バッファロー・ドーター『コニャクション』インタビュー 前編
バッファロー・ドーター、4年ぶりとなるアルバムのタイトルは『コニャクション』。この脱力感を誘うタイトルになったのには理由がある。まずイギリスの現代アーティストであるピーター・マクドナルドの展覧会がきっかけとなり、音楽とアートのコラボレーションによって生まれたこと。さらにアルバムと、アルバムにバンドルされているリミックス盤には坂本慎太郎、砂原良徳、カヒミ・カリィ、チボ・マット、ショーン・レノン、しんなりちゃんほか、多彩な顔ぶれが参加するなど、音と人のつながりによって生まれたことから、そう名付けられた。これまで以上に開かれ、そしてスリリングなアルバムについて、メンバー3人が語ってくれた。
──2010年発表の前作『The Weapons of Math Destruction』は“物理”と“ヒップホップ”がキーワードとなってサウンドが導かれていきましたが、今回は“ブロック・パーティ”がキーワードとなっています。「Bring Back 80′s」という曲もありますし、その頃の雰囲気がひとつのサウンドイメージを形成していったのでしょうか?
シュガー吉永「結果的にそうなったけれど、ピーター(・マクドナルド)さんが行った金沢21世紀美術館の展覧会に呼ばれて、ディスコというテーマで演奏してほしいと頼まれたことがきっかけで。イメージはそこからですね」
大野由美子「それが2011年で、ディスコがテーマの空間で演奏する時に向けて、ちょっと踊れるような曲を作っていたんですよ。作っている段階からおもしろかったし、演奏した時に様々なお客さんがいらしてくたのも楽しくて、その雰囲気をキープしたかったからそのまますぐに録音して、CDでもダウンロードでもいいから出せたらいいなと思っていたんだけれど、色々と手を加えて変化していったから、思いのほか時間がかかっちゃいましたね(笑)」
──どんな空間だったんですか?
シュガー吉永「天井が高く吹き抜けになっていて、ニュー・アルバムのアートワークが壁に直接描かれていていて。そこでワークショップをやったりとか色んなイヴェントが行われていたんですが、私たちはライヴをやってほしいとピーターさんから頼まれた。何でもボランティアの人たちとペイントしながらバッファロー・ドーターを聴いていたんですって。それで生の音がこの空間で流れたらいいのにということで依頼があったんです。どういうテーマで、どういうライヴをやればいいの? ってピーターさんに聞いたら、彼はディスコがテーマの空間だと話してくれたんですけれど、ディスコと言っても色々あるから、どういうディスコをイメージしているの? と聞いたんですね。そうしたら彼がイメージしていたのは地域で行われているようなブロック・パーティで、子供達がキャンディー食べたり、バルーンが上がっていたりとか、彼が小さい頃に経験した、音楽を聴きながらみんなが楽しんでいる感じを再現したいと教えてくれて。なるほど、ということで私たちなりの解釈で演奏したわけです」
大野由美子「日本だと町内会のお祭りみたいな感じなんでしょうけれど(笑)、アメリカの街角なんかで体験したことがあるから、そういう光景を思い出しながら演奏しましたね。来ている人たちと一緒に食べたり飲んだりして楽しめればいいかなって」
ムーグ山本「ぼくは実際にブロック・パーティーを体験したことがないので、あまりよくわからなかったんですけど、金沢21世紀美術館で演奏したときの雰囲気が近いんだろうなって思いましたね。実際に地元の方たちも観に来ていて、クラブにいるようなお客さんではなかったので、ピーターさんが子どもの頃に体験したブロック・パーティーもそういうことなんだろうなと。子どもが間違えて入っちゃったディスコみたいな。そういうイメージだったかな。アートワークもそういう風に見えたので」
──そこで用意した楽曲をアルバムに入れるとなった時に変化していったとのことですが、どのような変化があったのでしょうか?
シュガー吉永「すぐに録音はしたんですけれど、アルバムに入れるにはちょっとピンとこなかったんですよね。そのあとに仕上げるのに時間がかかって。」
──では、昨年発表の20周年記念ベスト『ReDiscoVer. Best, Re-recordings and Remixes of Buffalo Daughter』から何か再発見があって新作にもたらされたことなどはありますか?
シュガー吉永「権利の関係で過去の音源が使えないとわかったので再録音するはめになって、なら意地でも同じ音に録り直してやると怒ったんですよ。そのために過去の作品をエンジニアリングを含めて思い出しながら再現しようとしたんですけれど、さすがにまったく同じだと買ってもらう方たちにも悪いのでゲストに参加してもらったりしました。プロセスはおもしろかったですけどね、でも今でも腹が立つ(笑)」
──バッファロー・ドーターは常々、自分たちの状況や気持ちがそのまま音楽に乗るとおっしゃっていますが、ベストでは怒りだったかもしれませんが、今回のアルバムはどんな状況や気持ちだったんでしょうか?
大野由美子「ベストの時のようにあからさまに悔しいというような怒りではなく、震災後の色々なことに対するいらだちや思いは自然と詰まってるかな」
シュガー吉永「9.11や2000年問題とか、その都度何かしらの影響を受けていると思いますね。震災後、音楽を作る気持ちになれないというミュージシャンが多かったし、私たちも一時期はそうなったけれど、ピーターさんとのコラボは2011年9月でその時点では音楽を作ろうという気持ちに戻っていた。その時にディスコというテーマを与えられて、前作が思いっきりロックでハードなアルバムだったので、だいぶ気分が違うなとは思いましたけど、その震災後の雰囲気が残る中でブロック・パーティー、しかも金沢21世紀美術館という環境で音楽ができるのがいいなと思ったんです。世界に名だたるモダンアートミュージアムで、しかも音響設備も何もないところで音響機材を持ち込むところから始めて。そのゼロから感が自分たちにとって新しくて良かった。やったことがないところで、何か新しいことをやるんだというワクワク感。ポジティヴなエネルギーが出てきたんですよね。その新しい経験がアルバムに結びついた。もちろんその後の時間の経過で音楽的な変化はしてきたんですけど」
(後編へ続く)
撮影 中野修也/photo Shuya Nakano
文 油納将志/text Masashi Yuno
バッファロー・ドーター
『Konjac-tion』
発売中
http://www.amazon.co.jp/Konjac-tion-Buffalo-Daughter/dp/B00KKS0IIQ/ref=ntt_mus_ep_dpi_1
https://itunes.apple.com/jp/album/konjac-tion/id896996951
Buffalo Daughter
New Album『Konjac-tion』release tour – We are all Konjacted –
11/6 (thu) 大阪 UMEDA SHANGRI-LA
11/7 (fri) 東京 SHIBUYA WWW
12/20 (sat)福岡 FUKUOKA BEAT STATION
チケット発売中
詳細:http://www.buffalodaughter.com/
YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=Geof0CM8z18
バッファロー・ドーター
シュガー吉永 (g, vo, tb-303, tr-606) 大野由美子 (b, vo, electronics) 山本ムーグ (turntable,vo)
1993年結成。1996年にビースティ・ボーイズが主催するレーベルGrand Royalと契約。同年1stアルバム『Captain Vapour Athletes』を発表。1998年に2ndアルバム『New Rock』、2001年『I』を発売した後、2003年『Pshychic』、2006年『Euphorica』は共にV2 Recordsよりワールドワイド・ディールで発売。2006年には、雑誌『ニューズウィーク日本版』の”世界が尊敬する日本人100人”に選ばれるなど、その動向は国内外問わず注目を集めている。2010年夏、自らのレーベル”Buffalo Ranch”を設立し、『The Weapons Of Math Destruction』を発表。
2013年、初のベスト盤『ReDiscoVer. Best, Re-recordings and Remixes of Buffallo Daughter』を発表。このアルバムは過去の音源のみならず、新録、カバー、ライブ音源、リミックスを収録し、新しいベストの形を提示。2014年7月に7枚目となるアルバム『Konjac-tion』をリリース。
都市で暮らす女性のためのカルチャーWebマガジン。最新ファッションや映画、音楽、 占いなど、創作を刺激する情報を発信。アーティスト連載も多数。
ウェブサイト: http://www.neol.jp/
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