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法は震災に対応できているのか

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原英史さん

法と規制問題に詳しい政策工房の原英史さんに、「法律・規制は震災に対応できているのか」というテーマでお話をおききしました。

※文中に登場するurlについては、ガジェット通信本サイトにてリンクつきでまとめてありますので、そちらもご参照ください。

――規制のために、震災に柔軟な対応ができないという話を耳にしますが、実際のところどうなんでしょうか。まずは被災地支援について、お考えをおきかせください。

●超法規的措置について
被災地支援についてですが、「当面の緊急対応のため、平時の規制とは別対応」というのは、相当程度なされつつあると思います。例えば、

被災地に無料の仮設給油所=経産省(時事通信 3月26日)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110326-00000116-jij-pol

など。もちろん、現場で「規制で引っかかって動けない」というケースもあるでしょうが、官邸は「緊急時には柔軟対応」という姿勢になっているので、すぐ声をあげるべきです

仙谷氏「乱暴副長官になる」と被災者支援に覚悟(読売新聞 3月26日)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110326-00000506-yom-pol

例えば、応急仮設住宅への入居条件(県の災害救助法施行規則などで多くの場合、「全壊」かつ「資力要件」などが課されている)などについても、厳密に条件チェックすることより、実態的に救助が必要な人への救助を優先する、柔軟な運用がなされるよう気をつけていく必要があるでしょう。

福島県災害救助法施行細則(昭和35年06月21日)
http://www.pref.fukushima.jp/reiki/reiki_honbun/ak40000931.html

●復興に向けての課題
少し中期的な話としては、「復興」に向けての課題があります。ここでは、「公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法」2条で、「原形に復旧する」ことが原則とされています。これでは、「この際、もっとよいまちづくりをしよう」という復興事業ができません。関東大震災後に、思い切って都市計画により東京を再生したように、単なる復旧ではなく「復興」を実現する制度にしないといけないと思います。

――原発事故対応についてはいかがでしょうか。

●「災害対策本部」は機能しているのか
原発対応に関してですが、事故対応という意味では、まず、官邸が制度を使いこなせていないことに問題があると思います。「原子力災害対策特別措置法」で、緊急時には官邸に強力な調整・指示権限が与えられているはずですが、官邸からは「東電から情報があがってこない」、「原子力安全委員会と保安院の連携が不十分だ」などの声(報道によると)。せっかく「原子力災害対策本部」を立ち上げているのに、何をやっているのかと思います。この「災害対策本部」が、問題の深刻化が明らかになった14日以降に開催頻度が急低下し、18日以降はほとんど開催されていないらしきことも甚だ疑問です。

原子力安全委員会
http://www.nsc.go.jp/

「原子力災害対策本部」はどこにいった?(会員制サイトForesight 2011年3月24日)
http://www.fsight.jp/blog/10346

国民にとって心配な事態がまだまだ継続している中、一刻も早く、関係機関や専門家の総力をあげる体制を作って、対処と、国民への正確でわかりやすい情報開示をやってもらわないと困ります。

また、この際、国内だけでなく、世界中の知見と技術を集めて対処してもらう方がのよいでしょう。「原子力災害対策特別措置法」上、「災害対策本部」のメンバーは、総理以下、国内の行政機関の職員などに限られていますが、超法規的に外国関係機関の人にも「災害対策本部」のメンバーに入ってもらえるとよいと思います。フランスのIRSNのサイトなど見ていると、日本政府よりよほど信頼できそうに見えてしまうのは、私だけでしょうか。

IRSN(フランス放射線防護原子力安全研究所)の配布文書(日本語)
http://www.irsn.fr/EN/news/Documents/irsn-QA-jp.pdf

●電力小売の自由化について
停電対応では、東電とは別の電力会社と契約できるようにすることが急務と思います。現在、比較的規模の大きな工場・ビルなどは、地域の電力会社(東京なら東電)以外のところ(いわゆるPPS業者、例えば自家発電設備を持っていて余力あるところなど)から電力を買うことができますが、一般家庭や町工場レベルは認められません。このため、例えば、小さな事業所などで、計画停電で営業できなくなると困るので、自家発電を持っている会社と別途契約して優先して流してもらうようにしようと思っても、認められないわけです。逆に、この規制を緩和すると、「この際、大き目の自家発電設備を作ってしまおう(余った分は売ればいいので)」という企業なども、もっと出てくると思います。

●電気料金の認可制について
ピーク時の料金値上げなど、本来なら今すぐさっさとやればよいのですが(ガソリン料金なら、需給ひっ迫すれば、当然のように値段が上がる)、電気事業法で料金認可制になっているので、「これから検討」などとのんきに言っています。電力自由化とセットで、料金認可はやめたらよいでしょう。

●電気の使用制限
また、これは、「制度が制約になっている」というよりは、「制度はあるのに、運用していないのがおかしい」という話ですが、電気事業法27条で、電気の使用制限はできる(石原知事が「政令でやれ」といっているとおり)。ムダな使い方を定めて「禁止」し、違反者には100万円の罰金を課したらいいと思います。

【原英史さんプロフィール】
原英史(はらえいじ) 1966年東京生まれ。東京大学法学部卒、米シカゴロースクール修了。89年通商産業省入省、07年から安倍晋三、福田康夫内閣で渡辺喜美・行政改革担当大臣の補佐官を務める。09年7月に退官後「政策工房」を設立。政策コンサルティングをスタート。近著に『官僚のレトリック』(新潮社)


●文中に出てきたリンク一覧

被災地に無料の仮設給油所=経産省(時事通信 3月26日)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110326-00000116-jij-pol

仙谷氏「乱暴副長官になる」と被災者支援に覚悟(読売新聞 3月26日)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110326-00000506-yom-pol

福島県災害救助法施行細則(昭和35年06月21日)
http://www.pref.fukushima.jp/reiki/reiki_honbun/ak40000931.html

原子力安全委員会
http://www.nsc.go.jp/

「原子力災害対策本部」はどこにいった?(会員制サイトForesight 2011年3月24日)
http://www.fsight.jp/blog/10346

IRSN(フランス放射線防護原子力安全研究所)の配布文書(日本語)
http://www.irsn.fr/EN/news/Documents/irsn-QA-jp.pdf

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深水英一郎(ふかみん)

記者:

見たいものを見に行こう――で有名な、やわらかニュースサイト『ガジェット通信』発行人。トンチの効いた新製品が大好き。ITベンチャー「デジタルデザイン」創業参画後、メールマガジン発行システム「まぐまぐ」を個人で開発。利用者と共につくるネットメディアとかわいいキャラに興味がある。

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