「ヤバイ現場」っていうのはこういうこと! 殺害塩化ビニール × 自家発電コラボ・イベントをレポ!

「ヤバイ現場」っていうのはこういうこと! 殺害塩化ビニール × 自家発電コラボ・イベントをレポ!

2015年4月26日(日)、ザ・クレイジーSKB(バカ社長)率いる日本最凶レーベル「殺害塩化ビニール」と、アイドル × ノイズ × お笑いを融合したことで局地的に有名なイベント〈自家発電〉が、四谷OUTBREAK! にて一夜限りのコラボレーション・イベント〈殺害発電〉を開催した。

この日の様子を、イベント〈自家発電〉のライヴ・レポートでもお馴染みの、ライター / 編集者の森樹がレポート!!!!!

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ザ・クレイジーSKB(バカ社長)率いる日本最凶レーベル「殺害塩化ビニール」と、アイドル × ノイズ × お笑いを融合したことで局地的に有名なイベント〈自家発電〉が、一夜限り(?)のコラボレートを敢行。“なんでもできるライヴハウス”として地上波デビューを果たしたライヴハウス、四谷アウトブレイクで〈殺害発電〉が開催された。前日に主催者から「汚れてもいい服装で」と警告の如きインフォメーションが発信されたものの、逆に燃え上がるMッ気体質のファンが数多く集まり会場は大盛況。4:44という縁起悪そうな時間から、怒涛のパフォーマンスが繰り広げられた。

元々、自家発電の主催者であるGokaは、殺害塩化ビニールの熱狂的ファン。〈自家発電〉自体、開会 / 閉会宣言のためだけに芸能人を使う演出など、殺害レーベルの一大イベント〈殺害サミット〉のオマージュを感じさせる構成となっている。出演者としてもザ・クレイジーSKBや流血ブリザードが名を連ねていたが、今回は流血ブリザードに加え、おいおい教、BBG48、DIGITAL CITY JUNKEYS、猛毒といった殺害レーベル所属、もしくは音源をリリースしたバンドたちが大挙襲来(ちなみにレギュラーDJオッチーもユニット「バロムワン」として殺害レーベルからリリース経験あり)。彼らを迎え撃つのが町あかり、日出郎&ずれやまズレ子、Maison Book Girlという、“自家発電イズム”を感じさせる異次元のブッキング。字面を追うだけでも頭がクラクラするようなラインナップであったが、実際のパフォーマンスも充分にその期待(と恐怖)を心から感じられるライヴであったことを、まずは記しておきたい。

今回は司会として、自身のネタ(ものまね)以外はジャイアンのものまねで押し通したカズマ・スパーキン、そして芸人としては最後のステージであることを突如として発表した無滑舌芸人ことインタレスティングタケシの2MC体制。… の予定だったが、あまりに頼りないとのことで、殺害イベントで司会を務めるライター、フジジュンが急遽参加。2MCへの的確なツッコミと、淀みのないバンド紹介によりイベントの進行を支えていた。

●おいおい教バンド
みつまジャパンによる開会宣言から本編がスタートすると、お笑い芸人・元氣安(ex.ワハハ本舗)が率い、アウトブレイクの店長・佐藤学(別名 : にわとり)がギターを担う「おいおい教バンド」が登場。「お~いおい!」という掛け声と共に登場した安(教祖)が、活きの良いガレージ・パンクの中でシャウトしつつ、合間にちょっぴりオゲレツな儀式を繰り広げるナニモノにも変えられない世界。しかも〈殺害発電〉というイベントに脱糞、いや発奮した彼らは、しめじやそうめんなどをガツガツと客席に投げ入れる超攻撃的なパフォーマンスを強行。開始15分にして飛び交う悲鳴に、〈殺害発電〉のスタンスを早くも思い知らされることになった。じつは教祖、当日の朝まで体調不良につき病院に担ぎ込まれたばかりで、特に下痢の症状がひどかったらしい。それが逆に集中力が高まった可能性も否定できないほどの気合が入ったステージだった。脱糞も、しませんでした。

●町あかり
汚い話ばかりをして本当に申し訳ない。2組目は、ステージに上がったその姿だけで爽やかな風が吹き抜けたシンガー・ソングライター、町あかり。「musicるTV」や電気グルーヴのO.A.などで話題を呼び、ついにメジャー・デビューまで決定した彼女。今回はギター、ベース、ドラムの「町あかりバンド」編成での出演となった。ノスタルジックな気持ちを呼び起こす淡いアイドル / 歌謡ポップスを、キュートな装いで、情感豊かに歌い上げていく。そこには、日本語の語感を大切にして、その意味を伝えようとする姿勢が感じられた。なるほど、これが昭和歌謡への愛情に繋がっていくのかと。バンドの演奏は巧くはないものの愛嬌はあり、きっちり自分たちの世界を構築。さっきまで床に食べ物が散乱していたのを忘れてしまうほどの清らかな求心力がそこにはあった。

●流血ブリザード
続いては、殺害レーベルの鉄砲玉兼若手筆頭株である流血ブリザード。メンバーは舞台に上がるとすぐさま「日和ってんじゃねーぞ」と客を挑発し、ピリッとした空気を一瞬で創り出していく。エッジの効きまくったハードコア・パンクを轟かせる彼らの鬼気迫る演奏に感化され、高く拳を突き上げるオーディエンスたち。ただ殺伐しているだけでなく、ラストの脱力系ダンス・チューンのようにユーモラスにも振る舞うことのできる彼らのキャラクターはじつに痛快。ド派手なメイクとコスチュームに加え、豆乳、食パン、店長のリクエストに応えたイカなどを投げ込むパフォーマンスは確かに過激だが、殺伐さだけで終わらないエモーショナルな部分が、彼らの魅力だろう。客席で灯されたドラゴン花火はその燃えたぎるその心の内を示すようでいて、危うくも美しいものだった。

●BBG48
この日、精神的な意味で最もダメージを与えてくれたのは彼女たちであろう。3Kミュージカル劇団として20年以上活動するゴキブリコンビナートの所属女優で編成されたアイドル・ユニット、BBG(分倍河原の略)48。殺害ロクデナCD-Rシリーズから、『モザンビークで捕まえて』を発売した彼女たちのステージは、強烈に、偏執的に性を意識させるもの。いわゆる常識の範囲からははみ出た、あまりにあけすけな表現なので、不謹慎 / 差別的 / 狂気的といった言葉がフッと思い浮かぶ。だが、改めてレポートを執筆しようとしたとき、そういった言葉では収斂したくないレベルで剥き出しのパフォーマンスであったし、同時にエンターテインメント性の高さも浮かび上がってくるものだった。「モザンビークで捕まえて」はわざわざ黒人をアフリカにまで探しにイカなくてもという疑問は生じたが、「ゴミあさりのうた」はリアリティに満ちていたほか、「crazy for you」はピュアの極北だったと言える。とはいえ、正味30分にも満たないステージなのに、見終わった瞬間にドッと疲れが出たのは事実だ。

●Maison Book Girl
BBG48からMaison Book Girlへ。そんな地獄から天国といった趣の橋渡しに殺害発電の「いろ」が凝縮されている気がするが、BBG48の後だとその清涼感が際立っていた4人組の彼女たち。「いずこねこ」で活躍していたサクライケンタがプロデュースを手掛け、〈自家発電〉ファンにはお馴染み、元BiSのコショージメグミも参加している。ファッション・ブランドを同時に立ち上げるなど、既存のアイドルとは異なる立ち位置を築こうとしており、音楽性もメロディアスで優しい肌触り。ただこの日はオケの音が楽曲によってバラバラとなっていたこともあり、BBG48のインパクトを塗り替えるには(方向転換という意味においても)少し世界観としての弱さが見られた。とはいえ、ユニットは始動したばかりで、BBGのインパクトも反則級だけに、彼女たちにその責任を背負わすのは心苦しいところではあります。

●THE DIGITAL CITY JUNKIES
さてさてイベントも終盤戦に入り、殺害レーベル所属の4人組、THE DIGITAL CITY JUNKIESが登場。客席側に放り込まれた爆竹により、のっけから破裂音が会場中に響き渡る。アーティスト名に入っているデジタル感は薄く、非常にオーソドックスな、しかしながら力強いパンク・サウンドを繰り広げたこの日の彼ら。ライヴ・バンドとしての経験値の高さ、そこから生じる強み、凄みが感じられる素晴らしくタイトな演奏で、ギミックのみで勝負するバンドではないことを、その音だけで雄弁に物語っていた。ステージでの立ち居振る舞いもあくまでパンクスとしての鋭さを保ち、オーディエンスに対して決して弱みを見せないあたりには彼らの美学が匂い立つ。これだけ個性的な出演者が連なりながら、きっちりとインパクトを残していったのは、そうしたブレのなさではなかろうか。

●日出郎&ずれやまズレ子
自家発電側が送り込むメガトン級のゲストとしてステージに姿を現した、ゴージャスな出で立ちの2人組。それが日出郎&ずれやまズレ子である。どちらも芸能界で活躍するタレントであり、歌手としても知られるわけだが、この日も抜群のコンビネーションによる抱腹絶倒のトークで会場をがっちりとロック。〈殺害発電〉は放送不可能な内容が多数あったが、なんだかんだで一番ヤバイ内容だったのは日出郎のトークだった、といっても過言ではない。肉体改造中というズレ子はこの日は体調が悪く、下痢気味だったそうだが、むしろそうした部分すら爆笑ネタにしてしまう手腕はさすが。もちろん、ズレ子の作詞・作曲による楽曲もハイクオリティであり、日出郎が歌うド演歌「ガン降りの雨」、ズレ子が歌う「マリモに触れたら阿寒湖」といった情緒と艶気溢れる楽曲で会場を包み込んだ。ラストには、ヴィレッジ・ピープルを彷彿とさせる応援ソング「マッチョマンのおにぎり」をふたりで熱唱し、会場を後に。爆竹も花火もなかったはずなのに、最大級の嵐が襲ったような時間であった。

●猛毒
ラストは2013年に奇跡の復活を果たした、バカ社長率いる猛毒。ステージには、コック、ロボット(中の人は泥酔)、外国人(白人)、おばあちゃん、ギタ女(いうまでもなく本気のやつ)、そして、いつもの如く白塗りメイクのバカ社長に硬派な出で立ちのリズム隊が。明らかにキャラクターが大渋滞を起こしているわけで、一体感は皆無だった。それもそのはず、メンバーが全員揃うのはライヴの本番のみということで、次のライヴ・スケジュールを舞台上で決めるというフリーキーさだ。だが、彼らのファストコア・サウンドの切れ味は半端ではない。芸能人の名前をフルネームで叫ぶ、ただそれだけのことが、やりようによってはこんなにパンクになることを彼らのパフォーマンスが証明している。研ぎ澄まされた、歴史に残らない瞬間の美、である。これが30年以上、幾度もライヴハウスから出禁をくらい、何度も死にかけながらも丸くならず、アンダーグラウンドのシーンで尖り続けてきたバカ社長のヤバさであり、人間としての底力であろう。加えてラストの猫ひろしの乱入は、〈殺害発電〉を総括するようなものとなった。

閉会宣言は、この時間のためだけに楽屋で待機していた玉袋筋太郎が。「このイベントも君たちも発酵している!」と、最後まで無事に生き残ったオーディエンスの人間味を激賞しつつ、クサヤを取り出してこの日一番の悪臭を漂わせて帰っていった。結果、大団円ではなく悲鳴で終わったところが、このイベントを象徴していたと言えるだろう。

〈自家発電〉と殺害塩化ビニールという“混ぜるなキケン”タッグによる、混ざるとやっぱりキケンだった、でも楽しかった〈殺害発電〉。それは懐古的なものではなく、〈自家発電〉と殺害企画が現在も定期的に開かれている活きたイベントだからこそのケミストリーであり、他ではない人生にとってちょっとだけ有意義な毒となったのである。(森樹)

写真 : 北原共輔

〈殺害発電〉
2015年4月26日(日)四ツ谷アウトブレイク

LIVE : 猛毒 / 日出郎&ずれやまズレ子 / 流血ブリザード / THE DIGITAL CITY JUNKIES / おいおい教バンド / 町あかり / Maison Book Girl / BBG48
転換 : DJオッチー
司会 : カズマ・スパーキン / インタレスティングタケシ
閉会宣言 : 玉袋筋太郎

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