温泉好きが高じて会社を退職。1年以上の長い温泉の旅の総額は?
日本人は温泉が好きな国民といわれている。長い休みは温泉旅館でのんびり過ごしたいと思っている人も多いだろう。
ただ、好きになりすぎて、会社を辞めてまで全国の温泉をまわろうという人はなかなかいないはず。
『日本一周3016湯』(高橋一喜/著、幻冬舎/刊)は、温泉好きが高じて一念発起し会社を辞め、中古車で全国温泉めぐりの旅をした高橋一喜氏が、制覇した3016湯を紹介する新書だ。
「温泉に入りたいので、会社を辞めさせてください」
そう上司に告げ、高橋氏は出版社でビジネス書を編集する仕事を辞め、日本全国の温泉に入りつくす旅に出た。
そもそも、温泉にはまったく興味はなかった。それが24歳のとき、当時付き合っていた彼女と和歌山県に旅行に行った際に立ち寄った「崎の湯」に入ったことがきっかけで、温泉のとりことなる。
温泉のことを知れば知るほど温泉の魅力にハマり、湯船に浸かれば浸かるほど、もっと温泉のことを知りたくなるもの。一度興味をもったものはとことん突き詰めるという性格を抑え込むことが難しくなっていた。そして、「日本全国の温泉すべてめぐりたい」という夢を抱くようになる。
日本には約3000か所を超える温泉地があり、休日を使ってもとてもまわり切れるものではない。
人生の幸福とは、何でもいいからひとつの道を究めることではないかという考えと、独身であり、両親も元気という環境もあり、「今、素直にやりたいと思うことをやろう」と決心し、8年間勤めた会社を辞め、マンションを引き払った。
2008年3月23日、中古で購入したステップワゴンで千葉県にある実家を出発。3000湯に入り尽くすまでは決して旅を終えないと決め、1年2ヶ月をかけて3016の温泉を巡った。
旅を終え、千葉の自宅で迎えてくれた母親の第一声は「温泉くさい!」だった。この母の言葉は、高橋氏にとって激戦を戦い終えた証しのようなもので、誇らしかったという。
では、この旅、どのくらいお金がかかったのだろうか。高橋氏がよく聞かれた質問らしいが、これは気になるところだ。
出発当時の貯金は600万円。すべて使い切ってしまったら、旅から帰ってきたあとに生活がままならなくなってしまうので、100万円は残し、予算を500万円とした。期間は365日を想定したという。
旅の家計簿の内訳は次のとおり。
旅の家計簿=449万3720円
・温泉の入浴料 113万9687円(1湯あたり378円)
・食費 41万190円(1日あたり1062円)
・ガソリン代 47万4825円
・宿泊料金 143万378円(1日あたり3705円)
・雑費 23万8640円(車関連、土産代など)
・車購入費 80万円
450万円は大金だったが、今振り返ってみると、効果的な自己投資になったと高橋氏は語る。現在はフリーランスで書籍の編集・ライティングに携わるかたわら、温泉エッセイストとしても活動している。
温泉そのものの泉質やかけ流しかどうかなど温泉の利用状況を重視している。そのため、人気旅館やオシャレな空間が自慢のデザイナーズ旅館は登場しない。「小さい、鄙びた、地味」な温泉中心に紹介している。泉質などにも重きを置き、温泉を思う存分楽しみたいというコアな温泉ファンから連休にちょっと温泉に行ってみたいという人まで参考になる一冊だ。
(新刊JP編集部)
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・55歳、トラックでアフリカ一周
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ウェブサイト: http://www.sinkan.jp/
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