『さよなら歌舞伎町』廣木監督インタビュー「前田敦子は元アイドルだけど度胸がある」
友人には自らを一流ホテルマンだと偽るしがないラブホテル店長の徹(染谷将太)と、ミュージシャンを目指す沙耶(前田敦子)は同棲中だが最近ややマンネリ気味。そんな若いカップルを中心に、新宿歌舞伎町のラブホテルに集う5組の男女の人生が交錯する1日を描いた群像劇『さよなら歌舞伎町』が公開中です。
ベテランのラブホテル清掃員、時効を待つ指名手配版、音楽プロデューサー、韓国人デリヘル嬢と彼女に入れあげる客、風俗場のスカウトマンなど登場人物それぞれの人生を描き、一つの物語にまとめています。
本作のメガホンをとったのは『ヴァイブレーター』『軽蔑』などで知られる廣木隆一監督。国内のみならず海外でも高い評価を受ける廣木監督が、都会に生きる男女をリアルに描き出します。今回は、廣木監督にインタビュー。物語についてや、前田敦子さんなどキャスト起用の理由まで、色々とお話を伺ってきました。
―本作、新宿歌舞伎町のラブホテルを舞台としていて、一つの建物の中で様々な男女のドラマが進んで行く……というストーリーで、ラブホテルで無くても壁一枚隣にはどんな人がいて、どんな人生を送っているんだろうと想像がかきたてられました。
廣木:マンションでもオフィスビルでも隣の部屋、上の部屋、下の部屋ではどんな事が起こっているか分からないけど、ラブホテルって特に特殊な空間ですよね。恋人同士はもちろん、その場で初めて会ってその場で別れる場合があるから……。
―確かに、かなり独特な世界ですよね。今回映画を作るにあたって改めて取材をしたりしたのでしょうか?
廣木:僕は昔ピンク映画を何本も作っていて、撮影にラブホテルを利用した事がありました。でもその時と比べると今の新宿ってアングラ感が少ないというか、外国の観光客の人も多くて、食事や買い物を楽しむ大きな街って感じで、昔に比べて明るいイメージというかね。それで、改めて夜の新宿を歩いてみたんだけど、新宿から大久保にむかっていくと飲み屋、客引きしている人、ゴミゴミ感の中にパワーを感じて。今回、韓国人デリヘル嬢のエピソードを入れたのも歌舞伎町から大久保の描写を入れたかったという理由です。
―韓国人デリヘル嬢役のイ・ウンウさんはキム・ギドク監督の『メビウス』で恐ろしい役を演じられていましたよね。本作、全くイメージが違うので驚きました。
廣木:『メビウス』ですごい顔していますもんね(笑)。この映画では最初は役柄のイメージがつかめなかった様なので、現役のデリヘル嬢の方にお話を聞かせてもらって役作りをしてもらいました。旦那と自分の生活の為にデリヘルで働いて、という健気な感じがしてさすがでした。
―前田敦子さんもミュージシャンを目指すあまりにプロデューサーを関係を持ってしまうという、かなり刺激的な役柄でした。
廣木:沙耶はミュージシャンの卵なので歌える人が良いなと思っていて、あとは23歳という年齢も等身大で演じられると思った。前田さんはAKB48のセンターとしてトップアイドルだったわけだけど、度胸もすわっているし、堂々と演じてくれましたよ。先日「前田敦子がラブシーンを拒否して、廣木監督が激怒」といった内容のネットゴシップを読んだんだけど、事実無根ですから。僕、怒ってないし、そんな話すら無かったですよ(笑)。
―全くのデマ! 酷いですね。私も映画を拝見して、可愛いんだけどどこか何を考えているか分からない様な、前田敦子さんにしか出せない独特の空気感があって素晴らしかったです。
廣木:前田さんって、女子に人気ありますよね。この作品で舞台挨拶とか取材とかに応じていると、女性から「前田敦子さんが良かったです」と言われる事が多いので特に感じます。
―染谷さんも、周囲には一流ホテルで働いていると嘘をついて、ラブホテルでダラダラ働いているという、独特の若者感が素晴らしかったです。
廣木:染谷君は、やっぱり今一番の人でしょう。映画なのでもちろん色々な出来事・事件は起こるけど、あくまでもどこにでもいる若者、カップルの話を描いているつもりなので、自然な空気で演じてもらう必要があって、染谷君は見事にやってくれました。
この映画は他にも、南果歩さん、大森南朋さん、村上淳さんと、素晴らしい俳優が出演してくれました。それぞれが役になりきって「本当にこういう人なんだな」と錯覚してしまうほどだと思う。舞台は歌舞伎町のラブホテルとちょっとダークなイメージを持つ人もいるかもしれないけど、男と女の心と体の触れ合い・ぬくもりを描いているので、どのキャラクターかに共感したり、注目して楽しんでいただきたいですね。
―今日はありがとうございました!
『さよなら歌舞伎町』
http://www.sayonara-kabukicho.com/
(C)2014「さよなら歌舞伎町」製作委員会
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