懲戒解雇が与える人生への大きな損失
JR西日本グループ会社の契約社員が懲戒解雇に
先日、JR西日本がグループ会社の男性契約社員を懲戒解雇したとのニュースが報道されました。懲戒解雇の理由は、利用客が拾って遺失物として届け出た千円を着服したというものです。「たった千円で懲戒解雇は厳しすぎないか」と考える人がいるかもしれませんが、たとえ千円でも立派な業務上横領です。ほんの出来心が、大変な事態を招くことになりました。
懲戒解雇とは、会社が従業員の責務に帰すべき理由によって解雇することです。その理由として多いものは、長期の無断欠勤、金品の横領、業務上の不正行為、故意に業務を妨害し会社に損害を与えた、犯罪で逮捕されたなどがあります。懲戒解雇は、会社が従業員に対して下す、言わば「極刑」に当たるため、相当な理由としかるべき手続きが必要となります。
懲戒解雇は再就職活動にも影響を与える
従業員としては単に解雇されて収入が途絶えるだけではなく、再就職活動に大きなダメージを受けてしまいます。まず、履歴書に前職の退職理由を記載する場合に「一身上の都合による」と書けなくなってしまいます。経歴詐称になるためです。たとえ発覚せずに採用されたとしても、その後、何らかのルートで詐称が発覚すれば、再就職先から懲戒解雇されてしまう恐れもあります。なお、懲戒解雇である旨は退職後発行される離職票にも記載されるため、もし再就職先から提出を求められた場合は不利益となるでしょう。
また、いわゆる「業界」というものは狭い世界であり、再就職先が前職と同じ業界である場合は特に、噂が広まって再就職活動に悪影響を及ぼすことは必至です。
コンプライアンスについて社内教育の充実が求められる
このように、懲戒解雇は社会人にとっては死刑に相当する極めて厳しい処分といえます。先述のJR職員のように「ほんの出来心で…」人生を狂わせてしまわないようにしなければなりません。もし、懲戒解雇が不当だと考えるときは、泣き寝入りせず会社と話し合うことも必要です。
また、会社側も懲戒解雇が従業員の人生に与える影響をしっかり理解した上で処分を下す必要があります。本当に懲戒解雇に値する事由なのかをきっちりと検証し、本人から意見聴取する機会を設けること等も重要です。何より、懲戒解雇せざるを得ない状況を生まないために、日ごろから従業員とのコミュニケーションを密にし、コンプライアンスについての社内教育を充実させることも大切です。
(大竹 光明/社会保険労務士)
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