蒼井そら 村上淳ら出演 映画『スリー☆ポイント』山本政志監督インタビュー「映画は自由だ!」(2/2)

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映画『スリー☆ポイント』より

2011年5月、京都、沖縄、東京。三都市を異なるスタイルで描く映画『スリー☆ポイント』が、京都を皮切りに全国で公開される。監督は、独創的な映画作りで疾走しつづける伝説の鬼才・山本政志監督インタビュー後編。今回は、村上淳、蒼井そらが主演した東京篇『SWITCH』について、そしてこの映画にこめた思いが語られている(インタビュー前編はこちら)。

映画『スリー☆ポイント』より

・そして東京篇。村上淳、蒼井そら主演『SWITCH』へ
『スリー☆ポイント』のなかで、唯一作りこまれた脚本に基づいて作られたのが東京篇の『SWITCH』である。妻子を事故で亡くして喪失感を抱え込んで生きる男・伊賀(村上淳)と、相手に応じてキャラクターを演じ分ける女・沙紀(蒼井そら)の、無機質な大都市・東京を背景にした異次元ラブストーリー。青山真治(作家・映画監督)のエロティックな演技も注目だ。

――京都は取材に基づいて作られたスケッチ、沖縄は飛び込みのドキュメント。東京篇の『SWITCH』だけが唯一作りこまれたフィクションでしたね。
山本:『SWTICH』はだいぶ前に書いた本なんだけどね。ただ、一人の人間が作るものだから、どんなものをやっても何か通じるものが出てくると思うんだ。後から考えれば「はみ出した人間ばかりが出ているかな」ってことになるんだけど、それを意図的に考えたわけでもなくて。ある時期の、撮影している段階・状態での自分のまなざしみたいなものが自然に出てきたんじゃないかなと思う。

――京都篇と沖縄篇を往復しながら東京篇につながったあたりで、フィクション/ノンフィクションの境界がだんだんわからなくなっていって。最後には「映画なんだからどっちでもいいんだ」と思って観ていました(笑)。その感覚がすごく面白かったです。
山本:ああ、それはすごくうれしいな。もっと映画を自由に楽しんでもらえればね。「なんだったんだ?」と思ってもらえると一番いいんだけどね。けっこう人間って面白いなって気持ちになってくれれば。
『SWITCH』で村上淳くんが演じた伊賀というキャラクターは、社会から疎外されて孤立した人間です。蒼井そらさん演じる沙紀という毒性のある女と知り合って、ずっと事件を背負って生きてきた人間が、一度精神を暴露することで救いになって。でも、彼もずっとこれから生きていく。傷ついてももうちょっと行こうか、みたいなそういう前向きな話をね。

――ラストシーンで、この映画のすべてが旅だったのかなと思いました。相手に合わせてキャラクターを演じる沙紀も、伊賀の心のなかを旅していたのかもしれないと。
山本:そういうことだよね。そんな感じだよね。彼女はそれを過去に何回もやってきて、また続けて行くんだよね。都市のなかですごく精神が不安定になっていくなかで毒が出てきて、それでも生きていくっていうちょっと怖い強さを持たせてみたんだよね。

映画『スリー☆ポイント』山本政志監督

・自由な映画は、観客の心を解き放つ
「三都市を軸に構成して、それぞれのパートが刺激し合いながらひとつの渦を作っていく。そういうことはまったく考えていないから」と山本監督は何度も繰り返し語っていた。それぞれのパートが異なるスタイルで作られているからこそ、すべてに共通する山本監督のまなざしがくっきり浮かび上がってくる。そのまなざしに自らを重ねて観ていれば、あらゆる制約から解き放たれたこの映画の自由さを楽しめると思うのだ。

――監督が沖縄の人たちに話を聴きながら撮っていくこと、京都でヒップホップの若者に話を聴いて映画のシーンを作っていくこと。物理的に移動する旅であるとともに、人の心を旅して観たものを映画として撮っておられたのかなと思いました。究極のロードムービーですね。
山本:そう言われるとほんとそうだね。『SWITCH』で沙紀の相棒のOLが「旅行きたいね。京都とか、沖縄とか」って言いますけど、ほんとあんな感じで。

――沖縄、京都から東京篇に結びつけるときに、うまくいくかなという心配はなかったんですか?
山本:うん、最初から整合性は考えていなかったから。また、この作品を整合性だけで語られるのはまるっきり違うと思っているからね。みんな、映画の既成の見方みたいなものに閉じ込められてしまっているけど、何があってもいいと思うんだよね。あまり何も決めつけずに普通に観ていればあまり関係ないと思う。オレは、そこまで不自由に映画を作っていないから、観る人も考えない方がいいと思うけどね。

――あまり編集されていないように見せて、リクツじゃなくて感覚的に当てはまっていくというか。そこが監督の腕の見せどころのひとつだったのではないでしょうか。
山本:うん。技術と言うのは「何を撮るか」にかかってくるし、芝居の演出の仕方なんかは自分のやり方があるから。今回、超インディーズでやることになって、インディペンデント制作の映画をだいぶ観たんだけどパワーがないんだよね。内向的な映画が多いし、自分の身の回りだけで何かを語ろうとしていて、一歩踏み出せば何てことないのにと思って。
社会にも映画にも、だんだん自由さがなくなってきているでしょう? それを疑うことすらなくなってきているのはヤバいと思う。こういうときに、インディーズがもっとがんばらないとつまらないと思うんだ。企業のなかで映画をつくるのではなく、インディペンデントで撮るときにはのびのびやって、観てくれたお客さんと何かを共有できれば一番うれしいなと思いますね。
 
 
映画『スリー☆ポイント』公式ウェブサイト
http://www.three-points.com/
脚本・監督・制作:山本政志
DV/117min./2011
キャスト:村上淳・蒼井そら/渡辺大和(黒猫チェルシー)/小田敬/藤間美穂/BETTY/KOYO-TE/SEVEN/SNIPE/平島美香/藤田直美/てっちゃん/石原岳/青山真治
ラインプロデューサー:柴田剛、山本和生
製作・配給:レイライン
特別協力:林海象、京都造形大学
公開情報:5月7日 京都シネマ先行ロードショー/5月中旬より渋谷ユーロスペース他、全国ロードショー

(C)スリーポイント☆シンジケート
 

 

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Kyoko Sugimoto

京都在住の編集・ライター。ガジェット通信では、GoogleとSNS、新製品などを担当していましたが、今は「書店・ブックカフェが選ぶ一冊」京都編を取材執筆中。

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