加熱する「内定者囲い込み合戦」早期退職の温床に?
高級レストラン招待やiPad支給、内定者の囲い込み合戦が加熱
バブル時代を思い出させるような内定者の囲い込み合戦が加熱しています。「少しやり過ぎではないか」と感じている関係者も多いようですが、企業側の人事採用担当者すれば、内定を辞退する学生が出ると責任を問われるため必死になるのも理解はできます。
驚くのは、その囲い込みの内容です。高級レストラン招待、テーマパークでの懇親会、旅行、iPad支給など、とても豪華なものです。内定者をいかに囲い込めるかということにこだわり、各社が差別化に力をいれています。
また、内定を出した学生の親に意思確認を入れるという「オヤカク」も一部の企業が実施しているようです。外堀から埋めていくという会社側の巧妙な意図があると思われますが、親にまで連絡が来るのは、あまり気分が良くない学生もいるでしょう。逆に信頼関係を崩すことにならないようにしなければなりません。
内定者時代と入社後の大きすぎるギャップに悩む若者が増加
ある中小企業の経営者は、内定者懇親会として何度も高級レストランで豪華な食事をご馳走したにもかかわらず、結局、他の会社に行くということで内定辞退されてかなり落ち込んでいました。学生の方もしたたかなもので、第一希望の会社や大手企業から内定が出れば躊躇することもなく、内定を辞退してしまうわけです。「さんざん接待したのにどうして裏切るのだろうか?」などと思っているのは会社側だけ、ということになります。
学生売り手市場の就活現場では、内定者の囲い込みは、ある程度は必要かと思いますが、中堅・中小企業が背伸びをしてお金を使っても限界があります。また、仮に入社してもらっても、今までたくさんもてなされて接待を受けていた新卒社員が、実際に働き始めて2~3か月くらい過ぎると、ギャップがあまりにも大きすぎて、結果的に早期退職してしまうことも少なくありません。
地道に「内定ブルー」対策をしてあげることも必要
内定をもらっていても「本当にこの会社に入社して良いのか」と思い悩む学生も多くいます。いわゆる「内定ブルー」という状態です。会社側は、できるだけ接触回数を増やし、自社の良いイメージを与えようとして囲い込みをしているにもかかわらず、追いかけすぎてその必死さが裏目に出て、「何かあるのでは」と疑われてしまう可能性もあります。
採用担当者としては、採用予定人数の内定者を確保して入社させることが目的ではありますが、もっと大事なことは、その入社した新卒社員が早期に離職しないようにすることです。
内定を出した人に本気で向き合うことで「内定ブルー」に陥るのを予防し、今後の不安を解消し、質問などにも丁寧に答えていくことが必要です。さらにSNSやネット風評対策など、就活生の視点で最も気になる部分の対応に力を入れることも忘れないようにしましょう。
(庄司 英尚/社会保険労務士)
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