食品ロスを生活困窮者に生かすフードバンク活動
お米の年間収穫量に相当する食べ物が食品ロスに
「食品ロス」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。まだ食べることができるにも関わらず、さまざまな理由で捨てられる運命にある食品を指します。日本には、まだ食べられるのに捨てられてしまう「食品ロス」が、500万~800万トンあります。これは、日本人の主食であるお米の年間収穫量にも相当する量です。
大量の食べ物を捨てている一方で、食べ物に困っている人が日本国内にいます。厚生労働省が発表している、相対的貧困率16.0%を基に計算すると、「貧困線」以下で暮らしている人が2000万人、これは6人に1人の割合です(厚生労働省 平成22年 国民生活基礎調査の概況)。
「貧困線」とは、日本人の平均年収の半分に相当する値を指します。具体的には、平成21年の貧困線は112万円ですので、これを1カ月あたりにすると、およそ9万3000円となります。この中から家賃や光熱費も捻出しなければならないとすると、家賃の高い地域では、かなり苦しいのではないでしょうか。
「おすそわけ」文化の大型版とも言える「フードバンク活動」
「食べ物に困っている人」というと、途上国で涙を浮かべて泣いている子どものイメージが浮かぶかもしれません。でも、日本の中にも、食べ物に困っている人はいるのです。
このように「あまっている食べ物」と「食べ物に困っている人」という、2つの社会的課題が国内で存在しています。ここで、日本の「おもてなし」文化と同時に「おすそわけ」文化を思い起こしてみましょう。もし、お中元やお歳暮でたくさんの食べ物をいただいたら「お隣やご近所に分ける」といった体験を持つ人もいると思います。また、職場のある部門にお菓子などのいただき物が届いたら「その職場みんなに分け与える」といった経験があるでしょう。
日本には、「あまっている食べ物」と「食べ物に困っている人」をつなぐ「フードバンク活動」が存在します。これは、多少、語弊はあるかもしれませんが「おすそわけ」の大型版と言ってもいいかもしれません。「ご近所や職場などで食べ物を分ける」といった行動は、義務ではなく、誰かに頼まれたわけでもありません。「たくさん食べ物があり、自分もしくは自分のまわりだけで食べきれない場合は、ほかの人に分けてあげる」といったことは、ごく自然に行われてきたのではないかと思います。
団体によっては、宅配便での送付を受け付けている場合も
「おすそわけ」の根底には「信頼関係」があります。信頼できない人、知らない人が突然やってきて「食べ物あげます」と言っても、受け取らないでしょう。
「フードバンク活動」は、信頼関係があってこそ成り立つ活動です。もともと1967年(昭和42年)に米国で始まったもので、今では世界の数十カ国で活動が続けられています。わが国では、日本初のフードバンク団体である「セカンドハーベスト・ジャパン」をはじめ、北海道から沖縄まで約40の団体があります。
あまっている食べ物を「どうにかして生かしたい、でもどうしたらいいの?」というときは、フードバンク団体によっては、宅配便での送付を受け付けている場合もあります。また、「フードドライブ」という取り組みもあります。これは、家庭であまっている食べ物を、学校や職場、イベント会場などに持ち寄り「生かす」というものです。米国では、1990年代から毎年5月に、「自宅の郵便受けにあまっている食べ物を置いておくと(袋などに入れて下げておくなど)郵便配達の人が回収し、それをフードバンク活動に活用する」といった取り組みが続けられています。いわば国ぐるみのフードドライブです。
こうしている間にも、食べ物が捨てられていきます。まず、今からできることをやってみませんか?
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