ネットメディアと既存メディア、それぞれの「ジャーナリズム」とは

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ニコニコ生放送に第一線のジャーナリストが集結。2010年12月29日、「こんなジャーナリズムで大丈夫か?」と題した番組が放送された。番組には司会の田原総一朗氏をはじめ、上杉隆氏、神保哲生氏、青木理氏、ひろゆき氏といったネットを中心に活躍するジャーナリストや識者に加えて、既存メディアからも時事ドットコム編集長・武部隆氏や、AERA記者・山田厚史氏、フジテレビプロデューサー・福原伸治氏が出演し、様々な媒体において第一線で活躍するジャーナリストらが集結。2010年のニュースを振り返るとともに、「ジャーナリズムとはなにか」という根源的なテーマにまで切り込んだ。

■上杉氏「日本にメディアはあるがジャーナリズムはない」、田原氏と一触即発

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番組内で田原氏は自らのジャーナリズム観や経験を踏まえ「既存のメディアが生き残るためにはどうすればいいのか」を熱く語っていたのに対し、上杉氏が「日本にはメディアはあるがジャーナリズムはない」と主張。それに反発した田原氏と一触即発となる場面もあった。

 しかし、ともに記者クラブという日本特有の文化が一因となっている問題であるという考えは共通しており、議論は記者クラブの閉鎖性に発展。上杉氏は「記者会見には記者クラブしか入れない、こんなしきたりがあるジャーナリズムなんて日本しかない」と強く非難し、遅れて登場したひろゆき氏も「(ウィキリークス代表の)ジュリアン・アサンジ氏を扱いたい非記者クラブの人間が政府関係の記者会見に出られないのに、市川海老蔵問題を扱っている記者クラブの人間が会見に出られるのがおかしい」と構造の矛盾を指摘した。「日本のマスメディアによるジャーナリズムを語ることは記者クラブを語ること」という閉鎖性は未だ強く残っているという現実に、多くの視聴者も「もう新聞やテレビは信じていない」などのコメントを送り、不信感を募らせていた。

■福原氏「既存メディアは上から目線をやめないといけない」

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さらに田原氏は第一に利権をつかもうとする日本のマスメディアの体質についても言及し、福原氏もテレビマンとして「もう既存メディアは上から目線をやめないといけない」と自戒を込めて言った。青木氏も「足を使っている本当のジャーナリストたちを支えてくれるメディアは既存マスメディアだけなのか、それを考える時期に来ている」とジャーナリストの立場に立ち切実な思いを語るなど、番組は出演者それぞれのジャーナリズム観が激突する場となった。

 上杉氏が語るところの「健全なジャーナリズムを育てるためには多様な価値観に基づいた報道をすること」を将来、既存メディアが成すことができるのか、はたまたネットメディアなどが新たなマスメディアとしてその役割を果たすことになるのか。第一線で活躍するジャーナリストたちによる証言の数々は、日本のジャーナリズムがこれから進む道への示唆に満ちていた。

ニコ生特番 2010年 こんなジャーナリズムで大丈夫か?
http://live.nicovideo.jp/watch/lv35865618
(番組はタイムシフト機能で2011年1月5日まで視聴できる)

村井克成

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