「限定正社員」で雇用の二極化は是正できる?
政府は成長戦略のひとつとして「限定正社員」を推進する方針
日本人の労働環境は、「身分は安定しているものの残業や転勤が多くワークライフバランスで悩んでいる」正社員と、「低賃金で身分が不安定な」非正規社員の異なる課題を抱えた二極化状態にあります。安倍政権は成長戦略のひとつとして「限定正社員」を推進する方針を打ち出しました。このことにより、2014年は、無限定な働き方を考え直すスタート地点になりそうです。
「限定正社員」とは、地域や職種などを限定した上で、雇用期間に定めがない契約を結び、賃金は非正規社員より高い水準で、社会保険にも加入することから、比較的安定した雇用形態だと考えられています。ただ、転勤や異動、残業などは要求されない分、賃金は正社員より低く抑えられています。
「限定正社員」は、雇用保証の範囲も限定的になる
この「限定正社員」は、特に新しい雇用形態ではありません。ユニクロや日本郵政グループが導入して話題となった転勤のない「地域限定社員」や、職種が限定された「職種別採用」も「限定正社員」の一種であり、一部企業では定着した雇用形態です。今回の動きは、これを政府が後押しするものです。職務や任地は限定されていても、雇用契約は正社員と同じように無期にすることにより、雇用を安定させる。社会問題化している非正規雇用者を減らすことができる上、企業側が人材を確保しやすくなり、経済が活性化すると期待しているのです。
しかし、「限定正社員」は、地域や職種などを限定した上で雇用契約を結ぶため、雇用保証の範囲も限定的にならざるを得ません。これまで議論を進めてきた政府の規制改革会議雇用ワーキング・グループは、「半年や1年などで契約更新しながら働く非正規労働者の雇用安定や、ワークライフバランスの改善、子育てを終えて再び働く女性らの活躍につながる」(東京新聞2013年6月7日)としている一方で、経営合理化などで契約時の勤務地や職務がなくなった場合は、解雇できるようなルール作りも行うと述べています。業務縮小や勤務地閉鎖時に解雇できる可能性が見え隠れしているため、「限定正社員=解雇しやすい正社員を作る、人件費削減に利用される」との印象を与え、一部からの反発につながっていることも事実です。
労使双方が納得できるルールづくりが必須
そして、現状では「限定正社員」を対象にした労働契約や就業規則を明示している企業はそう多くはありません。真の意味で雇用の安定化に貢献する制度とするためには、待遇や労働条件を明らかにし、労使双方が納得できるルールづくりが必須となります。
企業にとって、その時々の事業の盛衰に伴い、柔軟に組織を変革できる人員配置にしておくことは、競争力を高める上でも重要なことでしょう。労働者も組織も双方で発展・向上できる制度となるよう、照らし合わせて議論することが不可欠です。
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