金と政治といえば……そう小沢などよりも機密費問題の方が重大では?
今回はヤメ蚊さんのブログ『情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)』からご寄稿いただきました。
金と政治といえば……そう小沢などよりも機密費問題の方が重大では?
大阪では、市職員が、河川の清掃中に見つけた財布などから現金を抜き取っていたことを理由として、6人を懲戒免職、21人を停職(1~6か月)の処分にした。調査報告書によれば、最高額で一度に15万円を山分けしたケースもあるということだが、これって、別に税金を無駄遣いしたわけでもないしね~。もちろん、落とし主が分かるような場合にまで分けていたのだとすると、悪質度はアップするわけだが、内閣官房機密費(年間14億6165万円)や外務省機密費(年間27億円)に比べれば、たいしたことはない。それなのに、機密費の使い道を問題にすることを放棄したマスメディアは、歌を忘れたカナリア状態だ。
カナリア状態になったのは、野中元官房長官がジャーナリストにも機密費が分配されたことを明らかにした後のような気もする。民主党政権になった後は、結構取り上げられることも多かったが、野中発言の後は、取り上げたら、お前のとこももらっとるだろう、という批判が来るのを恐れているのかもしれない。
小沢問題を“政治とカネ”の問題として深刻なテーマだと考えている全ての皆さんに、「小沢を呼ぶよりも前に、機密費の支払いをストップするべきではないか」、「小沢を呼ぶよりも前に、歴代官房長官、歴代外務大臣を呼んで機密費について質問するべきではないか」と問うてみたい。
機密費は、数十億円という巨額なもので、使い道が明らかになっていないだけでなく、明らかに不正な使われ方をしている節がある。
ジャーナリストへの分配もその典型例だが、鈴木宗男さんが明らかにした(1)自民党の歴代首相に盆暮れ各1000万円(小渕内閣当時、中曽根、竹下、宮沢、橋本の4人)、(2)平成10年の沖縄県知事選で大田知事を破るために3億円を対抗陣営(稲嶺陣営)に渡されたという話も、それが本当なら許されないことだ。野中さんを国会に呼んできちんと質問をするべきだが、それをやれという論調を聞くことはない。
沖縄知事選について言えば、内閣官房機密費だけではなく、外務省機密費が動いた可能性が大きい。というのも、平成10年の沖縄知事選とは、革新派の大田知事に保守派の新人稲嶺氏が挑むというものだったが、その直前の平成9年(1997年)に“沖縄大使”が設置されているのだ。
国内に“大使”というのも変な話だが、日米安保問題、基地問題に対応するためだという口実で設置された。
しかし、沖縄が復帰したのは1972年だから、実に25年間も設置されていなかったものが急きょ、大田県政を破る闘いの直前に設置された。
沖縄に大使を設置できれば、外務省機密費から沖縄の稲嶺選対にじゃぶじゃぶ、金をつぎ込むことができる、こう考えても不思議はない。
そもそも、沖縄大使構想が出たのは、大田知事が初当選した平成2年(1990年)の前年。国会議事録を読むと、
* * * * *
井上(和)委員「沖縄の西銘知事が外務大臣に対しまして、水爆水没事故の真相究明あるいは非核三原則厳守、こういうふうな要請をされた際に、沖縄に大使を考えてもらいたいという要請があった、こういうふうに聞いておりますが、これはそのとおりでしょうか」
時野谷政府委員 「西銘知事より先生がただいまお話しの御要望があったと承知いたしております。私どもは、日米安保体制の効果的な運用を図っていきます上で、沖縄におきます米軍施設、区域の円滑かつ安定的な使用を確保していくということが非常に重要であるというふうに認識しておりまして、従来とも私どもは防衛施設庁等関係機関との連絡を密にいたしまして、米軍にかかわる諸問題を的確に把握いたしますとともに、問題解決のために努力をしてまいっているつもりではございますけれども、せっかくそういう御要望でもございますし、また、他の方面からもそういう御要望を承っているという状況でございますものですから、どういうことがさらにできるのか、沖縄にかかわる諸問題に一層効果的に対応していくためにはどういうことができるのか、いわゆる沖縄大使と申しますか、そういう可能性も含めて検討をいたしている次第でございます」
* * * * *
という記載がある *1。
*1:第114回国会 衆議院 内閣委員会 第5号 『国会会議録検索システム』参照
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/114/0020/11405250020005a.html
この西銘知事とは、沖縄返還前の68年11月に行われた初の琉球(りゅうきゅう)政府行政主席公選に、米軍基地存続を容認する保守系候補として、立候補した人物であり、米側が自民党に対して、選挙資金のてこ入れを促したことが明らかになった人物だ *2 。
*2:外交文書公開:初の琉球(りゅうきゅう)主席選、日米が裏工作展開 保守系候補当選目指し 『毎日jp』参照
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20101222dde007010014000c.html
具体的には、“68年6月18日付の下田武三駐米大使の公電によると、米国務省のスナイダー日本部長らが外務省幹部に「本土自民党の援助が手遅れになることを最も心配し、沖縄への選挙資金送金方法改善について申し入れを行った」と、自民党に金銭的支援を促していた”(*1より引用)というのだ。
ここから推測されるのは、自民党政府からの選挙資金を受け取ることに味をしめた西銘陣営が、革新派の強力候補出現(大田氏)をおそれ、平成2年の選挙で外務省機密費を使おうとして、沖縄大使設置を要望したが、失敗し、落選した。そして、大田県政が3期続くことを阻止するために、自民党政府は沖縄大使を設置し、外務省機密費を使って、3選を阻止した、ということだ。
これが事実だとすると、税金の無駄遣い、というだけでなく、民意をゆがめたという意味で極めて問題が大きい。
市職員は十数万円の着服で懲戒解雇され、官房長官、外務大臣は、数十億円を不正に使用しても、まったく何らのペナルティーもない……。
こんな国、おらぁ、嫌だ。
今年は、そんな国から少し、民主的な国になるように“したい”もんです。そう、願うのでなく、努力することによって……。
執筆: この記事はヤメ蚊さんのブログ『情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)』からご寄稿いただきました。
文責: ガジェット通信
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