「相続」大増税時代へ 生命保険で対策を
相続税改正で基礎控除額引き下げ、課税対象者は全国平均で6%に
いよいよ今年(平成27年)から相続税は大増税時代を迎えます。相続税改正の目玉は基礎控除額の引き下げです。今まで「5,000万円+1,000万円×相続人の数」あった基礎控除が「3,000万円+600万円×相続人の数」となり、課税対象者は全国平均で4%から6%に増えるといわれています。
しかし、これはあくまで全国平均で、首都圏内では30%近くが課税対象者になるという試算もあります。
納税資金は極力、生命保険金で確保。受取人は子どもに
相続税の増税にともない、最近、相続税対策への関心が急激に高まっています。相続税対策の基本は、まず非課税制度を最大限活用することです。非課税制度の代表例は生命保険金。現行法(平成27年度現在)では500万円×相続人の数が非課税となっています。例えば、相続人が4人の場合、2,000万円(500万円×4人)の死亡保険金を相続人が受け取ったとしても、その2,000万円は相続税計算上、非課税となります。
そのため、納税資金を100%課税される現預金で遺すのと、非課税の生命保険金で遺すのとでは相続税の額は大きく変わってきます。納税資金は極力、生命保険金で確保するようにしましょう。その際、生命保険金の受取人は配偶者より子どもにしておく方が良いでしょう。なぜなら、配偶者は相続税が基本的に免税され、ほとんどの場合、相続税が発生しないからです。ですから、生命保険金の受取人は、相続税の発生する子どもたちにしておくことをお勧めします。
また、生命保険は手続き面でもメリットがあります。被相続人の預金は、相続が発生すると相続人全員の合意が整うまで凍結されますが、生命保険金は受取人固有の財産となるため、簡易な手続きで、通常相続後2~3週間以内に相続人の口座に直接入金されます。
相続税の節税対策だけではなく、争族対策でも大きな効力を発揮
生命保険金の活用法は他にもあります。それは遺留分対策です。遺留分とは、遺言などにより特定の相続人(以下「A」)にあまりにも偏った相続財産が相続された場合、他の相続人がAに対して請求できる最低限の相続権です。
例えば相続財産が現金2,000万円と不動産1億円のみで、すべて相続人Aに相続させる遺言が出てきたとすると、A以外の相続人はAに対し、遺留分を請求することができます。そこで、現金2,000万円を生命保険金に振り替えておけば、遺留分の請求対象となる財産は不動産の1億円のみとなります。生命保険金は受取人固有の財産として扱われるため、遺留分の請求から外されるのです。その上で、遺留分の請求にその生命保険金を充てれば良いのです。
このように生命保険金は相続税の節税対策としてだけではなく、手続き面、争族対策でも大きな効力を発揮します。保険は嫌いという話をよく耳にしますが、相続税が好きと話は聞いたことがありません。遺される相続人のためにも生命保険の上手な活用を考えてみましょう。
(松岡 敏行/税理士)
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