問題を解決する創造性の使い方とは
「創造性」という言葉はよく耳にするが、あなたは自分が創造性のある人だと思っているだろうか。そして、そもそも「創造性」というものが一体どういうものか考えたことはあるだろうか。
『クリエイティブ・マインドセット』(デイヴィッド・ケリー、トム・ケリー/著、千葉 敏生/翻訳、日経BP社/刊)という一冊の本には、個人や組織がどんな課題においても創造性を発揮できるようになるためのコツが書かれている。
この本では、創造性は「想像力を使って、今までの世界にないモノを生み出すこと」と考えられており、長い間、ビジネスのフィールドにおいて創造的活動の軽視が続いてきたと指摘されている。
しかし今や、グーグルやフェイスブック、ツイッターなどの花形テクノロジー企業たちが、従業員の創造性を開花させることで人々の生活に変革を起こしている。創造性はイノベーションという形であらわれているのだ。
さらに、多様化する問題に対して、解決策も創造的にならなければいけなくなった。つまり、創造性を身につけることが必須の時代となっているといえよう。
では、それを身につけるにはどうすればいいのか? 答えは、創造性はもうすでに備わっているということになる。
思い出してほしい。子どもの頃は誰もがクリエイティブな発想をしていたはずだ。恐怖や恥ずかしさを感じず、おかしなことを試しながら遊んでいた。しかし、それは年齢を重ねるにつれて、「何かをやらかせば社会的に拒絶される」という恐怖が大きくなる。
かつて自分に備わっていた創造力を取り戻すにはどうすればいいのだろうか。
それは、自分の創造力に対する自信をつくること。もっと言えば、新しいアプローチや解決策を生みだす世界を体験するのだ。
本書には創造性によって解決された問題の事例がいくつも紹介されている。これを読むだけでも大いに刺激になるはずだ。
例えば病院で使われるトンネル型のMRI(核磁気共鳴画像法)。中央に丸い穴が空いているあの装置だ。大人でも苦手だという人も少なからずいるが、特に子どもは恐怖を抱くかもしれない。
ゼネラル・エレクトリックでハイテク医療用画像診断システムの設計・開発部隊を率いているダグ・ティーツは、数年前のこと、2年半がかりで取り組んできたMRI装置の開発プロジェクトを終え、スキャンの操作を見学することになる。
しかし、そこで見たのは子どもがMRIに怯える顔だった。ダグは、その時に初めて子どもの8割がスキャンの際に麻酔で鎮静されていることを知りショックを受ける。
そこでダグは、幼い子どもでも怯えないMRIの開発に挑むことにした。
ダグはMRIをなんと「冒険物語」へと変えた。内部の複雑な技術は変えずに、外側のデザインを大きく変えたのだ。デザインのモチーフは海賊船。MRIの穴を囲むように、大きな舵輪が描かれている。また、他にも宇宙探検など今では9種類の冒険が用意されているそうだ。
これによって、鎮静が必要な小児患者の数は劇的に減り、患者の満足度は90%にあがったという。
これは一例だが、クリエイティブな考え方は、現状のその先を見通す強力な道具になり得る。
本書では具体的な事例を通してクリエイティブの可能性を示していくものだ。日本人は創造的な活動が苦手だといわれているが、著者たちは「日本人は本当にクリエイティブです」と断言する。埋もれてしまった創造力を解放するときは今、この時かもしれない。
(新刊JP編集部)
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