JINS、社員年収10%アップの狙い
JINS、1000人を超える正社員全員を対象に年収を引き上げ
格安メガネの専門店「JINS」を運営する株式会社ジェイアイエヌは、11月から店舗で働く正社員の年収を平均で10.2%引き上げると発表しました。1000人を超える正社員全員が今回の対象となり、新卒社員についても初任給を20万円から23万5000円に引き上げるとのことです。
昨年の8月には政府の賃上げ要請を受けて平均年収の6%にあたる賞与を追加で支給しており、立て続けの賃上げ施策となりました。人件費の高騰は経営を圧迫してしまうリスクがありますが、今回の施策にはどのような狙いがあるのでしょうか。
接客力の低下が目立ち、教育できる人材の不足がネックに
本年9月5日にジェイアイエヌが発表した「月次売上状況」では、昨年の9月からの1年間における既存店売上高の平均値が-21%を超えており、大きく落ち込んでいることがわかります。昨年「JINS CLASSIC」シリーズが大ヒットし、売上高が飛躍的に伸びたため、その反動もあると思われますが、その他の原因として考えられるのが各店舗の接客サービス力の低下です。
会社の急成長により、店舗数はここ3年間で2倍以上の270店にまで増加しましたが、一方、スタッフの教育が追いつかずに接客力の低下が目立ち始めていたとの声も上がっています。現場で時間をかけて教育を行うことができれば、段階を経て新人スタッフの成長を促すことができますが、教育できる人材の不足がネックになっているのが現状です。
また、新入社員を多く採用できても、中堅クラスの人材が辞めてしまうと、思うように会社の出店計画が進まず、企業の成長もストップしてしまう恐れがあります。企業の成長期には、設備投資と人材の確保が必要不可欠ですが、店を任せられる人材や、スタッフの教育を任せられる人材を集めることは容易ではなく、このような人材のモチベーションを維持し、長く勤めてもらえるかどうかがが課題となっています。
人材確保競争が激しくなる中で、成長を続けていくことができるか
ジェイアイエヌは給与引き上げの実施について、若い社員が多いため政府の掲げる「子育て世代の支援」に賛同したことを理由としています。また、今後半年間で300名程度の準社員を新たに雇用することも計画しており、接客力の向上のほか、職場環境の改善や新たな雇用の創出についても狙っています。そして、これらと併せて、従業員のモチベーションを高めることにより、人材の定着を促進し、離職率低下への効果についても期待していると思われます。
ここ数年、大手企業を中心に人材の抱え込みの時代に入ってきており、今後ますます人材の確保が激しくなることが予想されます。そのような状況下でさらに成長を続けていくことができれば、今回の給与引き上げ施策による効果が明確に見えてくるのではないでしょうか。
(田中 靖浩/社会保険労務士)
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