「ジョバー怪獣、試合に負けて勝負に勝つ!」的な珍妙特撮『フランケンシュタイン対地底怪獣』
今回のお題『フランケンシュタイン対地底怪獣(バラゴン)』(1965)は、国内外でカルト作として認知される怪獣映画。製作は『ゴジラ』の東宝と20世紀FOXで、特撮は円谷英二ら『ゴジラ』シリーズなどを手掛けた面々が務めており、そこは手抜かりのない陣容です。
ただ、その内容はプロレス風にいえば、「売れ線選手のためのスカッシュマッチ一歩手前のワンサイドゲーム」なのであります!
第二次世界大戦末期のドイツから秘密裏に広島に持ち込まれるも、原爆投下で戦後15年間、所在不明となっていた自己再生能力を持つ生体「フランケンシュタインの心臓」。その生体から生まれた野生児が20m近い巨人(フランケン)に成長し、たまたま同時期に出現した地底怪獣バラゴンと成り行き上バトルするお話。
ジャイアント馬場と同郷で友人というプロフィールで知られる(東宝特撮映画美女のひとりとしても有名な)水野久美演じる美人助手(と博士と日本人科学者)がわざわざ危ないところに出張ってワーキャーいうテンプレを盛り込みつつ、山中でのフランケンとバラゴンの対決となります。
さて期待が高まるところですが、元々「フランケンシュタイン対ゴジラ」の脚本が変遷を経て本作に転じた大人の事情も絡んでか、敵となるバラゴンはゴジラ級の強怪獣にあらず。もうとにかく弱いのです。
高島忠夫演じる日本人科学者が用意したフラッシュグレネード(本来はフランケン撃退用だったけど先に遭遇したバラゴンに連投)で視界を奪われたバラゴンさんはフランケンに奇襲を許してしまい、思わず地中に潜ってエスケープ!
まるでレッスルマニア23で、オースチンに狙われ、リング下に逃げ込んだマクマホン会長状態です(試合で会長陣営が負け、捕まれば丸坊主にされるため)。
やっと反撃に出てもジャイアントスイングの要領でブン投げられ、背中に乗られてボコスカ殴られるわで「もうやめて!」と言いたくなるような事態に。
そして空気を読まないガチなフランケン氏はグラウンドチョークからバラゴンさんの首をへし折り、勝利の雄叫び! しかし、奇しくもバラゴンさんが地中に逃げた際に出来た穴で土壌が崩れ……というオチで終幕へ(※)。
短時間で一方的に捻り潰す「スカッシュ・マッチ」とまでは行かないものの、バラゴンの見せ場の無さからいって(必殺のビームは効かないし)、売れ線ゴリ押し選手「フランケン」 vs. 万年ジョバー「バラゴン」のワンサイドゲームといって良い内容。
ついでにいえば、バラゴンの飛び技を徹底的にかわすフランケン氏は、格闘技色の強い旧UWFから新日本プロレスに出戻りした際、相手のロープワークやコーナー技を拒否した前田日明や高田延彦らU戦士たちと一致です。
しかし、そんなUスタイルなフランケンに負けながらも、図らずも逃げるために掘った穴で一矢報いたバラゴンさん。「ジョバーの誉れ」として最大の賛辞を贈りたいと思った筆者なのでした。
(文/シングウヤスアキ)
※:米国公開版ではさらに謎の巨大タコとのバトルで湖にドボンする展開に変わっていますが、いずれのバージョンでもフランケンの死については曖昧になっています。
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