処方薬依存症に陥らない薬との付き合い方
薬物依存症の原因薬物は、覚醒剤に次いで向精神薬が多い
2014年6月12日に改正薬事法が施行され、一般医薬品の99.8パーセントがインターネットで購入できるようになりました。子育てや介護などで買い物に行きづらい人にとっては朗報です。しかし、以前は薬局で誰でも買えた0.2%の薬(現在は20品目)が「要指導医薬品」という新たな分類に指定され、ネット販売できないだけでなく、薬局の店頭でも「本人への対面販売」が義務付けられました。
改正は「便利、早い、簡単」が求められている時代の流れでもありますが、多くの医薬品が入手しやすくなったことで懸念されるのが「処方薬依存症」です。薬物への依存症と聞くと、覚醒剤やMDMA、麻薬を連想される人が多いと思われますが、医療用医薬品への依存症も存在します。
平成21年の国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所が行った薬物乱用・依存者の実態調査によると、薬物乱用・依存患者の中で、依存症の原因薬物は覚醒剤(46.6%)に次いで、向精神薬(15.1%)が多かったことが明らかになりました。また、抗不安薬の依存や、睡眠導入剤依存も少なくありません。特にベンゾジアゼピン系薬剤は副作用(焦燥感、不安、痙攣、知覚異常、動機、気分の落ち込み)があり、さらに服用を増やし、薬から離れられなくなるということも多く報告されています。医師や薬剤師も使用を控えようという動きがあるものの、いまだ使用されることがあります。
薬を過信し過ぎることなく、安全に付き合っていくことが必要
そうした中、イギリスやアメリカでは、初期のうつ症状、気分障害であれば、すぐに薬物療法というわけではなく、まずは認知行動療法といった心理療法に取り組むようになっています。しかし、処方されている薬を自己判断で中断するのはとても危険ですので、医師と相談しながら回復に取り組んでいくのが適切な方法だと言えるでしょう。
また、SSRIなど6種類の抗うつ薬について、子ども・小児への投与に有効性が認めらなかったため、使用上の注意が厚労省から発表されました。これも、自己判断の中止は逆に精神障害や知覚障害が発症する可能性があるので、医師の指示に従うよう、注意喚起も添えられています。
もちろん、薬も多様化し新薬も次々に研究が進められ、発売されていますが、薬を過信し過ぎることなく、安全に付き合っていくことが求められます。薬に頼りすぎてしまいたくなるのはどんなところからなのか、あるいは「とりあえず、薬を」としてしまっているところはないか、一人一人の付き合い方をしっかり考えていくことが必要です。
認知行動療法のエッセンスは、うつ病等に関係する、関係しないに関わらず、学んで活用すれば日常の仕事や家族生活にとても役に立ちます。安易な判断や決断ではなく、信頼できる身近な医師、薬剤師、心理士などの専門家としっかり連携しながら、安全に健康に過ごしていきましょう。
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