OKAMOTO’Sのアドレス帳 Vol.7 柳川荒士(JOHN LAWRENCE SULLIVAN)×オカモトショウ(後編)
OKAMOTO’Sのメンバーが友人はもちろん、憧れのアーティストなどをゲストに迎える対談企画第7弾は、パリコレクションにも参加するブランド、JOHN LAWRENE SULLIVANのデザイナー柳川荒士が登場。無類の音楽好きとしても知られる彼が、ファッションに強い関心を持つオカモトショウと初の対談。音楽とファッションというジャンルは違えど、志や姿勢は共通する2人はあっという間に意気投合。熱いトークを繰り広げました。
(中編より続き)
柳川「できることならば、音楽を聴く人や服を着る人たちも、もっとクリエイティヴであってほしいと思います。いいクリエイションを理解するには自分自身がクリエイティヴになっていかないといけない。周りに右往左往する耳や感性で服を見てると、自分たちもその枠から出れないじゃないですか。でもその枠を飛び越えた時に、とてつもない感動が待ってる。だからもっとそういうところにチャレンジしたいと思わせる動機の1つになるようなバンドやブランドになれたら最高だなと思います。この良さをわかりたいって努力したり、磨きはじめる動機になりたいですよね」
ショウ「この服を着てやりたいと思わせたい、っておっしゃってましたもんね」
柳川「そう。着たい服、着てみたい服を作っていきたい。自分がもっと成功して、もっと影響力のある人間になると、人はわかろうと努力すると思うんです」
ショウ「矢野顕子さんが『努力して音楽を聴いてください』ってライヴでおっしゃったんですけど、本当にそう思います。俺たちも自分自身が頑張って1か月聴き続けて『やっとわかった!』と発見がある音楽もあるんですよ。アルバム全部ではないけれど、数曲忍ばせているそういう楽曲を聴いてわかってくれたりすると、絶対何かが広がると思うんです。俺は音楽からそういう感動を受けることが沢山あるので、同じように自分の音楽でも与えられたらいいなと思います」
柳川「服も音楽も、叔父さんや先輩に勧められたものを最初は理解できなかったんだけど、自分の中で感性がボンと弾けて、感じられるようになった。これは口では説明できない感覚なんだけど、そうなると、自分が変化していく。耳も目も感覚も鋭くなっていく感じがする。そういう感覚を若い人たちが持つようになれば、日本のファッションの文化度は上がってくんじゃないかと思います」
ショウ「嫌いと思えるかどうかもすごく大事ですよね」
柳川「みんながいいと言っているものをちゃんと嫌いと言えるのは、自分でジャッジができているということだから素晴らしいことだと思います」
ショウ「興味がないものは世の中に沢山あるし、街の中にも溢れてるけど、あまりにもそういうものばかりに囲まれてなんとなく暮らすのはもったいないなと思いますね。ちょっとでも自分はこれがいい、これが嫌だという感覚を持てば、大好きなものができて、それになんとかして関わりたいと思って仕事や趣味を始めたり、人生に1つ道筋ができていくような気がします。そこまで壮大なものを常に伝えたいと思うほど俺は偉くないけれど、最終的に行きつきたいのはそういうところですね」
柳川「OKAMOTO’Sの音楽を聴いてそういう気持ちになってる人は絶対いると思いますよ」
──実際、OKAMOTO’Sからそのルーツを辿り始める人もいますしね。
ショウ「ハマくんがやっていたラジオに、16歳の女子高生から『The Whoをかけてください』というリクエストが来て。俺らがアルバムでカバーしたのを聴いて知って、『オリジナルを流してください』って。そういうのは本当に嬉しいですね。ルーツが全てではないし、そこから最新の音楽を聴き漁るでもいいんだけど、とにかく自分の好き嫌いがわかったり、文化に興味を持ってくれるという、それが嬉しいですよね。自分たちが作っている好きなものが、そういうきっかけになれたらいいなと思います」
──JLSの服も、生地から、それこそ糸からこだわって作っていることで他にない美しさが出来上がっている、そういう裏側をもわかってもらえたら嬉しいですよね。
柳川「そこを売りにしているわけではないけれど、自分自身が白いシャツが5枚並んでいてその中から1枚を選ぶ理由があるじゃないですか。シンプルなものの中で選ばれるということ、選ばれるために妥協したくないんです。こういうシャツだったらこういう素材があればいいけれどない、じゃあ自分たちで作らないとっていう。既成の素材で安価な白シャツでいいという人はそれでいいんです。でも目の肥えた人たちや感性の鋭い人たちに手に取ってもらうためにやってみるというだけで、いちいち裏側を謡う必要もない。周りに向かって無言で、服で、『どうですか、わかりますか』って常に真剣勝負で挑んでいるんです。わかってほしいなって」
ショウ「本当にそうですよね。その努力、自分を突き詰めていく感じ、それこそ自分の中のプレッシャーとの闘いですよね。今は次のアルバムに向けて色んな曲を書いてるんですけど、とりあえずやりたいことを全部やります。最近はメンバーも『どうなってんの?』って混乱するくらいの曲を沢山書いてるんですよ。本当に、それくらい自分を出して挑戦して、突き詰めていかないとなって思います。苦労するというか、魂を削ってる瞬間がありませんか? 『いや、もっとだ』みたいな時だったり」
柳川「ありますね」
ショウ「そこがたまらなく楽しいんだけど、気づくとドッと疲れたりもして。ずいぶん前に作ったものを聴いて『うわあ、狂気じみてるなあ!』と感じたり。でも何か残したいですよね。自分のクリエイションを人に伝えられたり、そこで好き嫌いを判断してもらうために、自分も熱をもって作っていくべきだと思うし、OKAMOTO’S印を残せたらいいなとは思いますけどね」
柳川「そもそもOKAMOTO’Sの音楽を聴いたり、JLSの服を着てみたいと思う人は、やっぱり何か感じたいと欲しているんだと思います」
──どちらも主義主張が激しいですからね。
柳川「それでいいんですよ」
──うん、アクがあるほうがいい。ショウくんは世界にも出てみたいと思っているわけで、その話も聞いてみたいんじゃないですか。
ショウ「そこはすごく興味があります。やっぱり自分で世界に行きたいというアピールをして向かっていったんですか?」
柳川「僕はやりたいと思ったら即行動してきた人間なんです。オファーされて大きな合同展示会の中で4ブランドくらいでショーをやったのが東京コレクションのデビューなんですが、面白かったんですよね。リハも本番もとにかく気持ちが良かった。自分の服をモデルが着て歩くとすごく格好いいなと思ったんです。それで、これを自分1人の舞台としてやりたいと思って、即その半年後に単独のショーをやったんですよ」
ショウ「早っ!」
柳川「ファッション協会に参加せず、自分だけでやりました。金曜の夜19時にやりたいけど、大きい団体に入るとスケジューリングされてしまうから関係ないところでやろうと。同じ時間に大御所が入ってるけど、僕はここでやるって。どこにも所属していないのに、2回目くらいから東京コレクションの中の中心的なブランドとして位置付けされるようになって、お客も沢山入ってくれるようになって。でも4年やって、何か面白くなくなったんですよね。デザイナーとバイヤーと編集者で、自分がドンと出したものを相手がどう感じてどう書くか、買うかという真剣勝負の場だったはずだったのが、中心に位置付けされたことでつまらなくなった。それでもっと面白いところでやりたいと思って、ワンシーズンお休みしてパリコレクションに出ました。まだ自分は足りないとわかってるし、世界はもっとすごい、もっと厳しいところで沢山の人に見てもらいたいと。それで実際に行ってみて、色々傷つきながらもやってるところです。今、ショー自体はお休みして、また新しいステップに向かっています。僕はできる状況があり、その志があるのなら、世界にチャレンジしてもいいんじゃないかと思います。違うなと思ったらやめればいいし、それは決して格好悪いことじゃないと思う」
ショウ「そうですよね。世界でやりたいというのはずっと夢見ているのでチャレンジしたいです」
柳川「世界というのは具体的に言うと?」
ショウ「最終的にはハイドパークを埋めたいんです」
柳川「まずはツアーを回って?」
ショウ「はい、ツアーを回れるくらいの力をつけて。フェスは一通り経験して、毎年ベトナム、香港にも行っていて、台湾、韓国も2、3回ずつ行ってます。元々ロックの文化がないところに行くのもそれはそれで面白いんです。ベトナムは資本主義じゃないので、商業的な音楽のベースもないし、スターがいない国。だからライヴをやるとお客さんが怪我をしそうな、ちょっと危ないくらいの盛り上がりになるんです。そういうところでいきなり大スターになるという夢もある。そういう意味では、X JAPANは相当イケてると思います。アジアでもアメリカでも、その土地の一番大きい会場でやっていて。音楽性は全然違いますが、ああいう感じで世界的に有名になれたらすごく格好いいなと思いましたね」
柳川「10年やっても僕はこのくらいのレベルで、まだまだやらなきゃいけないことがあるから、OKAMOTO’Sはこれからですよ」
ショウ「荒士さんをなぞるとあと2年後には世界ですよね。それくらいから動き出せたら10年目が面白そうですよね」
──JLSは日本でトップを取って行ったわけで。
ショウ「そこですよね」
柳川「何をもってトップというかもありますよ。時代感にフィットしてたのかもしれないし」
ショウ「今年、来年ぐらいでそこまで持っていきたいですよね。5年目を終えて、日本のロックバンドとしてパイオニアになっていきたいし、何かを切り開きたいという思いはあって。今はどのあたりが今の時代にも合っていて、4人の身体にもフィットするかを探っているところですね」
──ああ、楽しい時期ですね。
ショウ「すごく楽しいです。楽しいけど、うまく4人で息を合わせていかないといけない。5年終わって、このまま少し上がってまた下がってというのは嫌なので。同じところでも全然違うところでもいいから、息を合わせてどこかに向かっていけたらいいなと。そこまでは気を緩められないと思っています」
柳川「バンドで、メンバーですからね。僕は個人プレーの人間。人のせいで負けるのも嫌だし、自分のせいでチームが負けるのも嫌なんです。だからボクシングなんですよね」
ショウ「でもバンドも同じようなところがありますよ。みんなが同じように思っていて、その4人が集まっているという」
柳川「切磋琢磨できるというのはすごく羨ましいです。バンドの中でも各々が真剣勝負で向き合っていたら、やっぱり刺激を受けるじゃないですか。たまに弱気になった時に、ユニットやチームでデザインをやってるような人を羨ましく思います。でもあれはあれで常に相手と気を張って、向き合っていかないといいものを作れない。それである程度のレベルにいける人たちはすごいんだろうなと思います」
ショウ「俺らは4人それぞれに役割分担があるんです。でも逆に俺らは、もうちょっとお互いの領域を侵略しあいながらできたらいいのかなとも思えてきました。俺がバンマスだけど、他のメンバーにももっと音楽の面で意見を言われたりしてもいいし、お互い刺激しあってもっと高め合えたらと。とにかくもっと頑張っていきたい、やり続けていきたいです」
柳川「好きなことを続けられるのがなにより嬉しいことですからね。自分が本当に第一線でどこまでいれるのかを考えると今手を抜けない。苦しいかもしれないけど、どんどん追求してやっていかないとダメだと思います。最近僕は60、70歳まで第一線でやっていきたいなと思い始めましたから。今、実際に海外でも日本でもそういう人たちがどんどん出てきていて、感性を退化させることなく、磨いて進化している。退かないぞという態度で働きたいと思ってます」
ショウ「俺も絶対続けていきたいです。最近ロッカーにもそういう先輩が増えてきていて面白い。もっと辿ると昔のジャズミュージシャンには、もう立てないけどギターだけは弾けたり、死ぬまでツアーを回ってる人もいたわけで。そういう事はすごく憧れますし、ツアー中に死ぬのもいいなと思う。そういう音楽人生でありたいなと思います」
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ご応募お待ちしております。 後日当選された方にはいただいたメールアドレス宛にNeoL編集部よりご連絡させていただきます。
OKAMOTO’S
オカモトショウ(Vo)、オカモトコウキ(G)、ハマ・オカモト(B)、オカモトレイジ(Dr)。2010年5月にアルバム『10′S』、11月に『オカモトズに夢中』、2011年9月に『欲望』を発売。2013年1月に4thアルバム『OKAMOTO’S』を発売。2014年1月15日に岸田繁(くるり)を迎えた5th アルバム『Let It V』を、8月27日にはRIP SLYME、奥田民生、黒猫チェルシー、 東京スカパラダイスオーケストラ、 ROY(THE BAWDIES)らとコラボを果たした5.5 thアルバム『VXV』を発売。5周年アニヴァーサリーツアー「OKAMOTO’S 5th Anniversary HAPPY! BIRTHDAY! PARTY! TOUR!」のファイナルでは東京・日比谷音楽野外大音楽堂を埋め尽くした。2015年2月4日、6thシングル“HEADHUNT”をリリース。同作品はアニメ「デュラララ!!×2 承」の主題歌となっており、期間生産限定盤ジャケットは完全書き下ろしイラストを使用。初の映像作品『OKAMOTO’S 5th Anniversary HAPPY! BIRTHDAY! PARTY! TOUR! FINAL@日比谷野外大音楽堂』が3月18日に発売される。また、3月にショートサーキットツアー「OKAMOTO’S 2015 SPRING LIVE CIRCUIT~ハマ☆クン24~」の開催と、4月に東京・大阪・名古屋を回るスペシャルワンマンライヴツアー「OKAMOTO’S LIVE 2015 CDVDC」を敢行予定。
柳川荒士
2003年「JOHN LAWRENCE SULLIVAN」を設立し、テーラードを軸としたメンズウエアを展開。2007年SSから2010年AWまで東京コレクションに参加。2008年、旗艦店を中目黒にオープン。2011年AWよりパリコレクションに参加。強さとエレガントさを持ち合わせた男性像を基本的コンセプトとしている。また、2010年SSシーズンよりレディースラインも展開しており、メンズテーラードの技術を駆使したシャープな印象が特徴的である。
http://www.john-lawrence-sullivan.com
撮影 中野修也/photo Shuya Nakano
文 桑原亮子/text Ryoko Kuwahara
都市で暮らす女性のためのカルチャーWebマガジン。最新ファッションや映画、音楽、 占いなど、創作を刺激する情報を発信。アーティスト連載も多数。
ウェブサイト: http://www.neol.jp/
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