訪日外国人過去最高、五輪に向けた日本の課題

訪日外国人過去最高、五輪に向けた日本の課題

日本を訪れる外国人の数は、過去最高のペースを記録

日本を訪れる外国人の数が、過去最高のペースで伸びています。今年10月までの訪日外国人数は、前年同期比27%増の約1101万人。免税対象品の拡大や、東南アジア諸国向けのビザ発給要件の緩和など、政府が実施している外国人観光客誘致策が功を奏しているようです。

政府が掲げる目標は、東京五輪が開かれる2020年に、年間2000万人の訪日外国人を誘致するというもの。その実現に向け、新たなインバウンド施策を矢継ぎ早に打ち出しています。これから東京五輪開催までの間、日本を訪れる外国人の数が着実に増えていくのは間違いありません。

日本の「おもてなし」が外国人には上手く伝わらない可能性も

ただ、日本人は同質性が高く、異文化と共存した経験の少ない民族です。このような外部環境の変化に適応していくには、ある程度の時間が必要になるでしょう。当面は、訪日外国人の受け入れ態勢の未整備から生じる、さまざまな軋轢や問題が顕在化してくるはずです。

中でも、外国人客と直接応対するサービス業は、これまで日本人だけを相手にしてきた企業が多く、とりわけその軋轢は大きいと予想されます。なぜなら、日本の「おもてなし」は、使用言語と価値観を共有する者同士の間で醸成された文化であり、外国人にはうまく伝わらなかったり、フィットしなかったりするケースがあるからです。

外国人客を適切にもてなすことができる人材の育成が急務

残念ながら、現在は外国人を応対するのに十分な語学力を持った「おもてなし人材」は少数にとどまります。「おもてなし」の基本は、相手の期待や願望を「察する」ことにありますが、そもそも互いに言葉が通じなければ、相手のニーズを的確に汲み取ることは難しいはずです。現状、サービス業の外国人客受け入れ態勢が、とりわけ貧弱であるといわざるをえません。

このような状況を早く改善するために、外国人客を適切にもてなすことができる人材の育成は急務です。例えば、外国人客向けのサービスに関する教育プログラムや、資格認定制度の創設によって、国を挙げてグローバルな対応ができる「おもてなし人材」を早急に養成していく必要があります。

日本人であれば環境の変化にも迅速かつ柔軟に適応できる

もっとも、私は外国人客に対するサービスの内容自体については、必ずしも相手に合わせる必要はないと考えています。イスラム教徒のハラール認証のような宗教的戒律を除き、日本式サービスを相手の文化や慣習に合わせて変容させるのは間違いです。むしろ、外国人客には日本人客以上に手厚い日本式サービスを提供すべきだと思います。彼らは、日本でしか味わえない「おもてなし」を期待しているのであり、彼らのサービスに関する経験則やイマジネーションを超えることが重要なのです。

また、日本人は変化への対応に高い能力を発揮する、極めて順応性の高い民族です。これまでも、政治、経済、法律など、あらゆる分野の制度変更に対し、概ね短期間で対応してきました。そのため、異文化との共存という、これまでほとんど経験したことのない環境の変化にも、迅速かつ柔軟に適応していくはずだと確信しています。

(千葉 祐大/グローバル人材コンサルタント)

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