サッポロ「極ZERO」問題、酒税の分かれ目は?

サッポロ「極ZERO」問題、酒税の分かれ目は?

サッポロビール、酒税115億円の返還請求へ

報道によれば、1月26日、サッポロビールは国税局に対し税金115億円の返還を求めたようです。サッポロビールの発売したビール系飲料「極ZERO(ゴクゼロ)」は、国税局から「第三のビール」にあたらない可能性があると指摘されていました。この指摘を受けてサッポロビールは、昨年7月に追加の税金115億円と延滞税1億円を納めています。

サッポロビールによれば、社内で検証した結果、「第三のビールに間違いない」という確信を得たため返還請求に踏み切ったということです。

発泡酒か第三のビールか、酒税の適用区分

さて、このニュースを読み解くには、お酒の種類と酒税との関係を理解しなければなりません。というのも、ビールか発泡酒か第三のビールかで、酒税の適用区分が異なるからです。

ビールというのは、麦芽とホップ、水を原料として用い、酵母でアルコール発酵させたアルコール分が20度未満の酒類のことをいいます。ビールには1リットルあたり222円(350ml缶で77円)の酒税がかかっています。この酒税は価格に転嫁されていますが、同じような風味を別の原料や製法で作ることで、酒税を低く抑えたのが発泡酒や第三のビールです。

発泡酒は、麦または麦芽を用いた発泡性の酒類です。ビールと異なり、副原料には何を使ってもかまいませんが、製法はビールと同じです。発泡酒の酒税は、麦芽比率50%以上のものはビールと同じですが、麦芽比率が25%以上50%未満の場合は1リットルあたり178円(350ml缶で62.4円)、25%未満の場合は1リットルあたり134円(350ml缶だと46.9円)となります。発泡酒は酒税を抑えるための商品なので、25%未満のものが発売されています。

第三のビールは、ビール風味の発泡アルコール飲料を指します。ビール、発泡酒とは別の原料、製法で作られています。糖類、ホップ、水などを原料に発酵させたものと、発泡酒にスピリッツを加えたものがあります。酒税は1リットルあたり80円(350ml缶で28円)となり、ビールと比べると酒税は格段に安くなります。

返還請求を受けた国税局の判断が注目される

「極ZERO」の税率はもともと「発泡酒にスピリッツを加えたもの」に区分されていました。サッポロビールは国税局から「極ZERO」の製造方法について照会を受けた後、昨年5月には発売を中止、7月になってから税率の高い発泡酒として再発売をしています。

国税局からの指摘があった事実をマスコミに公表したものの、報道陣からの質問に対しては「製品開発上の営業秘密については説明できない」と繰り返し主張しているため、製造方法のどこが問題となっているかは知るすべがありません。返還請求を受けた国税局の判断が注目されます。

(西谷 俊広/公認会計士)

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