サブカルチャーとは一体何なのか?
8月1日から10月3日まで、全10回に渡りNHK Eテレにて放送され、好評を博した「ニッポン戦後サブカルチャー史」。
番組を見逃してしまったという方、もう一度観たいという方、そもそもサブカルチャーとは何なのかという疑問を持つ方など、すべての方に朗報となる一冊が刊行されました。
番組の講師であり、本書『NHKニッポン戦後サブカルチャー史』の著者である宮沢章夫さんは、本書のテーマについて、「中学生ぐらいのときには、四〇人のクラスで三八人は、だいたい同じ方向を向いてしまうでしょう。ところが、そのうちの二、三人は、全然違うところを見ている、その違う何かを見つめるという視線が、この本のテーマ」なのだと述べます。
宮沢さんはまず、サブカルチャーの出発は1956年のアメリカ合衆国、日本で最初にサブカルチャーという言葉が登場したのは1968年のことだと言い、50年代から現在までを10年ごとに区切り、それぞれの時代に何が起こったのかを追っていきます。
例えば、90年代を語るにあたり、宮沢さんが80年代の終わり感じた出来事には二つのものがあったと言います。
一つ目は、1991年に公開された、つげ義春原作の映画「無能の人」。河辺で拾った石を売るという、衝撃的な本作について宮沢さんは次のように指摘します。
「八〇年代半ばの頃、まだバブルではなかったにしろ、この頃の消費社会とか、情報社会に、作者のつげ自身も違和を感じていたのでしょう。だからこそ、数字や情報では理解できない、『石を売る』という、とてつもなく訳の分からない話を作品化したと思うのです」
そして、もう一つの出来事は、六本木WAVEの閉店。「八〇年代に一世を風靡したセゾングループ的なものが、六本木ヒルズに代表される森ビルグループの台頭をもって正式に終わった」のだと宮沢さんは述べます。
その後、時代は原始的なものに回帰していく90年代を迎えるのです。
通史としてサブカルチャーを捉えることで見えてくる像とは、一体どのようなものなのでしょうか。番組収録前に行った宮沢さんへのインタビューをもとにまとめられた前半部分に加え、本書後半部分では「サブカルチャーの履歴書」として、1945年から2014年までの各年に起こった政治・社会的出来事、流行歌、本や映画等を網羅した、充実の年表がまとめられており、カルチャー全般の流れが一目でわかる資料集としても大いに役立つこと間違いなしです。
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