「固定残業代」導入企業増加、正しい求人表記は
固定残業代の求人、約9割が不適切な記載
報道によると、「固定残業代」を導入する企業がハローワークに出した求人のうち、約9割に不適切な記載があったことが明らかになりました。弁護士などで構成される「ブラック企業対策プロジェクト」は、長時間労働の温床になっているとして、実態を調べるよう、厚生労働省に申し入れをしているとのことです。今後、誤った表記で求人をしていると、求人受付をされなくなり、また、指導を受ける可能性もありますので注意が必要です。
残業代の額や残業時間などが明記されていないといった不適切な表記が多く発覚したことを受けて、今回は「固定残業代」を導入する企業が求人する際の正しい表記について解説します。
何時間分にあたるか書面に明示し、基本給とは明確に分けて記載
固定残業代は、一定額の残業代をあらかじめ定めて支払うことです。残業代が何時間分にあたるか書面に明示し、基本給とは明確に分けて記載し、さらに事前に決めた残業時間を超えて働かせたときは、超過した分を払わないといけません。
過去の裁判判例から求人票の固定残業代の正当性を満たす3要件は以下の通りです。
①基本給などの所定内賃金部分と割増賃金部分を明確に分けていること
②固定残業代として支給するのが何時間分の時間外労働に相当するか明確なこと
③固定残業代として支払う時間分を超えた場合、別途割増賃金が支払われていること
<求人 記載例>
・基本給:200,000円 (完全週休2日制 月平均160時間労働)
・固定残業代:46,875円(30時間分の時間外労働分として毎月一定額支給)
※時間外労働の有無に関係なく支給し、30時間を超えた分は、追加で支給
※計算式 20万円÷160h(月平均労働時間数)×1.25(時間外割増率)×30h
・時間外労働手当 (残業時間30時間分を超えた分)
・深夜労働手当
・休日労働手当
記載例のとおり、深夜労働や休日労働すれば、別途手当を支給することになるため、その点も記載し、実際の運用も正しく行わなければなりません。
固定残業代をめぐるトラブル増加、正しい労務管理の徹底を
雇用契約時には一切残業代について触れず、入社後に「基本給20万円には30時間分の残業手当込になっているから」ということを説明しているケースや、「当社は『みなし残業』だから、いくら残業しても残業代は払わない」と言い切って、間違った運用をしているケースもあり、大きなトラブルになっています。なお「みなし残業」という言葉は、「みなし労働時間制」(裁量労働制と事業場外労働)と混同して誤った解釈をしていることが現場サイドでは多いので注意が必要です。こちらはあくまで労働時間を計算する上での特別な方法(法律で認められている)というだけで、時間外労働に対して残業代を支払わなくて良いというものではありません。また、基本給18万円(残業時間100時間分含む)というような労働契約は、週40時間労働の場合、所定内賃金が最低賃金を下回ることになるので当然無効になります。
近年、求人や労働契約の際に固定残業代を盛り込む企業が増えてくるとともに、関連する労使トラブルも増えています。求人票と労働契約書と給与明細、そして。労働の実態と就業規則の記載方法が裁判になったときの争点になってきます。まずは就業規則を早急に見直し、運用面も含めて正しい労務管理を徹底することが求められるでしょう。
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