住まいの危険を察知! シロアリ探知犬&トコジラミ探知犬とは

日本のシロアリ探知犬第一号となったノアくん。お仕事用ジャケットを着ると凛々しく、引き締まった表情になる(撮影:嘉屋恭子)

家のまわりで活躍する動物といえば、最近はヤギが話題を集めているが(http://suumo.jp/journal/2013/11/21/55441/)、住まいの危険を察知するシロアリ探知犬やトコジラミ探知犬をご存じだろうか。今回は、その愛らしい仕事ぶりと、彼らを支える人たちを紹介しよう。強くなって再上陸? トコジラミ被害が拡大中!

シロアリ探知犬&トコジラミ探知犬が所属するのは、シロアリや害虫駆除などを行う「アサンテ」。現在同社に所属するシロアリ探知犬とトコジラミ探知犬は合計7頭(訓練中の候補生も含む)で、犬種はすべてスヌーピーと同じビーグルだ。シロアリは木材を食い荒らして建物をぼろぼろにすることでおなじみ(?)の害虫だが、トコジラミとはどのようなものだろうか。アサンテの広報担当である経営企画室の木村仁美さんに聞いてみた。

「トコジラミとは、いわゆる南京虫です。年配の方はご存じかもしれませんね。日本では戦後、DDTなどの強烈な殺虫剤が使用され、ほとんどいなくなったと思われていたんですが、実は近年、数多く確認されています。5〜6年前にNYで大発生したことが話題になりましたが、その後、海外からの旅行者が持ち込んだり、海外旅行に出かけた人が持ち帰ってきたりするケースが多いようです」

その言葉を裏付けるように、東京都のトコジラミの相談件数は2005年と2012年を比較するとなんと13倍にも増えていて、ホテルだけでなく、一般家屋などでも多く発見されている。しかもこのトコジラミ、多くの殺虫剤に耐性を持つように進化を遂げ、強敵になっているという。刺されると強烈な痒みで、眠れなくなるというから深刻だ。人間はかなわない? トコジラミ探知犬の仕事ぶり

「トコジラミは幼虫で1mm、成虫で5〜8mmと極小で、畳の隙間、本の紙と紙の間といった狭い場所を好みます。人間が探しだす方法は目視のみで、正確に見つけ出すのは至難の業です。ほかに、海外製のトコジラミ探知機を使う方法もあるのですが、弊社で試してみたところ、実用レベルではありませんでした」と話すのは、トコジラミ探知犬のハンドラー(操縦者)でもある三枝也寸志さん。

「一方で、トコジラミ探知犬の発見精度は9割超といわれています。犬は、トコジラミが発する臭いを嗅ぎ分けることができます。しかも、ワンルームの広さの部屋なら、1~3分で終わります。同じ部屋で人間が探しだそうとすると2時間はかかるため、1日5部屋が限界、精度も3割程度といわれています。ですから、時間、精度ともにトコジラミ探知犬の圧勝なのです」(三枝也寸志さん)

こうした理由から、今までに8000室を超える部屋数でトコジラミを探し出す仕事をしている。ちなみに犬の集中力が持つのは15分が限界のため、15分調査したら別の犬と交代、休憩させるサイクルで仕事を進めるのだという。

【画像1】ホテルの一室を模した部屋で、訓練するサムソン。まずは待ての姿勢から、三枝さんが隠したトコジラミ入りの瓶を探す(撮影:嘉屋恭子)

【画像1】ホテルの一室を模した部屋で、訓練するサムソン。まずは待ての姿勢から、三枝さんが隠したトコジラミ入りの瓶を探す(撮影:嘉屋恭子)

【画像2】「SEEK(探せ)」の指示にしたがって、室内を探知していく。見つけると首を上下に振り、ハンドラーに伝える(撮影:嘉屋恭子)

【画像2】「SEEK(探せ)」の指示にしたがって、室内を探知していく。見つけると首を上下に振り、ハンドラーに伝える(撮影:嘉屋恭子)シロアリにも外来種が登場。探知犬は欠かせない存在に

それでは、シロアリ探知犬はどのような働きをするのだろうか。
「シロアリの発見方法も、人間が行う場合は目視と打診が基本です。シロアリは床下などに多くいるのですが、狭くて人間の入りにくいところ、目が届きにくい場所などをシロアリ探知犬が床上から発見してくれるので、人間の弱いところを補ってくれる’相棒’といえますね。所要時間は一戸建ての1階部分を探知して15分程度です」(三枝也寸志さん)

近年では、建材にも輸入木材が多用されていて、木材といっしょにアメリカカンザイシロアリという外来種が日本に上陸したことが確認されているという。このアメリカカンザイシロアリは、従来のヤマトシロアリと違って、壁や屋根に巣をつくり、食い散らかすのだが、外見上ではほぼ分からない。しかし、こうした壁面や軒先の被害を解体せずに発見できるのが、シロアリ探知犬の強みだとか。

「新築2〜3年でも、壁面をあけてみてびっくり、という家もありました。断熱材に蟻道(シロアリの通り道)ができていた家もあります。高気密高断熱の住まいが増えたことで、シロアリたちも生きやすくなっているんです」(三枝也寸志さん)

「新築の場合でも、防蟻剤の有効期間は5年です。ただ、多くの方は5年経過しても、すぐに防蟻剤を散布しよう、とはなりにくいんです。ですからシロアリ探知犬は、こうしたシロアリについての啓蒙やPR活動も大切な仕事なんです」(木村仁美さん)。そのため、アサンテに所属するシロアリ探知犬とトコジラミ探知犬は「くんくんズ」という愛称で、地域のイベントなどに参加することもあるのだという。探知犬を支えるハンドラーも重要な仕事

では、探知犬ならではの苦労はどんなものがあるのだろうか。犬や猫がいる家だと興奮することはないのだろうか。
「犬たちは、仕事中にジャケットを着るのですが、そうすると『お仕事モード』になるらしく、反応しません。苦手な現場があるとすれば、シロアリやトコジラミがわんさかいる部屋や家でしょうか。興奮してしまって、犬が抑えきれなくなります(笑)。」(三枝也寸志さん)

ちなみに、ハンドラーを務める三枝也寸志さんとトコジラミ探知犬の訓練を見せてもらったが、探知中はずっと中腰のポジションをとりながら英語で指示を出し続け、犬が虫を見つけたら褒めてドッグフードを与えていた。ハンドリングにも技術がいるし、体力的にもきつい仕事だという。

「犬も賢いので、ハンドラーが信頼できるかどうか、じっと観察していて、新人のハンドラーなどを騙そうとすることもあるんですよ。犬もラクしてドッグフードがほしいですから(笑)。お客様は犬がかわいいと褒めてくださって、ハンドラーは見向きもされませんが(笑)、見た目以上にハードです」(三枝也寸志さん)

【画像3】社内で訓練するノアくん。カップの中に入ったトコジラミを発見して、首を激しく降って三枝さんにお知らせしている。訓練は毎日行わないと、臭いを忘れてしまうのだという(撮影:嘉屋恭子)

【画像3】社内で訓練するノアくん。カップの中に入ったトコジラミを発見して、首を激しく降って三枝さんにお知らせしている。訓練は毎日行わないと、臭いを忘れてしまうのだという(撮影:嘉屋恭子)

災害救助犬や盲導犬などと同様、くんくんズにも定年があり、実はシロアリ探知犬の第一号だったノアくんも、引退が近づきつつあるのだとか。

「普通の探知犬は1種類の臭いを覚えると、もう片方の臭いを忘れてしまうことも多いのですが、ノアは、賢くてシロアリとトコジラミの両方を探知できます。今は年齢を考えて、PRのお仕事が多いですね」と木村さん。でも、訓練中の表情は真剣そのもので、「虫を見つけた!」と首を振る様子は、とても頼もしい。こんな愛くるしいワンコの仕事ぶりを見られるなら、ちょっと憂鬱なシロアリやトコジラミの探知をお願いするのも、楽しみになりそうだ。●アサンテ
HP:http://www.asante.co.jp
元記事URL http://suumo.jp/journal/2014/10/01/70323/

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