一篇の詩に込められた、奥深い世界の読み解き方とは?
漢詩といわれて何を思い浮かべるでしょうか。中学や高校で習った漢詩の一節を思い出す方も多いかもしれません。川合康三さんによる書籍『漢詩のレッスン』で取りあげられるのは、中国唐代の絶句。絶句とは、「一首が四句から成る詩で、中国の詩のなかで一番短い詩型」のことですが、同書では、絶句に触れるうえで必要な韻や読み方の説明にはじまり、実際に15の絶句をわかりやすく読み解いていきます。
絶句を鑑賞していくなかでの、興味深い点のひとつとして、中国と日本とのものの見方・感じ方の違いにも触れられます。
たとえば、花について。花といったとき、日本では桜に象徴されるように、その散り際にもの悲しさを覚え多くの詩に謳われてきましたが、中国では盛んに咲き誇っている様が好まれるのだそうです。ここから日本と中国の抒情の性質の違いを見てとることができるのだと川合さんはいいます。
「中国では生命力を存分に発揮した勢い、力強さが捉えられる。それに対して日本の花は華やかに咲いていても、やがて訪れるであろう死を予感させる、そんな違いがあります」
あるいは月について。日本と中国では月に対する捉え方が異なり、日本では月齢によって姿を変える月を、それぞれ細かく分節し愛でるのに対し、中国では満月が好まれるのだそうです。
「中国で『月』といったら、ほぼいつも満月、もしくは満月に近いまんまるい月を指します。円いことを『団円』といいますが、中国では『団円』がとても好まれます。夫婦の仲、家族の仲、そうした複数の人の集まりが、円満で調和がとれていることが理想だからです」
そのため、中国では中秋の節句には、満月の月の形を彷彿とさせる月餅を家族で集まって食べ、一族の円満を祝うのが習慣となっているのだそうです。
さらに同書では、「柳」は別れの場面に、「楓」は江南や蘇州といった南方への旅に結びつくということ、太陽と黄河というモチーフは移りゆく時間をあらわしているということ……といった漢詩を読むうえで知っておきたい事柄も、具体例と共にわかりやすく解説されていきます。学生はもちろんのこと、漢詩から遠ざかっていた大人の方にも、その魅力を再発見できる一冊といえます。
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