表現規制が進む近未来の日本を描いた漫画『有害都市』1巻がフランスで先行発売

『POISON CITY』

昨年5月に連載が開始され、掲載誌の休刊に伴うウェブコミック誌『となりのヤングジャンプ』での公開から賛否両論の物議を醸している筒井哲也さんの漫画『有害都市』の上巻(全2巻予定)が4月17日に集英社から発売されることになりましたが、驚くべきことにこの単行本が日本での発売に先駆けてフランスで3月12日に先行発売されました。

ウェブコミックで知名度を上げてプロデビューした筒井さんの作品は日本以上にフランスで絶大な人気があり、これまでに『マンホール』や『ダズハント』、今年6月に実写映画が公開される『予告犯』などほとんどの作品がフランス語に訳されてKi-oon社から刊行されて来ました。筒井さん自身もパリ国際ブックフェアやジャパン・エキスポに何度も招待されており、発行元のKi-oon社では最新作『有害都市』(フランス語版表題『Poison City』)の刊行に当たってペーパーバックと愛蔵版ハードカバーの2種類が同時発売され、フランス版オリジナルのTシャツも作成されるなど日本のライセンサーである集英社以上に気合を入れたプロモーションを大々的に展開しています。

夕刊紙『Le Monde』では単行本の発売当日に書評を掲載し、筒井さんが『マンホール』での暴力的な描写を理由に長崎県の有害図書指定を受けたのがこの作品の執筆動機となっていることや第7話でアメリカン・コミックスの受難の歴史と現状についての描写が日本の読者の間で論争を巻き起こして修正されたことに触れながらも「その修正は作品が訴えるテーマの価値をいささかも減じるものではない」としています。

フランスでは「言論・表現の自由」は長い歴史を持った政治課題として受け止められており、今年1月に起きたシャルリー・エブド襲撃事件を機に議論が活発化しています。『有害都市』のテーマは暴力表現や性表現に対する規制の問題なのでシャルリー・エブド襲撃事件とは必ずしも共通の論点であるとは言えない面もありますが、日本に先駆けて発売された『有害都市』も「表現の自由をめぐる問題に切り込んだタイムリーな作品」として話題を席巻しているようです。

画像‥Ki-oon社の『Poison City』紹介ページ
http://www.ki-oon.com/news/200-poison-city-le-coup-de-poing-tsutsui.html

※この記事はガジェ通ウェブライターの「84oca」が執筆しました。あなたもウェブライターになって一緒に執筆しませんか?

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