阪大外語(旧大阪外大)スワヒリ語専攻有志による曽野綾子氏のコラムに対する抗議声明
今回は今泉奏さんからご寄稿いただきました。
※この記事は 2015年02月18日に書かれたものです。
阪大外語(旧大阪外大)スワヒリ語専攻有志による曽野綾子氏のコラムに対する抗議声明(HUFFPOST 今泉奏)
2月11日付の産経新聞に曽野綾子氏のコラム「労働力不足と移民」が掲載されました。コラムでは、人種別の居住区を推奨し、移民の労働力を搾取することを提言する旨が書かれていました。このコラムに対し、各方面から非難の声が寄せられましたが、曽野氏は「アパルトヘイトを称揚したことなどない」(朝日新聞2月17日朝刊)と述べました。しかしながら、曽野氏が提言した移民の労働力の利用と居住区の分離というのは、まさにアパルトヘイト期の南アフリカにおいて行われていたことです。
曽野氏および産経新聞社に対する抗議声明は、日本アフリカ学会有志、アフリカ日本協議会から出されましたが、私が所属する大阪大学外国語学部(旧大阪外国語大学)スワヒリ語専攻在学生・卒業生有志も抗議文を作成し、産経新聞社、曽野氏宛に送付しました。
私が所属するスワヒリ語専攻は1986年に創設されて以来、日本で数少ない学士レベルでアフリカ地域のことを専門に学べる機関として、アフリカに関する問題意識に富んだ多くの学生を輩出してきました。およそ30年の歴史の中で、アパルトヘイト期、アパルトヘイトの終焉、ポスト・アパルトヘイト期を同時代的に目撃してきたスワヒリ語専攻の学生にとって、アパルトヘイトは常に重要なテーマのひとつでした。
今回の抗議文は、そんなアフリカに対する強い思いを持つ学生によって作成されたものです。現時点(2月18日14:00)で、スワヒリ語専攻の在学生および卒業生を含めて100名以上の賛同を得ています。
この抗議文が一人でも多くの人に届き、私たちの思いを知っていただくことを望みます。
抗議文はpdf形式でもご覧になれます。
「『産経新聞』曽野綾子氏のコラムへの抗議文」
https://drive.google.com/file/d/0B7fmKwQgBteLWEM4ZWt3VkxIc1k/view
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『産経新聞』曽野綾子氏のコラムへの抗議文
曽野綾子様
産経新聞社常務取締役 飯塚浩彦様私たち、大阪大学外国語学部(旧大阪外国語大学)スワヒリ語専攻在学生・卒業生有志は、『産経新聞』2015年2月11日付に掲載された曽野綾子氏のコラム「労働力不足と移民」に対して強く抗議の意を示し、記事の撤回、および今なお人種差別に苦しむすべての人々への謝罪を要求します。
曽野氏は、介護の分野において移民は必要であるが、移民と「居住を共にするということは至難の業だ」と述べています。また、アパルトヘイト期の南アフリカで行われたように「居住区だけは、白人、アジア人、黒人というふうに、分けて住む方がいい、と思うようになった」とも述べています。また、2月17日付の『朝日新聞』では、アパルトヘイトの称揚を否定しておきながら、「リトル東京」への郷愁を表すコメントを出しています。
このような考えは、多文化社会を生きる私たちにとって現実的でなく、むしろ時代遅れと言わざるを得ません。たとえ「至難の業」であっても、21世紀を生きる私たちはあらゆる他者との共生を試みることが必要です。また、アパルトヘイト期の南アフリカ白人政権のように、社会的弱者の権利を阻害し、利益だけを貪ろうとする傲慢な態度は許されるはずがありません。
1986年の創設以来、アフリカ地域を専門として学ぶスワヒリ語専攻の学生にとって、アパルトヘイトは常に重要なテーマでした。私たちはアパルトヘイトについて学び、考え、議論を深め、アパルトヘイトが単なる非人道的制度でないことを知りました。
アパルトヘイト期の南アフリカにおいて、非白人の人々は白人社会に労働力を提供しつつ、経済的に搾取される立場に貶められました。このような構造の中で、非白人の人々は精神的にも肉体的にも白人社会に抑圧されました。非白人の言論の自由、移動の自由は大きく制限され、白人のみが十全たる市民の権利を享受できました。
このようなアパルトヘイトを標榜する曽野氏は、世論形成に大きな影響を与える言論者としての資質が疑われます。また、報道の一翼を担う新聞社として、これを掲載した産経新聞社の態度も批判されてしかるべきです。
そのため、私たちは曽野氏および産経新聞社に以下のことを要求します。
1. 曽野綾子氏のコラム「労働力不足と移民」を撤回すること
2. 今なお人種差別に苦しむすべての人々への謝罪を行うこと
3. 当該コラムが掲載されるに至った経緯を説明すること
4. 南アフリカの今を生きる人々に対しての見解を示すこと南アフリカ初の黒人大統領ネルソン・マンデラは「許そう、しかし、忘れまい」と述べました。モハウ・ペコ南アフリカ駐日大使から抗議文を出された以上、曽野氏と産経新聞社に向けられた疑念が取り払われることは難しいでしょう。しかしながら、冷静に非を認め謝罪が行われれば、新たな関係を南アフリカと築いていけるはずです。
日本とアフリカのよりよい未来のためにも、曽野氏と産経新聞社には真摯な対応を願います。
2015年2月18日
大阪大学外国語学部(旧大阪外国語大学)スワヒリ語専攻在学生・卒業生有志一同
執筆: この記事は今泉奏さんからご寄稿いただきました。
寄稿いただいた記事は2015年02月26日時点のものです。
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