情報漏洩に不安も「マイナンバー制度」のメリットは
来年1月より施行される「マイナンバー制度」とは?
今年の10月から各個人へ「番号」の通知が始まり、来年1月より施行される「マイナンバー制度」。「国民、一人一人に固有の番号が振り分けられるらしいけど、一体何が変わるの?」「国はこの制度の導入で『便利』になるってアピールしているけど、何か怪しいことに利用されたり、個人情報が漏れたりするんじゃないの?」と、疑問や不安を持つ人も多いかもしれません。
「マイナンバー制度」とは、正式名称を「社会保障・税番号制度」といい、住民票を有するすべての人に、固有の番号を振り分け、社会保障や税、災害対策といった複数の機関に存在する個人の情報を結びつけ、各機関間での情報連携を可能にする制度です。もっと簡単に言えば、各個人の所得や、年金・医療・社会保障などの行政サービスの受給実態など、現在、各機関ごとに管理しているものが、機関間で「透明」になるということです。
行政の窓口業務が大幅に簡素化。給付金の受給漏れ減少も
では、このマイナンバー制度の導入により、どのようなメリットがあるのでしょうか。まず、年金や各種手当の申請、確定申告などの際に必要な住民票や所得証明書などの添付書類が不要になり、行政の窓口業務が大幅に簡素化されます。
また、給付金などの行政サービスに関して、要件を満たしているにもかかわらず、現在であれば住民自ら情報を仕入れて積極的に問い合わせないと受給機会を逸してしまうこともありますが、マイナンバー制の導入により、パソコンなどで個人のポータルサイトを確認することで直接プッシュ型で通知されるため、受給漏れが減少するでしょう。あと先日、マイナンバーを記載した個人番号カードが、健康保険証の代わりに使えることも決定しました。
さらに、マイナンバー制度により個人の所得などがクリアになり、不正受給などの防止につながるため、社会保障や税の給付と負担の公正化が図られるでしょう。災害時などに真に手を差し伸べるべき人たちへの積極的な支援も可能となります。
個人の預金口座にも適用する方針。情報漏洩に対する不安は高まる
しかし、当然、新しい制度の導入においては、メリットばかりでなくデメリットもあります。最も懸念されるのは、やはり情報の漏洩でしょう。多くの個人情報が一つの番号のもとに管理されますので、その番号が漏れてしまうと、不正に利用されてしまう恐れがあります。
また、任意ではありますが、政府はマイナンバーを個人の預金口座などにも適用する方針を打ち出しており、情報漏洩に対する不安は高まるばかりです。
企業は徹底した「安全管理措置」が求められる
企業にとっても、マイナンバー制の導入に伴い、頭の痛い問題が数多く生じます。一つは、従業員全員と、その扶養家族の番号をすべて管理しなければならないため、人事総務部門の業務量が増大します。また、個人情報流出問題に対処するため徹底した「安全管理措置」が必要となります。
また、社会保険の加入義務があるにもかかわらず未加入のままの事業所や、給与支払報告書を市町村に提出せずに住民税を脱税するといった不正を行っている事業所は、マイナンバー制度の導入により、すべて行政に筒抜けとなりますので、大きな代償を払わなければならなくなるでしょう。本当はいけないことですが、特に中小企業ではこのような問題を犯しているところは少なくないのではないでしょうか。個人にとっても、企業にとっても、マイナンバー制度の導入は、社会保険や税などのコンプライアンスを見直す機会となりそうです。
(吉田 崇/社会保険労務士)
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