「サイレント・サムライ」福本清三さん、劇歴55年目にして沈黙を破る
今月8月9日、映画『太秦ライムライト』が、第18回ファンタジア国際映画祭で、最優秀作品賞の「シュバル・ノワール賞」及び「最優秀主演男優賞」のW受賞を果たし、日本映画として初めての快挙を挙げたことが注目を集めています。主演の福本清三さんは、日本人男性初の受賞で、また71歳という年齢で歴代最年長の受賞となりました。
これまでに数多の時代劇に、斬られ役として登場し”5万回斬られた男”の異名も持つ福本さん。代表作は「なし」と語るなど、あくまでも主役を引き立てる脇役としての謙虚な姿勢を崩しません。本書『どこかで誰かが見ていてくれる』では、「日本の中でたった一人でもいいですから、『ああ、あいつ、斬られ方うまいやないか』って思って見てくれたら、それでええと思っています」と、自身の役者観を語っています。
また本書の<大部屋俳優の知恵・其の四>には「自分の名前を売り込もうとしない。相手から名前を聞かれるようになれ」とも述べています。福本さんは、自分の存在をアピールせずとも、与えられた役目を忠実にこなすうちに、自然と現場の監督や制作スタッフから名前を覚えて貰えたそうです。
福本さんは60歳のとき、映画『ラストサムライ』に、トム・クルーズが演じるオールグレン大尉の監視兼護衛を務める寡黙な「サイレント・サムライ」役として出演し、一躍脚光を浴びますが、その際にも自分から売り込んだことはありません。福本さんの熱烈なファンの一人が、キャスティング担当に福本さんを推薦する手紙を書き、それがキャスティングディレクターの奈良橋陽子さんの目にとまったのが、出演のきっかけだったのだとか。
71歳にして初主演した本作『太秦ライムライト』は、日本のハリウッドこと京都・太秦の日映撮影所を舞台に、”斬られ役”一筋の老優と、心を通わせる新人女優を描くストーリー。まさに、本書のタイトル『どこかで誰かが見ていてくれる』を地でいく物語に、多くの人が喝采を送ってやまないことでしょう。
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映画『太秦ライムライト』公式サイト
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