「自爆営業」を強要された…どう対処すべき?
日本郵政の「自爆営業」、いまだに根絶を実現できず
各地の郵便局員が「年賀はがき」などの販売ノルマを課され、それを達成できない分を自腹で購入する、いわゆる「自爆営業」について、日本郵政が根絶を目指すとしながら、いまだに実現できていない実態が報道されていました。
この、いわゆる「自爆営業」の横行は、日本郵政に限ったこととは思われませんが、会社が従業員にこれを強要することには、法律上どのような問題があるのでしょうか。
「自爆営業」の強要は明らかに違法
まず、当然のことですが、会社が堂々と規則を設けて、販売ノルマを達成できない従業員に商品の自腹購入を強制するようなことは、違約金の定めや、損害賠償額を予定する契約の禁止(労働基準法第16条)に反し、許されません。
また、会社が、販売ノルマを達成できない従業員に対し、自腹での購入をしないことを直接の理由として、解雇や雇止めをすること、また、賃金その他の労働条件について、不利益な取り扱いをすることも、当然許されません。これは堂々と会社の規則で設けられていなくとも、販売ノルマを達成できない従業員にペナルティを課すなど、諸々の事情から事実上、強要があったとみなされる場合も同様です。
すなわち、理屈の上では「自爆営業」の強要は明らかに違法です。しかし、中には違法であることを知りながら、従業員を「自爆営業」に追い込んでいく会社もないとは限りません。
購入行為について公序良俗に反し、無効を主張できる
そこで、実際に「自爆営業」を強要され商品を自腹で購入してしまった場合、従業員はどう対処したらよいのでしょうか。
まず、上記のように購入行為自体が労働基準法に反するといえるので、購入行為(会社と従業員との売買契約です)について公序良俗(民法第90条)に反し、無効を主張できます。また、会社による事実上の強要を立証することで、強迫による契約の取消を主張することができます。この場合、当初から遡って購入行為はなかったことになるため、購入したことにされた商品分の代金の返還を会社に求めることができます。
商品の代金のみならず、会社に対し損害賠償請求することも可能
また、事実上の強要(いわゆる「パワハラ」です)があったということで、商品の代金のみならず慰謝料について、会社に対し損害賠償請求することも考えられます。購入させられた商品の分量が不相当に多いようなケースでは、それ自体で会社による黙示的な強制があったとして不法行為を立証できる場合がほとんどだと思います。
現実の訴訟において、このような損害賠償請求がなされた場合には、会社側として「一部の管理職が独断でそのような強要をしたかもしれないが、会社としては一切関知していない」という反論も想定されます。しかし、会社には従業員の職場環境について管理責任がありますので、そのような反論は到底成り立たないでしょう。
(名畑 淳/弁護士)
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