正社員化へ都が独自の支援策、その効果はいかに?
正社員化を促すため約25億円を計上。独自の対策に乗り出す
東京都では、2015年度予算案に非正規社員の正社員化を促すため約25億円を計上し、独自の対策に乗り出すと報じられました。内容としては、非正規から正規に切り替えた企業に国が最大50万円を助成する際、都が同額を上乗せするというものです。さらに35歳未満の若者を正社員に採用した中小企業には、15万円の奨励金を出す制度も創設予定。これにより年間5千人、3年間で1万5千人の正社員化を目指します。
舛添東京都知事は「社会を安定させるには正規の職が必要。税金を投じても何倍にもなって戻ってくる哲学で臨む」と述べています。
正社員と同じ数だけ非正規も増え総数としてはあまり変わらない?
さて、今回の助成金で正社員化は進むでしょうか?私は、正社員になる人の数はある程度目標達成できても、同じ数だけ非正規になる人も増え、総数としてはあまり変わらないと予想しています。なぜなら、現在、非正規と呼ばれる人を利用している企業の仕事は、非正規が最も使いやすいという理由で利用しているからです。
つまり、企業からすると、やむを得ず非正規を採用しているのではなく、メリットがあるから非正規を利用しているのです。例えば、賃金が相対的に安く済む、仕事の量によって雇用を調整しやすい、などです。いったん正規雇用化してしまって、長期的に雇用せざるを得ないことをデメリットと感じる経営者も多いと考えられます。たとえ国から50万円、都から50万円もらえたとしても、上記メリットを上回ると判断する企業は限られるのではないでしょうか。
ただし、これまでなかなか人材が集まらない、今後は正社員を長期的に教育し発展させたいと考えている経営者も多く存在します。そのような企業には、今回の施策は歓迎されるでしょう。
都は、手続きの簡素化あるいは一元化の検討を!
今回の制度で、社会保険労務士としてお願いしたいのが、手続きの簡素化あるいは一元化です。国の制度は主に雇用保険を財源として、社会保険労務士が手続きを代わりに行うことができます。しかしながら、東京都の助成金は、原則、事業主が手続き書類を書かなくてはいけないケースが多くあります。例えば、今年度の東京都のワークライフバランス推進助成金では、提出は社会保険労務士ではなく会社が行わなくてはなりません。
そのようになってしまうと、「せっかくの制度だけれども代行を頼める方だけ申請しよう」「何か面倒くさそうだから、やめておこう」となりかねません。また、社会保険労務士の側からも、国の雇用保険の助成金だけを事業主に勧め、都の助成金は提案しないなど、もったいない現象が起きることも考えられます。
よって、都には申請手続きの簡素化(例えば雇用保険の申請用紙の写しを都の助成金申請に代えるなど)を検討してもらいたいと考えています。日本の終身雇用制度を元にした、長期的な人材育成は日本の強みの根本です。安定した雇用につながる施策が機能することを期待しています。
(植田 健太/臨床心理士・社会保険労務士)
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