「自分に自信を持て!」はデメリットのほうが大きい

jishin

言うまでもなく、自己啓発の世界でもっともメジャーなテーマが「自信」であります。とにかく「自信をつける方法」みたいな本は山ほどありまして、その内容といえば、猪木ばりに「自信があれば何でもできる!」といったものが大半。

が、わたしは、この手の話にはかなりの疑いを持っております。というのも、ここ10年ぐらいの研究を見ると、自信があっても能力は高くならないし、人生も上手くいかないって論文のほうが多いんですよね。

一番有名なのは『WILLPOWER 意志力の科学』のロイ・バウマイスターによる2003年の論文(英文)で、自信の有無は能力の高さや成功とはまったく関連がなかったと断定しております。ポイントとしては、

「自信が高くても、別に仕事の能力は高くならなかった」
「自信が高い人は、長期的には嫌われやすかった」
「自信が高くても、リーダーシップが高いわけではなかった」

といった感じ。ただし、自信が高い人は自分のことを成功者だと勘違いしやすいので、自信がない人よりは幸福感が高いのがメリットらしい。ボロクソですね(笑)。

さらには、2011年のカリフォルニア大の調査(英文)でも、自信が高い人ほど「お前の物はオレの物。オレの物もオレの物」というジャイアニズムの持ち主が多く、攻撃的で差別的な傾向が高かったとか。自信の高さがナルシシズムに結びつくのが原因らしい。

にも関わらず、あいかわらず「自信=成功」のような図式が消えない理由に関しては、バイマウスターいわく、

「自信の高さがもてはやされるのには、いくつかの複雑な原因がある。わたしたちは客観的な成果を重視するが、自信を持っている人の多くは、自分の成功や幸福を大げさに言いふらしがちだからだ。また、自信が高い人のなかには、自己弁護ばかりするうぬぼれの強いナルシストが多いのも原因だ」(ロイ・バウマイスター氏)

とのこと。同時に、成功者に自信家が多いのは、あくまで成功して自信がついたからで、決して自信があったから成功したわけではないとも強調しております。原因と結果の方向が違うわけですね。うーん、納得。

同じように、ポジティブ心理学の大御所マーチン・セリグマンも、50年代から鬱病が増えたのは、「自信があるのはいいことだ!」と教えこむ教育や文化のせいではないかと指摘(英文)しております。自信の高さと現実の能力が食い違っちゃって、鬱状態に入りやすくなるのが原因らしい。こうして見ると、自信の高さは長期的な幸福感も損なう可能性が大きそうっすね。

そんなわけで、「自信を持て!」ってアドバイスには、わたしは超懐疑的。最新の研究では、自信よりも感謝の心や自分を許す能力を持つほうが重要になりつつありますが、それはまた別の話。

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