KDDI 『iida』新モデルは『LIGHT POOL』! デザイナー坪井浩尚氏インタビュー
7月13日(火)、東京・表参道ヒルズにて行われた「iida EXIBITION 2010 SUMMER」にて、KDDIは携帯電話ブランド『iida』の新モデルを発表。『iida』の新モデル名は『LIGHT POOL』。どのような思想においてデザインされた機種であるのか、また展示されていた『iida』に関連した様々なコンセプトモデルがいったいどんなものであったのか、その辺りを紹介したい。
※『LIGHT POOL』の全ての写真をみるにはこちらから
- 『LIGHT POOL』の第一印象
展示されている『LIGHT POOL』のフレームカラーはホワイト、ピンク、ブラックの3色。あえてフレームカラーと呼んだのは、その三角(トラス状)に区切られたイルミネーション部分が、実に多彩な光を放っていたためだ。
表面を覆っている三角形の窓に埋め込まれたLED(発光ダイオード)の数は22個。その22個と色の組み合わせで作成されるパターンの数は、およそ100。暗めの会場で展示されている10数台の『LIGHT POOL』は、全てが違うパターンで発光していた。
-軽快な操作感、良い意味で“枯れて”きた『KCP+』
実機のインタフェースを触ったところ、操作感が非常に“軽い”のだ! 気のせいかと思い手元にあった記者の『W63CA』と比べてみても、やはり『LIGHT POOL』の方がメニュー画面での動作が軽快である。
これまで、auの携帯電話で採用されてきたKDDI共通インターフェース『KCP+』は“もっさり”しているなど、レスポンスの面で不評の声があがっていたのは事実。近年はかなりの改善が行われてきていたものの、機種によっては、そこはかとない“重さ”がぬぐいきれていない印象だった。
しかし『LIGHT POOL』の操作感は非常にシャキシャキとしたものだった。ひょっとして『Snapdragon』などの高性能な新CPUを搭載してトータルレスポンスの改善を図ったのだろうか?KDDIの担当の方に話を聞くと、「いえ、7500(MSM7500)です」とのこと。従来機でも使われているCPUである。「アルゴリズムや作りこみの部分で、メーカーさんにかなり頑張っていただいたおかげですね」と語るKDDIの方の表情は明るかった。
ボタンを押してからの数ミリ秒の“待ち”は無く、またカメラ起動も重さを感じることは無かった。au機の古いユーザーの方であれば、『W41CA』などの『KCP』機を触っているかのようであった、といえばお分かりいただけるかもしれない。こうした基礎部分の作りこみは、ユーザーとして大歓迎であることは間違いない。ぜひとも今後の製品作りに反映して欲しいところだ。
-気になるアレを聞いてみた
ちょっとだけ気になっていた、”あの事”をKDDIさんに聞いてみた。
ガジェ通「あのー、『iida』という名前の由来について教えてほしいんですが」
KDDI「はい」
ガジェ通「KDDIさんの本社が(東京の)飯田橋に有るから『iida』って名前になったという噂があるんですが、これは本当ですか? 」
KDDI「ええっと(笑)、それはウワサですね」
ガジェ通「実際はどうなんですか?」
KDDI「”innovation”、”imagination”、”design”、”art”の頭文字を取って『iida』という名前がつきました」
ガジェ通「ウワサはあくまで、ウワサ、と」
KDDI「そうですね(笑)」
他に『LIGHT POOL』の気になる点としては、LEDイルミネーションを売りしているゆえの“電池の持ち”。こちらについても伺ったところ「従来機種に比べて電池の消耗が目立って早い、ということはありません。とはいえLEDなので電池を使う以上、点灯していない時ときに比べると少しは電池を消耗はしますが、(使い勝手が変わってしまうほどの)そこまでの影響はありませんね」という返事。
「展示会中、(展示機を)ずっと光らせておくのですが、すぐ電池が無くなる、といったことはもちろんありません」ということだった。
-デザイナーの坪井浩尚氏に聞く『LIGHT POOL』
『LIGHT POOL』のデザインを手がけた坪井浩尚(つぼいひろなお)氏に直接、お話を伺えた。『LIGHT POOL』の発する「光と音楽」は「空間を演出している」という。いったい、どういう意味なのだろうか。デザイナーの立場から語っていただいた。
ガジェ通「空間を演出しているという触れ込みで先ほど『LIGHT POOL』に触れさせていただきました。このデザインに至ったきっかけのようなものがあれば教えてください」
坪井氏「携帯電話そのもの、というよりも、携帯電話を”現象”とか“風景”として捉えた時に見えるものを表したかったんです。携帯電話をモノとして(解釈を)終わらせてしまうのではなく、携帯電話の周りにある“現象”みたいなこと、”関わり合い”を携帯電話のデザインのコンセプトに取り入れてみました」
ガジェ通「(デザインするのは)携帯電話そのものなのに、携帯電話のバックボーンも含めてデザインしてしまう、と」
坪井氏「そうですね、携帯電話に抑揚があったりですとか、ストーリー性があったりですとか、(あたかも)生命的に周囲に作用している、美しく影響を与えているというアンビエント(環境音楽)的な、そんなコンセプトを特徴としています」
ガジェ通「何かを主張しながら発信している、という風に見えますね」
坪井氏「はい。携帯電話の技術が進歩していく一方で、人間が本質的に持つ感情--音と光が連動することによって情緒的に作用する、っていうのは原始的な感覚として価値があるのかなあ、と。技術の進化とはまた違う”価値”が携帯電話にはあるのではないかと」
ガジェ通「(この光を見ていると)何だか思い出せないけど、昔からあるもので、“なんかこういうのあったよな”と思わせるような懐かしい雰囲気も漂っています」
坪井氏「この光り方などを達成するために、いろいろと特殊な工夫をしていたりします。(発光面が非常に多彩なライトである一方、デバイスとしての強度を得なければいけないため)窓と窓のフレームの構造にして強度をもたせたり、建築における窓と強度の関係に近いことを実践しています」
ガジェ通「確かに建物っぽくもあります」
坪井氏「そうですね。ただ、建物をイメージしてここ(携帯電話)に落とし込んでいるというよりは、コンセプトを達成するための構造であるという考え方なんです」
ガジェ通「購入を検討していたり、興味をひかれているユーザーの方にメッセージなどがあれば」
坪井氏「これまでの携帯電話とは違う付き合い方が出来るかと思います。たとえば家で間接照明を付けたり、お香を焚(た)いたり、プラネタリウムのキットで部屋をアクセント的に照らしてみたりとか、そういった癒しの光としての付き合い方ですね。一緒にデザインしたディスプレー台のような充電器もあるので、そこに置いて“光”を楽しんで欲しいです。そういった新しい携帯電話との付き合い方が出来ると思いますので、是非多くの方に体験していただければなあ、と思います」
ガジェ通「ありがとうございます」
開発やデザインに要した期間は約1年。かなり密なやり取りを経て出来上がったそうだ。
ほの暗い中で光る『LIGHT POOL』は、飾り灯篭のようであったり、ステンドグラスや影絵のようであったり、様々な表情を見せる。LEDが作り出す電気の光であることを忘れてしまう淡い色合いが情緒を感じさせる点でも、坪井氏のデザインは目的を達成していると言えそうだ。
-関連展示もかなり興味深い内容に
『LIGHT POOL』専用アイテムとして展示されていたのは「光の輪郭をぼかす」専用ジャケットや、光を拡散させたりさらに柔らかな光をかもし出す専用フィルム、インタビューでも述べられていたかなりシンプルな充電器など。『LIGHT POOL』の周囲を形作るプロダクトとして今回、同時に発表されていた。
コンセプトモデルとして出展されていたのは『PixCell via PRISMOID』と『BOTANICA』の2作品。
『PixCell via PRISMOID』は日本を代表する彫刻家、名和晃平(なわこうへい)氏の作品。
携帯電話の表面についた巨大な水滴のような造形は、私たちの周りにある情報が、あたかもコロニーのように形成されている様子を可視化したそうだ。手作りで球体(セル・Cell)を作成しているので、出展されている3台それぞれが別の造形となっている。
その隣に並べられたモニターの表面には、セルがびっしりとくっつき、映し出されている映像は何か別の情報へデコード(出力)されているかのようであった。来場者はこのモニターに対して自分の携帯電話から赤外線で情報送信することも出来る。見慣れた情報が、セルの群を通したときにどんな形になって私たちの眼に帰ってくるのか、という問いかけがこの展示に集約されている。
ところで、“ツブツブ”だらけの携帯電話といえば、かつての『iida』 Art Editionsの第一弾でもそんな作品があった。草間彌生(くさまやよい)氏のデザインによる赤と白の無数の水玉で構成されたコンセプトモデルだ。ネットでもかなりの話題になったのでご存知の方も多いかもしれない。
そこで担当者の方にこんな質問をぶつけてみた。
ガジェ通「かつても、水玉のコンセプトモデルを発表した事で、ネットではかなりの話題が登りましたがご存知ですか?」
KDDI「草間彌生さんのモデルですね。存じております。」
ガジェ通「今回の名和晃平さんの作品も(大きさやコンセプトは異なりますが)水玉状のコンセプトモデルということで、共通点があります。ひょっとして、KDDIさんは水玉とか、こうしたテクスチャがお好きなのですか?」
KDDI「(笑)いえ、そういうわけではありません。結果的にたまたま、こうしたモデルが出てきたということになります」
ガジェ通「そうでしたか。ありがとうございます」
もうひとつの『BOTANICA』は、展示物がなかなか、見つけられなかった。いや、あるのだが、本体が見つからない。会場の一角には、かなりド派手なジャングルのような植物のブロックが存在していた。コチョウラン、ラフレシア、オオオニバス、バナナ、オニユリ、ゼンマイ、ヒョウタン、ハエトリグサ、といった40種類ものフラワーオブジェだ。この中に『BOTANICA』があることは間違いないのだが、なかなか見つからない。
目を凝らすと、ジャングルの中央に鎮座しているスケール感の違う、まるで盆栽のようなものがあることに気がつく。精密に作られた40種類の植物パーツを携帯電話とベース(置き台)に「植える」事ができるという、これがコンセプトモデル『BOTANICA』だった。
まさかの携帯電話上での植物ジオラマ。フラワーオブジェはフラワーアーティストの東信(あずままこと)氏によるものだ。本物の熱帯雨林に紛れ込んだかのようなフラワーオブジェの作りこみに、多くの人が足を止めていた。
『PixCell via PRISMOID』と『BOTANICA』、いずれも商品化は未定。
今回の出展全てに共通していることは、“人とケータイとの関係性を問いかける”という点。ガジェットであり、ツールという域からなかなか出ることのない携帯電話。アートの側面からアプローチすることで、新しいアイデアが見えるかもしれない。
※草間彌生コンセプトモデルの写真は『iida』ホームページより引用
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