社員の副業はどんどん認めたほうがいい

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モジログ

今回はmojixさんのブログ『モジログ』からご寄稿いただきました。

社員の副業はどんどん認めたほうがいい
ドキュメントツール『Sphinx』* の普及活動などで知られる渋川よしきさんが、ホンダからDeNAに転職したとのこと。

*:『Sphinx-Users.jp』
http://sphinx-users.jp/

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昨年の12月末で本田技術研究所を退職し、1月付けでDeNAに転職しました。ホンダが嫌いでやめたわけではなく、自分のキャリアプランや夢と合わなかったのと、DeNAであれば自分の力をもっと生かせるんじゃないか、と思ったからです。
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「ホンダを辞めて、DeNAに転職しました」2011年02月28日『渋日記@shibu.jp』
http://blog.shibu.jp/article/43616649.html

ITエンジニアの転職なんて日常茶飯事だし、特に渋川さんのように優秀であれば引く手あまただろうから、転職自体は特に驚くべきことではない。

どちらかといえば、渋川さんがいままでずっとホンダにいつづけたことのほうが、私にはむしろ驚きだ。このエントリを読むと、それだけホンダという会社を愛していたことがわかる。

それほどホンダを愛していた渋川さんが、なぜホンダを辞めることにしたのか。その決定的な要因は、本の執筆などの副業ができない、ということだったらしい。

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決定的だったのが、本を書くことができない、ということでした。3年前に、ウェブマガジンの連載の依頼が来て相談したのですが、「本を書いたり、連載することは副業禁止規定に反するのでNo」ということでした。その後、いろんな会社の友人に就業規則を見せてもらったりしましたが、B2Cの会社の中でもホンダが一番厳しかったです。大手のテレビ局でも、「業務で知り得た内容は許可を取ること」「そうでない内容は自由」という感じだったり、ベンチャーであれば「積極的にどうぞ!」という感じでした。当時のマネージャが、総務と交渉してくれて「雑誌の記事なら社名を出さなければOK」と話をつけてくれて、とても感謝していますが、「日本のIT業界を元気にしたい!」と思っていた僕には、この規則は足かせになりました。本田労組も「余暇をゆっくりするために、十分に余裕のある給与を」というスタンスであったため、「副業を許可する」という方向ではありませんでした。
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ホンダのように日本を代表するトップ企業でも、こういう硬直的な制度のせいで、優秀な社員を流出させてしまうわけだ。

副業したいと希望している社員に、副業を禁止して、何かいいことがあるのだろうか。少なくともモチベーションが下がったり、不満が溜まるので、何もいいことはなさそうだ。渋川さんのように、辞めてしまう人もいるだろう。

むしろどんどん副業で活躍してもらって、社の評価や知名度を上げてもらったり、異業種とのシナジーを生み出したりしてもらったほうが、はるかにいいと思うのだが。

もし、副業のために本業がおろそかになることを恐れているのだとすれば、契約社員にするとか、より成果ベースの契約にするなど、方法もありそうに思う。なんにしても、一律に禁止してしまうというのは、なんとも硬直的で古くさいと思う。

先日、もし週休3日制になったらどうなるか? という話を書いた。

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強制によってではなく、週休3日制という選択肢を増やし、それをみずから選べるようなかたちになるのであれば、賛同できる。岩本氏が書いている、これによって日本のサービス産業が伸びて、内需が拡大するというシナリオは、私もおそらくその通りだろうと思う。
もし水曜が休みになったら、無理に“ワーク・ライフ・バランス”の“ライフ”をやらなくても、本業とは別の仕事をしてみたり、ボランティアをしたりしてもいいと思う。
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「週休3日制による内需拡大案 水曜が休みになったら何をする?」2011年02月13日『モジログ』
http://mojix.org/2011/02/13/shuukyuu-mikka-naiju

もし週の休みが1日増えたら、家でゆっくり寝ていたい人もいるだろうし、遊びに行きたい人もいるだろう。しかし、「別の仕事をしてみたい」という人もかなりいると思う。

何年か前、『週末起業』という本が話題になっていた。“週末起業”というコンセプトはとてもいいと思うのだが、実際問題として、平日に本業をこなし、さらに週末に起業するというのは、ムチャクチャしんどいだろう。

その意味でも、もし週休3日制になれば、起業や副業をしたいという人にとっても、大きく可能性がひろがりそうに思う。

しかし実は、これだけであれば、別に週休3日制になるのを待つ必要はない。単に、会社が制度を柔軟にして、社員に起業や副業を奨励するだけでいいのだ。

いまの時代、会社側だって、社員を定年まで世話しつづける余裕はないだろう。起業や副業を通じて、社員があるていど自活できる力をつけてくれれば、それは会社にとってもプラスになる。

このように現実的なメリットで考えると、会社が社員の副業を認めるのはいいことばかりで、マイナス面が思いつかないくらいだ。少なくとも、社員の側が副業を希望しているならば、会社がそれを拒否する理由はぜんぜんなさそうに思う。

それなのになぜ、この動きがひろがらないのか。その理由はおそらく、日本の会社というものが、いまだに“運命共同体”だからだと思う。“運命共同体”、つまり運命をともにする共同体だから、その一員であるかどうか、メンバーであるかどうかは、0(ゼロ)か1(イチ)かの二者択一なのだ。よって、起業や副業をして、半分だけメンバーになるような中途半端さ、“抜け駆け”みたいなことは、許されないのだろう。

これからは、“会社に人が属する”のではなく、“人に会社が属する”時代になると思う。“会社に人が属する”という古い方式にこだわる会社は、だんだん力を失っていき、“人に会社が属する”あたらしい方式の会社に、乗り越えられていくだろう。複数の会社をかけもちしたり、複数の仕事をするというスタイルが、これから増えていくと思う。

執筆: この記事はmojixさんのブログ『モジログ』からご寄稿いただきました。

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