残業代ゼロ法案 日本と欧米の現状を比較

access_time create folder政治・経済・社会

成果に対して給与を支払うのが正しい方向

残業代ゼロ法案 日本と欧米の現状を比較

政府はホワイトカラーの生産性を上げるべく、今月に取りまとめる成長戦略に労働時間ではなく、成果で評価される新たな労働時間、「ホワイトカラー・エグゼンプション」の創設を盛り込む方針です。下記2点に該当する人を対象者とする予定です。

1.職務内容と達成目標が明確で、一定の能力及び経験を有すること
2.目標達成に向けて業務遂行方法、労働時間・健康管理などについて裁量度が高く自立して働く者であること

現在のようにソフト化・サービス化が進んでくると、以前のような製造業で時間管理される仕事が減少し、企画力や開発力(想像力)が必要な仕事が増えてきます。このような仕事は、労働時間に比例して結果が出るわけではありません。労働時間ではなく、成果(出来映え)に対して給与を支払うようにすることは、正しい方向と言えるでしょう。働く側にとっても、ダラダラと会社に残り、大した成果を出さない人が残業代を稼ぐようであれば、成果を出している人にとって不公平です。

厚生労働省は、対象職種を為替ディーラー、研究者、金融コンサルタント等の専門職でかつ、年収が1,000万円以上とかなり限定的にする意向です。しかし、日本では長年続いてきた賃金制度によって、ホワイトカラー・エグゼンプションの定着には時間がかかりそうです。日本と賃金制度が異なる欧米諸国、特に米国では「ホワイトカラー・エグゼンプション」の対象者が雇用者の2 割も存在します。

日本にはない欧米型の賃金制度「職務給」

労働時間規制が取り払われるわけですから、やはり長時間労働を助長してしまうのではないか、という懸念はあります。対象者として「職務内容と達成目標が明確」とありますが、日本では、そもそも給与自体が職務遂行能力に対して支払われる「職能給」、発揮能力に対して支払われる「実力給」と言った、能力に対して支払う賃金制度がほとんどで、職務に対して支払われる欧米型の「職務給」ではありません。

職務が曖昧であるがゆえ、他人が残業していると帰りにくく、ついつい手伝い、意味もなく残ってしまうことがあります。これが「職務給」であると、自身の職務範囲が明確なため、他人が仕事をしていても残る必要はありません。まして他人の仕事を手伝うことは、逆に他人の仕事を奪うことにもなりかねず、欧米ではこのようなことでの残業はほとんど発生しません。

以上のことから、日本は長時間労働になりやすい環境にあり、長年培ってきた日本の賃金制度を変えていくには、まだまだ紆余曲折が予想されます。賃金制度、企業文化など欧米とは違う雇用環境の中で、ホワイトカラーエグゼンプションを選考して導入することは、時代の流れの中では必要でしょう。しかし、その定着までには長時間労働の懸念もあり、まだまだ時間が掛かりそうです。

  1. HOME
  2. 政治・経済・社会
  3. 残業代ゼロ法案 日本と欧米の現状を比較
access_time create folder政治・経済・社会
JIJICO

JIJICO

最新の気になる時事問題を独自の視点で徹底解説するWEBメディア「JIJICO」。各分野の専門家が、時事問題について解説したり、暮らしに役立つお役立ち情報を発信していきます。

ウェブサイト: https://mbp-japan.com/jijico/

  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。