが、インタビュー時点で全てご覧になっていた。

永井豪:とにかく面白かった! あと、サイボーグ(009)たちのキャラクターを壊さないで済んだ、と(笑)。
最初は本当、全部全員殺しちゃうんじゃないかと心配していました。デビルマン強いからねえ(笑)。そこらへん、うまいこと、やってくれていて。ギリギリまでどうなるかわからないみたいなところが、展開の仕方もうまかったと思いますね。「良くできたなあ」、という思いです。

それぞれのキャラクターの違い、作風の違いみたいなのも含めて、きちんと出ていたなあと思って。その辺も良かったですね。『サイボーグ』も『デビルマン』も、キャラ壊されずに済んだ、という(笑)そういう気持ちがあるんじゃないかと思う

「キャラクター的なイメージが変わっちゃうんじゃないか」、みたいな不安を持つ方も安心して観れると思います。

「アニメはアニメとして面白ければいい」から口出ししない

― 石ノ森先生の作品も、永井先生の作品も、数多くアニメ化されてきました。原作者の立場から見た“アニメ化”について、どういった感じでお考えですか。

永井豪: アニメって一人で作れないので、アニメのどなたかに委ねる形になります。ですので、(原作者としては)完全にコントロールが出来ないものと思っています。石森先生がどう思っていたのかはわからないですけれども。僕は最初から、ハッキリ、アニメは自分の作品、漫画とは一緒にならないとすごく自覚していましたので、アニメはアニメとして面白ければそれでいいんだ、というスタンスでしたね。

自分は自分で頑張って面白い漫画つくるけど、アニメはアニメで「題材提供したんで好きに面白くしてください」って。あんまり口出ししない、っていうか、下手に口出しすると、自分(原作)に寄せようとし過ぎて、(アニメの)監督なりの個性を損なってしまう可能性があるから。監督自身が「俺はこう作りたいんだー!」というのを思う存分作ってくれたら、必ずいい作品になると思うんで。ほとんど口出ししないんです。

― 『デビルマン』も、漫画とアニメでは確かに随分違うところがありました。両方ともそれぞれ、いい作品として独立しています。

永井豪: ええ、そこは、はっきり分かれてていいと思います。

― 手塚治虫先生はかつて、ご自身でアニメも作っちゃいたい、とスタジオも作られてましたね。

永井豪: 手塚先生は全てご自分で、ひとりで描けるなら全部自分でやっちゃう。(僕は)そこまでは出来ない、って割り切ってますけどね。

シレーヌとデビルマンが……×××

― 過去のアニメ作品に関しても、永井先生は全く口を出されなかったんですか?たとえば、『マジンガー』シリーズにしても、『デビルマン』にしても。

永井豪: 一応、設定の段階では「こうしてほしい」という希望は言うんですけど、スタートしたら極力言わないようにしていました。『マジンガー』なんかでも「重みが出るように」とか「大きさが感じられるようにしてください」とか、細かい注文含めていろんなこと言ってましたけど。スタートしちゃったらあまり言わない。むしろ向こうの方から注文が来るので、それに沿って色々作ったりとかしていました。

「こういう話をシナリオライターが書いたんで、それに合うようなキャラを作ってください」とかね。そういうのが来るんですよ。結構あります。だから、敵のキャラを次から次へと作っていました。

(アニメの)『デビルマン』の時もシレーヌなんかは辻さん(辻真先さん)が「女のデーモンのシナリオ書いちゃったんですけど」って言ってきたんだけど、その時点で女のデーモンって(僕は)作ってなかったんだよね。じゃあ、こんなのでどうですか、っていうことで作ったんですよね。最初に背中に翼付けてて当たり前だな、って思って、(翼を)頭持ってきたらこれは面白い、って(笑)。 自分でも気に入っちゃってね。スカートとかつけるのは違うなと思ったんですが仕方なく描きました。本当はもっとエロっぽい格好で(笑)。

― 漫画版ではシレーヌとデビルマンでヤラせちゃおう、なんて話もあったとか聞きました

永井豪: ああ、それは、頭の中で思ってたことで(笑)。実際はそんなことやったら大変です(笑)。さすがに編集部でも無理なのはわかってましたから、そこまではやろうとは思ってなかったけど、頭の中では「やってみたいなあ」、「描きたいなあ」と、本当は思ってました(笑)。

美樹ちゃんのお母さんが“真っ二つ”で編集部激怒

― 当時の編集部では、やはり作品の表現をめぐって議論なども起こってたのでしょうか。

永井豪: 多分、大変だったと思いますよ。何度も、これは(表現を)押さえてくれとか、その都度、突っ張ってはやって、どうしてもダメだったら、何回か電話が来て。
(現在連載中の)『激マン!』では描きましたけど、美樹ちゃんのお母さんが真っ二つになってるシーンとか(笑)。
僕が「真っ二つになってる方が、どんだけひどい目に遭ってるかわかるじゃないですか!」って言ったら「真っ二つじゃなくてもわかります!」って(笑)。

― 今回のアニメ『サイボーグ009 vs デビルマン』について「俺が関わってたらもっとこうしてやったのにな」みたいな部分はありますか?

永井豪: いやあ、内容は特に何も問題は無いですね。あえて言うなら、キャラ的に、飛鳥了がちょっと芯に秘めたものを持っているようなキャラなので、そこら辺をすくってもらえたら。

― 色気でしょうか。

永井豪: そう。本当は両性具有なんだよ、みたいなね。そういう中性的なのをもう少し出ていればより良かった。どちらかというと男っぽさのほうが勝っているな、と。でも、ストーリー的なモノは全く問題なくていいですね。

描き手目線で見ていた『サイボーグ009』「自分だったらもっと……」

― 『サイボーグ009』、石ノ森先生の代表作でありながらも残念ながら未完となっております。いかがでしょう、ご覧になられて『サイボーグ009』という作品に対する感想などありましたら。

永井豪: 原作はとにかく、好きだったんです。当時サイボーグってイメージがSFに出てきたときにね、怪物的なイメージのモノばかりだったんですね。フランケンシュタインに近いような、カラダの一部が機械になった化け物みたいなイメージで、SF小説の中に出てくるんで。

それがね、180度違って、美少年、美少女が出てきて。しかも、正義のために戦うという、そういう全然サイボーグのイメージを一新してくれてた。それでまずビックリして、たちまち夢中になりましたね。実際自分で(アシスタントとして)手伝ってみて、「自分だったらもっとこうするな」とか思いつつ、内心ね(笑)。「えー、こんな風にまとめちゃうの?もったいないなあ」とかね。そんなこと思いつつ、手伝ってましたけど。それはファンで見ていた時と違う、いつの間にか自分が描き手の目線に立っているからだったと思うんですけれどもね。

「もっとこうすれば読者喜ぶんじゃないかな」とかね。(直接は)何も教えてくれないけれども、そういう石森先生と自分との違いを少しずつ自覚したのが、勉強になった一番の事じゃないですかね。石森先生はこういう風にしたけど、自分だったらこういう設定だったら、違う方向に行くなとかね。

9人もいるんだから何人か死んでもいいんじゃないか(笑)と思ってた

― 例えば、こういうところをこういう風にした方がいい、とかありますか?

永井豪: キャラクターなんかだと、石森先生は重要視しないけど、僕だったら、たとえば巨人の005なんて、もっと面白い使い方できるんじゃないかな、とか思っていました(笑)。その辺どうしてもっと使ってあげないのとか(笑)。いろんなサイボーグ出せるんだったら、敵ももっとそういうの出せばいいのになあ、とかね。あと、9人もいるんだから何人か死んでもいいんじゃないかな(笑)……そんなことを思いつつ、お手伝いしてたんですけどね(笑)

― 『サイボーグ009』が行き着いたところって「神々との戦い」っていう非常に哲学的な話になってます。『デビルマン』が描かれた世界と何かしら、共通するというか響くところがあると思うのですね。

永井豪: 僕が手伝って頃っってそこまで見えてこなかったんですけれども、神との戦いってのは『デビルマン』以降ですからね。「あ、石森先生もこっちの方向来たんだ」って思いましたね(笑)。やっぱり、最終的に戦いがエスカレートしていく形の中でいうと、敵のブラックゴーストだけじゃ物足りなくなるんじゃないかとは思ってましたけど、最終的な手に届かないようなところに戦いを挑むとしたら、やはり神になるな、と。

― 時系列だけ見ると、永井先生が石ノ森先生に影響を与えた感じにすら。

永井豪: かもしれないですけど、それはわからないですね(笑)。最初からやるかと思ってたかもしれないですし。

人のやらないことをやってのける石ノ森作品が大好きだった

― 『009』以外に、石ノ森先生の作品で、永井先生が印象的に思っておられる作品はありますか?

永井豪: 僕が大好きだったのは、『冒険王』って雑誌で連載された『黒い風』って作品で忍者漫画なんだけれど、主人公がいきなり記憶喪失なんですね。

― うわー!

永井豪: そんな主人公って今まで居ないしすごい斬新だしね。敵だと思って斬ったらそいつが「なぜ味方を斬るんだ、裏切ったな」と言いながら死んで第一回が終わり(笑)。「ええええっ!」って!(笑) 「主人公、味方殺しちゃったの?」みたいな。そういう驚きからスタートする……それはすごく驚きましたね。

あとで別な設定の『黒い風』ってタイトルで連載やるんですけど、初期のやつは素晴らしいです。今、電子書籍でも読めると思います。あれは素晴らしいですね。

当時の若いころの石森先生ってのは人のやらない驚くことをずいぶんやってくれたなあ。その辺が好きだったですね。他の人とは違うことをバッと大胆にやって。

あと『少年サンデー』でやっていた三銃士をテーマにした漫画『ダイナミック3(スリー)』があったんですね。
それが最終回、負けて帰るんですね。負けて田舎に帰る。王の暗殺を阻止しようと戦うんだけど、負けてね、王様は倒されて、もう都に希望は無い、なんて田舎にすごすごと帰っていく。負けて帰る主人公なんて当時考えられなかったからね。

「なんだこれ、すごいなー!」と思って。「あの終わり方好きです」なんて先生に言ったんですけど、「オレ、ああいうことやるから読者に好かれないんだよ」(笑)。石森先生本人はそう言ってて(笑)。「でも、いいんじゃないですかー」って言ったら、「いやー……」って反省してましたけどね(笑)。

― 読者が期待するところよりも、自分が決めたことを通すという意味では、永井先生も共通しているように思えます。

永井豪: そういうの、人がやらないことをやる、っていうのは僕も好きなんで、……大好きだったですね。

師匠とのコラボについて

― 今回『009』は石ノ森先生の代表作と言っていいですよね。永井先生の代表作のひとつである『デビルマン』。師匠と言っても差し支えない石ノ森先生との作品コラボについて、改めて思うことなどありますか

永井豪: そうですね……とにかく、(アシスタント)当時は大変な思いしたんですけれども、あそこでの体験が無かったら今の自分は無いと思います。手取り足取り教えてくれるような人ではなくて「勝手に描け」みたいな(笑)。

背景なんかもほとんど自分で考えないとダメなんですね。自分も趣味が高じて漫画家になったんですけど、そういうのは通用しないとまずわかって、もうとにかくとんでもなく厳しい世界だっていうのは石ノ森先生観ているだけでわかったし。「あれだけ才能のある人が死に物狂いでやってるなあ」というのを肌で感じて、その生きざまみたいなのをすごく見習ったというか。

あの先生のところに行かなければ、ここまで頑張れなかったんじゃないかな、という、思いが改めてあります。
『サイボーグ』手伝ってた時ってのは本当に大変な時期だったし、『ヨミ編』って『少年マガジン』でやったやつを手伝ってたんですけど、そのほかの作品もたくさんやってる時期だったんで、本当に……やたらツラい思い出がふつふつと出てくるんですけれども。

― 石ノ森先生のすごいところを伺うと「とにかく筆が速い」と方々で耳にしました。

永井豪: 本当に早いんです。自分の描くところをバアアアッと一気に描いて、さーっと出て行っちゃう。スタッフはみんな編集にいじめられながら、寝かしてもらえない。トイレでさえ「お前トイレ行くのか?」位の顔される。休むところも無いから仕方ないから、ちょっとトイレで少し目をつぶったり、壁にもたれかかって(笑)。そのくらいしか本当休む時間なかった。

― そんな生活が2年間も続いたと。

永井豪: ええ、そうですね。

― 永井先生が漫画家になられたきっかけというのは、確か、腸を患って死んでしまうかもしれない!って思われて、何かを残そうとしたのが元だとうかがいました。

永井豪: はいはいはい。そうですね! そういう覚悟があったんで、石森先生のところが耐えられたんだと思ってます(笑)。とにかくなにがなんでも漫画家になって、自分のモノを残したい、と言う願望が強かったです。他の事は何も考えていなかった。いろんな夢とかね、こうしたいとかああしたいとか、欲望が全てすっ飛んじゃいますね、生きるか死ぬかになると。「金儲けたい」とか、「有名になりたい」とか、関係ない。全くそんなものどうでもいいということが良くわかりますね。なんかそういう「生きていた証を残したい」というそれだけですね。

― その予備校に通われてた頃は、何かになりたい、という強い思いはそんなに無かったんですか?

永井豪: いや、漫画家になりたいと思ってたけど、どういうきっかけでなれるのかなあ、と考えてましたよ。でも、みんな大学行くし、家の人も行けというし(笑)。とりあえず、勉強嫌いだけどしょうがないけど予備校でも行くかって(笑)。

大学行って卒業したら、なんとか漫画家への道を、それまでに作れればいいなあ、ぐらいの漠然とした思いはあったんですけれども、そんな悠長なこと言ってらんない、って。明日事故で死ぬかもしれない、って切羽詰った気になったんで「やるしかない!」ってそこから思って、やってみたら、道は険しいということはよくわかるし、実力が伴ってないということも良くわかるし、大変でした。

石ノ森先生「お前はマトモじゃないからイイ」

―石ノ森先生が生前、永井先生の事について「キャラとか世界観、作品の出し方などが似通っていた」とおっしゃってたと聞きました。

永井豪: ああ、そうなんですか? それは言われたことがないですね。直接は何も言ってくれなかったですね。一言だけお前は「マトモじゃないからイイ」って。マトモじゃないって言われた(笑)

自分自身はものすごくマトモな、めちゃくちゃマジメでストイックな人間だと思っていたんですけど、「お前、マトモじゃない」って言われて。「ええっ?!」ってビックリしましたね。自分の後輩で全然マトモじゃないやつがいて、でも(石ノ森先生は)「彼はマトモだからダメだねえ」って言われたんですね。「ええっ?!」って(笑)。 石ノ森先生はどこ見てるんだろう、って(笑)。

― 慧眼だったんじゃないですかね(笑) ものすごい褒め言葉じゃないかと。

永井豪: そうだったんですね。ビックリしましたね。「自分ってマトモじゃないんだ」と思って。

― 何をもってマトモじゃない、とおっしゃられたのか、聞いてみたいですよね。

永井豪: 全然わからないね。

巨人 vs デビルマン?!

― 『009』と『デビルマン』が今回戦いましたが、『009』以外で、『デビルマン』に戦わせたい作品やキャラクターってありますか? ご自身の作品や石ノ森先生の作品に限らず、もしありましたら。

永井豪: デビルマンが戦うヤツってなると、大変だよね(笑)。……“進撃の巨人”はどうだろう。(一同爆笑)

― 見てみたいです!(笑)

永井豪: (爆笑)

人殺しも暴力も好きじゃない

― 突然ですが、永井先生が(悪魔)アモンと合体出来たら、なにしますか?

永井豪: (笑)……結構喜んじゃうかもしれないね(笑)

― 悪い世の中を是正したりとか?

永井豪: そうですねえ……。多分、アモンのエネルギーってのはめちゃくちゃ凄いんで、やっぱり暴れたくなるんだろうなあ、とは思いますけどね。かといって僕は生き物殺したりはそんな好きではないので、(笑)人殺しも人に暴力振るうのも好きじゃないんですけれども……。相手がバケモンだったら、やれるかな(笑)

― サイボーグの中で、手に入れたい能力はありますか?

永井豪: いやあ、やっぱり、あの中では(009の)加速装置が一番いいかなあ。気づかれずに悪いことできるかな(笑)誰にも見つからずに!

― そっちに使うんですか!さらに筆が速くなるとかじゃなくて?!

永井豪: それもあるか!(笑)

― 現在執筆されているのは『激マン!マジンガーZ編』ですが、今後の執筆構想とかございますか?

永井豪: 僕的には、ハレンチ学園編とかやりたいんだけど、やらせてもらえるかな(笑)。あの頃、色々もみくちゃにされてましたから。PTAとかにらまれたり、色々(週刊誌なんかに)書かれたりしてたから。

― 今だから書けることとかありそうですよね。

永井豪: たくさんありますね。

― 当時マスコミに人格否定されたりとかしたとも伺いました。

永井豪: それもありましたしね。それはそれで「あ、こういうのもいいな」って思ってたりね。当初はすごくアタマ来たりするんですけれども、「こういうのも逆に、キャラとして残りやすいかな」と。とにかくね、足跡(そくせき)残したいという。

― キャラとして、というのは

永井豪: 永井豪というキャラが、こういうめちゃくちゃなヤツだ、っていうね。それも面白えかな、っていう。

― 俯瞰して、ご自身をキャラとして見ていた。

永井豪: そうそう!そうですね!開き直って。だから、どれだけ叩かれても平気だったというのがありますね。真剣に俯瞰できなかったら、もう、どうのこうのって騒ぎを起こしていたかもしれないけど、そういうこと全然考えないっていう。

『ハレンチ学園』を執筆して総バッシング、“変態”の烙印

― 40年、50年経ちますが、振り返って当時の事は。

永井豪: 生々しいけど、面白かったな、と。だから、面白く描けるかなあと思ってます。(笑)
よく、23、4歳でああいう風に俯瞰した物事見れたなあと思うんですけれども、その分、どこか大人の部分と無邪気な子供の部分と両方あったのかなと。

― 23、4歳で世間から総バッシング!

永井豪: あることない事、書かれたりね。「うわー。これ面白いぞ」って(笑)。ひどいなあと思う反面、面白いなあと思う自分も居るという。すごく不思議だったですけど。

― あることない事、無い事ってどんなこと言われちゃうんですか?

永井豪: もうね“変態”にされちゃうんだよね。知らないで入ったお店のマスターがたまたまね、オカマの人だった、ってことがあって。一緒に言った方がそのことを面白おかしく伝えちゃって。そしたら、すっかりそっちのヒト、みたいな(笑)。

今ではそっち(ゲイやニューハーフ)の人たちも表舞台にたくさん出てそういうのもアリなんだ、ってことになってますけど、僕らの時代にはそれは、即、変態、変質者、って見られ方をしていましたから。そういうのもキャラクターとして(両性具有である)飛鳥了につながっていったのかもしれないなと。

― そのころに経験した「人間って寄ってたかるとろくなことが無いな」という経験が、デビルマンにもつながってたりするんですか?

永井豪: そうだね。多分。根底にそれはあったと思いますね。人間て結局“多数派になりたい”というのがありますよね。だからあの、マスコミが持ち上げてくれるときは、みんな「わー」ってなるけど、誰か叩きだすと「それー!」って叩きだすし!(笑)

それいまだに繰り返しているし、それはそれで、そういうもんだろうなと思うし、それが人間なんだろうなと思う。思いつつも、それを乗り越えられる人じゃないと残っていかないんだろうな、というのも事実だね。

― 行き着くところまで描き切りたい、という当時の情熱は今でも?

永井豪: 変わってないと思いますね。

― ところで、ヒーローものの主人公って割と正義然としていてわかりやすいものが一般的かと思うのですが、石ノ森先生や永井先生が描かれる主人公は、ヒーローというよりは、少数派、マイノリティが多いなという印象です。

永井豪: そうですね。石森先生のサイボーグって、マイノリティだと思います。ことに、石森先生の場合は“被害者”ヒーローですよね。仮面ライダーに至っても、なりたくてなったわけではないんですよ、という。悪い奴らに無理やり改造されちゃったんだよ、っていうね。そういう被害者なんですよね。

― そうですよね。

永井豪: デビルマンはちょっと違って自分から「それならなるわ!」っていうことでなったんだけど、少数派、というところは一緒かなぁ。そういうところは一緒かもしれないなあ。

デビルマンはもう絶対書きたくない、と思っていた

― 先生の描かれる、少数派のヒーロー、また読んでみたいです。

永井豪: 今『ビッグコミック』でデビルマンをもう一回ということで、『デビルマンサーガ』を描いてるんです。「デビルマンはもう絶対描きたくない」と思ってたんです。やるとつらいのわかってたんで。

編集長に口説かれ口説かれましてね。「ゴジラだってハリウッド版があるじゃないですか」なんて言われて(笑)。「あれはハリウッドで別の人が作ってる。本人が書いたら、一緒になっちゃうから無理だ」って言ったんですが、「いや、そこは違うモノ描いてくれ」って。さらに「ビッグの読者はもう50代60代がかなり居ますから、昔のデビルマン読んでますから、それと一緒にならないようにしてください」って言われて(笑)。

それでしかも同じ作者に描け、というそういう酷な!(笑)

とりあえず、年齢変えて職業変えて現代にして、みたいなね。……少し未来か。そういう設定の変更から、どのくらい変えられるかなあというところなんですけれども、ストーリーもこの先どう言う風に変わっていくのかも読めずにいます。

出してみないと自分でもいい作品になるかわからないんですけれども、今のところは、面白がってもらえてるみたいなんで。やれるところまで頑張ってみようと思ってます。そのほかも、やれるものがあればやってみたいんですけれども、デビルマン始めるとねえ……本当、しんどくて!(笑)。もう、一本終わるとヘトヘトに。それと『激マン!』と両方で。「キツいなあ」って思ってる(笑)。

『ハレンチ学園編』になったら、もう少し楽に描けるのかな(笑)なんて思ってます。

― 期待しております。今日は本当にありがとうございました。

よどみなく、屈託なく作品に対する思いを語ってくれた永井豪先生だった。そんな永井豪先生と石ノ森先生のコラボ作品『サイボーグ009 vs デビルマン』は新宿バルト9ほか全国で、10月17日から2週間限定イベント上映中だ。

「サイボーグ009VSデビルマン」公式サイト
http://www.009vsdevilman.com/


(C)2015「サイボーグ009VSデビルマン」製作委員会


『サイボーグ009VSデビルマン』
(新作アニメーション『サイボーグ009VSデビルマン』全3話)

2015年10月17日(土)より新宿バルト9ほか2週間限定イベント上映

ストーリー:
世界中で勃発する暴動や殺人事件。
サイボーク戦士、悪魔の軍団が動き出す―。
かつて悪の組織“ブラック・ゴースト”の手で、望まずながらサイボーグとされた9人の戦­士がいた。
かつてデーモンの“アモン”と融合し悪魔人間となった1人の男がいた。
かれらは人知れず世界を守り続けてきた。ミュートス・サイボーグとの戦いを終えたサイボ­ーグ戦士たち。しかし彼らに平穏は訪れなかった。ESP能力を持つ001/イワンが“悪魔”の出現を警告した。調査を始めるゼロゼロナンバーたち。またデーモン族のジンメ­ンを倒したデビルマン、不動明も各地で勃発する凶悪な事件を追っていた。フランソワー­ズが掴んだ手掛かりを追って郊外の町を訪れた009/島村ジョーは、森でデーモンと戦­う悪魔人間(デビルマン)を目撃する。そのとき、飛鳥了の銃弾がジョーを狙っていた―――。さらにデーモンを倒したデビルマンが、ジョーに襲いかかる!飛鳥了、フランソワーズ­が見守る中、突如として始まったジョーとデビルマンの壮絶なる戦い…。世界を守り続け­てきた2大ヒーローが最悪の出会いを遂げてしまった。
事件の背後に見え隠れするブラック・ゴーストの刺客、そしてデーモン族の影…。果たして­世界はどうなってしまうのか?

生き残るのは一体―――、誰だ?


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記者:

「予備校生のような出で立ち」で写真撮影、被写体(スチル・動画)、記者などできる限りなんでも、体張る系。 「防水グッズを持って水をかけられるのが好き」などの特殊な性質がある。 好きなもの: 食べ物の写真、昔ゲーム(の音)、手作りアニメ、昭和、穀物

TwitterID: wosa

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