従業員の有給取得促進、企業のメリットは?
日本の有給休暇取得率は48.1%と5割を切る結果
一定の条件を満たせば法的に取得が認められている有給休暇(年次有給休暇)。きちんと取れていますか?
平成23年厚生労働省の調査では、企業が労働者一人に付与した有給休暇日数は平均17.9日(繰越分を除く)。それに対し、実際に労働者が取得した日数は8.6日でした。取得率は48.1%と5割を切る結果となっています。政府は当面の目標値として、有給休暇取得率を70%にまで伸ばそうとしているようですが、現状では遠い道のりです。フランスやスペインの取得率はほぼ100%だそうですから、やはり日本は「有給休暇が取りにくい国」と言えるでしょう。
また、諸外国では有給休暇を「自分や家族のため」に充てることが多く見受けられますが、日本では有給休暇について、「病気やけがで仕事ができないときに使うもの」といった臨時休暇的な意識が未だに強く、会社へ有給休暇を請求しづらい風土があるようです。
働く人の意識の変化に伴い有給休暇取得促進の動きも
従来の日本人サラリーマンの働き方は、いわゆる「24時間戦えますか?」のCMキャッチフレーズに代表されるような「がむしゃらに仕事をする」スタイルが一般的でした。しかしその結果、ワークライフバランスは大きく仕事側に偏り、休暇を返上するなど自分の時間が極端に少なくなったり、揚句、心身の不調をきたすなどの弊害も生まれてきました。
しかし、近ごろではワークライフバランスがより重視されるようになり、「仕事だけでなくプライベートも充実させたい」というように働く人の意識も大きく変化しています。確かに「仕事だけが生きがい」なんていうことは、今ではあまり流行らなくなっているように感じます。
こういった流れを受け、有給休暇を「法的義務だから仕方なく与えなければならないもの」としてではなく、積極的に活用する企業も出てきています。
生産性の向上とメンタルヘルス対策コストの低減が一度に図れる
では、有給休暇取得促進によって、企業にどのようなメリットがあるのでしょうか。まず、従業員に時間的・精神的な余裕が出ることにより、モチベーションアップや作業効率の向上、新しいアイデアの創造などの効果が生まれます。併せて、過重労働によるメンタルヘルス不調の予防にもつながります。生産性の向上とメンタルヘルス対策コストの低減が、一度に図れることになるのです。
次に、企業イメージの向上があります。有給休暇をきちんと取得できるということは、働く人からすれば大きな魅力です。人材難といわれるご時世、労働環境の良さをアピールすることで、優秀な人材を集めたり、人材定着につながったりする効果があるでしょう。
給料を払って休暇を与えるということは、企業にとってロスに思われがちですが、こういった様々なメリットがあるのです。日本において、従業員が諸外国並みに「1か月間休暇を取って旅に出る」といった状況になるのは、なかなか難しいかもしれません。しかし、きちんと休暇を取る・取らせることで、従業員と企業の双方にとってメリットが得られるのであれば、有給休暇取得を積極的に促進する意義は大きいと言えるでしょう。
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