口裂け女も岐阜が発祥!? 明治・大正期の心霊研究をテーマにした『奇なるものへの挑戦』展を見てきた

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最近、オカルトが一部の好事家の間で再び注目されるようになっていますが、明治・大正期に流行した霊術や催眠術、心霊研究者の業績を片っ端から取り上げる特別展『奇なるものへの挑戦』が岐阜県博物館にて開催されています。
”霊界”とか”千里眼”といった言葉についつい反応してしまう筆者、どうしてもどんな展示内容なのか見てみたくて、岐阜県関市まで行ってきました。

口裂け女にツチノコ……岐阜には不可思議な存在ばかり!

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「なぜ岐阜でこのような展覧会が!?」という疑問を持たれる人が多いかもしれませんが、岐阜県には心霊スポットが少なくなく、不可思議な現象や都市伝説のはじまりとされることはオカルト好きの間でよく知られているところとなっています。

1979年に小学生の間を中心に広まった”口裂け女”は、前年末の岐阜県八百津町もしくは岐阜市柳ヶ瀬が発祥とのこと。

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『奇なるものへの挑戦』展では、1992年に岩手県遠野市で開かれた『世界民話博覧会』のために製作された等身大の”口裂け女”像を展示。怪談や都市伝説研究の先駆け的な存在である民俗学者・野村純一(1935-2007)が監修したもので、横から見るとパックリと開いている口もさることながら、充血ぎみの目が不気味……。

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幻獣・未確認生物(UMA)の代名詞的な存在といえるツチノコに関しても、実物や捕獲用の道具、文献などが豊富に展示。岐阜県では「のつち」「よこづち」と呼ばれ、特に東白川村は全国有数の多発地帯で、山間部では目撃が相次いでいるとのこと。

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宇宙人・UFO・怪奇現象についてをネタにした『東京スポーツ』などの紙面も。こうして見ると、オカルトがいかに日本人に近しい存在なのか再認識することができます。

明治・大正期の心霊研究者も岐阜出身が多い!?

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明治維新後、急速な近代化により科学への関心が高まる一方で、”妖怪”や”霊”といった不可思議な現象の実態を明らかにしようとした研究者も現れました。彼らによって催眠術や千里眼、超能力から、精神医療・霊術といったものの実験・研究が行われ、大衆の間でも一大ブームとなりました。

そんな知的好奇心から超常現象に挑んだ研究者を岐阜県は多く輩出。催眠術の実験・研究を進めた桑原俊郎(1873-1906)や霊子療法を実践した田中守平(1884-1929)といった霊術家が出身で、ほかにも多数の催眠術師を生み出しており、今回ゆかりの文献やアイテムを見ることができます。
中でも特に充実しているのが、東京帝国大学助教授だったものの、千里眼や超能力を研究する上で帝大を追われた後も催眠心理学の研究を進めた福来友吉(1869-1952)の展示物。

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心の中に映ったものを紙に焼き付ける念写の発見者とされる福来。透視能力者・三田光一(1885-1943)も彼によって見出されました。京都・嵯峨公会堂での公開実験では、弘法大師・空海の肖像の姿を感光したとのこと。

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晩年は仙台に移住し、東北心霊科学研究会を結成するなど後進の育成にも力を注いだ福来。展示では彼の研究所が製作した念力測定器も。うさんくささは否めないですが、彼らが本気で存在を信じて大真面目に研究していたことの結晶であるのは間違いないところ。

岐阜に霊術家が多い理由は……? 研究者「まだよく分かっていない」

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2014年8月24日には、『明治のオカルトブームについて』と題した講演会を実施。明治の催眠術ブームや霊術・精神療法の勃興について、当時の社会状況と照らし合わせながら専門家による解説に、100名以上の来場者が耳を傾けました。

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類似宗教学者で国立舞鶴工業高等専門学校准教授の吉永進一氏は、精神療法の盛期である1903年から1930年までの変遷について紹介。当時、治癒師の数は5千から3万人にものぼったといい、第二次大戦後に指圧・整体といった手技療術や健康法、生長の家・世界救世教などの宗教が残ったする一方、アメリカでも”Mind cure”といった霊術熱が同時期に高まっていたことを指摘しました。

そのほか、霊術の研究家や実践者が岐阜県をはじめ「大垣から静岡までの間に集中している」ことの理由について、「山岳宗教や修験道の流れが多いからなのでは」と挙げますが、「それでは(同じ山岳部の)栃木や群馬ではどうなっているのか。まだまだ分からないことが多い」と話します。

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横浜国大教授で”こっくりさん”研究の第一人者でもある一柳廣孝氏は、明治のオカルトブームと文学との関係を解説。日露戦争前夜の1903年に日光華厳の滝で自殺した藤村操の遺書『巌頭之感』が、知的青年層に影響を与え精神主義勃興のきっかけになったとする一方、新聞でも『百物語』や怪談の連載が掲載されていることを紹介。日露戦争に出征した夫のもとに肺炎で亡くなった妻が現れたというエピソードが入っている夏目漱石の『琴のそら音』について、霊がテレパシーとして学究されていることが、当時の世情を示しているといいます。

催眠球、気合術の絵画……奇妙な展示がたくさん

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催眠術師・古屋鉄石が特許を取得して売りだしたという複式催眠球。

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姓名学の創始者・熊﨑健翁による月刊誌『主婦之友』の付録。当時から女性向け雑誌には占い好きの読者が多かったことを示す貴重な資料です。

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修験者の法力を示す荒業は、近代になり見世物・興業化。昭和40年代の「人間ポンプ」ポスターはどこかプロレス的。

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明治時代に欧米より入ったテーブルターニングが独自に進化した”こっくりさん”。歌川政信の浮世絵の複製が見れるほか、丸盆と3本の棒で実際に体験できるコーナーもあります。

学芸員による10年来の企画が実現したというこの『奇なるものへの挑戦』展。主催に岐阜新聞やぎふチャン、後援にNHK岐阜放送局が名を連ねるという地域ぐるみで力を入れている展示でもあり、とにかく濃ゆい内容となっており、オカルト好きを自認する人ならば間違いなく楽しめるはずです。会期は2014年8月31日まで。

『奇なるものへの挑戦 明治大正/異端の科学』

会期:2014年7月4日~8月31日
時間:9時~16時30分 ※入館は16時まで
入館料:一般600円 大学生300円 高校生以下無料

特別展『奇なるものへの挑戦 明治大正/異端の科学』(岐阜県博物館)
http://www.gifu-kenpaku.jp/toppics/20870

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ふじいりょう

乙女男子。2004年よりブログ『Parsleyの「添え物は添え物らしく」』を運営し、社会・カルチャー・ネット情報など幅広いテーマを縦横無尽に執筆する傍ら、ライターとしても様々なメディアで活動中。好物はホットケーキと女性ファッション誌。

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