〈忌野清志郎ロックン・ロール・ショー〉盟友たちが弾き語りでRCナンバーを連発―OTOTOYライヴレポ
5月2日(金)渋谷公会堂で〈忌野清志郎 ロックン・ロール・ショー 渋谷公会堂Love&Peace〉が開催され、集まった熱心なファンが清志郎とゆかりあるアーティストたちと共に年に一度のショーを楽しんだ。
5年目となる今年は武道館から渋谷公会堂に会場を移し、アコースティック・ライヴとして開催。天気が良く暑い一日となったこの日、開場を待つ間あちこちでファン同士が旧交をあたためる姿が見受けられた。
会場に入ると早くも客席はギッシリ埋まっており開演を待ちわびている。ステージに目を向けると向かって左手にはおなじみヒトハタウサギのバルーンがお出迎え。舞台上のスクリーンには「全部the弾き語り」と書かれ、この日のコンセプトを伝えていた。右手にはオレンジ号、2階席からはハッキリ確認できないが置かれているギターはギブソンのトリニ・ ロペスモデルだろうか、ES340だろうか? そんなことを考えているうちに開演のアナウンスが流れだし、18時を少し回った頃にイベントがスタートした。
会場が暗転するとハチ公が映し出され、「ロックン・ロール・ショー」が流れ出すと映像の中の清志郎が自転車で渋谷へ向かい、渋谷公会堂に到着。弾き語りするさまざまな時代の清志郎の映像。「今日もオレんちだと思って最後まで楽しんでいってくれ!」いつものセリフに一斉に盛り上がる観客たち。いよいよ〈忌野清志郎 ロックン・ロール・ショー〉開演だ。
スクリーンの中で清志郎に紹介され、まずはトータス松本がステージへ。「またトップバッターですよ。毎度毎度(笑)」と言いながらもまんざらでもなさそうなトータス。椅子に座ってアコギを手にリズムを刻み出すと手拍子が沸き起こる。「シャラララ~レタ~」と歌い出す。「あの娘のレター」だ。「やたら粋がって~」のノイズ部分を「シー!」と再現するトータスに大喝采。コアなファンが集まったライヴならではの光景だ。サビから、「ワンダフル・ワールド」の日本語バージョンを挟み再びサビへ。2曲目は「よそ者」。
RCサクセションのアルバム『BLUE』が大好きで、タブ譜を買って弾いていたとのエピソードを交え、曲は「Oh! Baby」へ。会場を静まりかえらせた。「昔野音で、BAHOのイベントに清志郎さんと出ることになってソウルの曲をやろうとしたら、“「ガッツだぜ」をやろう”と言われた」で観客爆笑。これを聴くと清志郎を思い出す、と「ドック・オブ・ザ・ベイ」を熱唱。「次はチャボさんです!」との紹介に沸く観客。2番手がチャボということに驚きの声も挙がっていた。
「ようこそ!」とステージで第一声を放ったチャボが真っ赤な照明に照らされ、「ボスしけてるぜ」のイントロを弾き出すと会場が一気にヒートアップ。サビでギターの音が上昇するのに合わせて照明もリズムを刻む。間奏ではアコギにフランジャーをかけてサイケな雰囲気を演出、デイトリッパーのフレーズを挟んだりサティスファクションのイントロも飛び出した。渋谷をテーマにポエムを読むチャボ。「RCサクセション初めての観客総立ちのライヴ、忘れられない場所です、渋谷公会堂!」の言葉に大きな拍手が送られた。さらに本日の共演者でもあるチャーが武道館ライヴのオープニング・アクトにRCを起用したことにも触れ、改めてチャーに感謝を述べた。
「僕とあの娘」「まぼろし」と、初期に作られた曲を立て続けに歌うチャボ。感情が迸る歌声と比例してギターも激しくドライブする。「まぼろし」のエンディングではギターを掻き鳴らし、「ダーリンミシン」風に曲を終わらせる。歌い終わるとアカペラで「けむり」を歌ったのは、かつての渋谷公会堂でのライヴへのオマージュだろうか。最後の曲、と歌い出したのは、名曲「夜の散歩をしないかね」。数々の清志郎とチャボの名演に想いを巡らせて思わず目頭が熱くなってしまった。
続いて真心ブラザーズが登場するといきなりギターを弾き出し、「あの歌が思い出せない」。清志郎もあまり披露することが多くなかった曲を見事なハーモニーで聴かせた。「こんな素晴らしいステージに立てて幸せです!」とYO-KING。「もう、楽屋がすごい! 今日の気持ちは中2です! 」と桜井。楽屋がチャボと一緒のようで興奮気味だ。昨年の武道館でもバンドで演奏した「お墓」では桜井のソロが冴えたフレーズを聴かせた。「わかってもらえるさ」「よごれた顔でこんにちは」とシングルEPのA面B面を続けて歌い和やかに盛り上げる。
ここで「初対面なんですけど…」と紹介されて登場したのは奥田民生(笑)。シークレット・ゲストとして浜崎貴司も登場して4人による「デイ・ドリーム・ビリーバー」。YO-KINGから浜崎、サビでは民生が歌う。最後は4人全員で歌い、民生のソロ・ステージへ。椅子に腰掛け「シュー」で力強いシャウト。「清志郎さんはキーが高いから、軽やかに歌う曲も俺がやるとメタルみたいになる(笑)」。続く「スローバラード」ではサビでギターを止め声を張り上げる民生に感嘆と大歓声。歌い終わると深々と頭を下げる民生に拍手が起こる。
民生に呼びこまれ、羽根つき帽子をかぶったチャーが登場。「良い声してるね。あの歌をこんなふうに歌えるの奥田だけだよ」と民生を誉めるチャー。「かくれんぼ」で2人のギターが絡み合う。「さっきチャボに紹介されたけど、清志郎とチャボがバンドをやると聞いて屋根裏に見に行きまして、武道館のオープニング・アクトに出てもらって…俺はRCの追っかけだったから(笑)」と振り返るチャー。清志郎との共作をもう一曲「SF」をトータスと3人で。トータスが吹くハープと2人のギターがアコースティックながら迫力満点だ。民生とチャーが交互に歌い、観客に「ヘヘイヘイ!」とコール&レスポンス。曲が終わると民生がギターを弾きながら出演者を全員呼び込む。もちろんチャボもステージへあがり、全員参加で「つ・き・あ・い・た・い」。イントロのフレーズをチャボとチャーが並んで弾いている。チャーは1人だけエレキ、しかもギブソンSGだ。間奏ではチャーのソロから桜井が座って膝に乗せたアコギをスチール・ギター風に弾きソロを取る。YO-KINGがハープを吹きながらステージ前面で観客を煽る。見ると1階の観客は総立ちだ。民生が上を指差して、「忌野清志郎~!」と叫ぶとこの日1番の大歓声が上がりライヴは終了。一列に並んだ出演者が手を繋ぎ頭を下げてステージを降りた。
最後はスクリーンで清志郎のライヴを見せる「ダイナミックライヴ」でRCの武道館から「ミッドナイト・ブルー」、スペシャライヴでの「デイ・ドリーム・ビリーバー」や「三番目に大事なもの」「世界中の人に自慢したいよ」が流された。「完全復活祭」での「雨あがりの夜空に」のイントロが鳴ると、実際の客席にも金色のテープが飛び交い大合唱。「また会おうぜ~!」のセリフの後に恒例の「毎日がブランニューデイ」でイベントは終了した。
少ない出演者で会場の規模も小さくなり弾き語りになったことで、キーの高い清志郎の歌をしっかり歌える実力派が集まった今年のロックン・ロール・ショー。ほとんどの曲がRCサクセションのものだったのだが、多岐に亘る清志郎の活動を網羅するにはある程度のテーマを絞っても良いのではないだろうか? 素晴らしいライヴの連続だっただけに、今後もっともっと清志郎の沢山の曲を色んなアーティストの演奏と声で聴いてみたいと思った。
またラストの映像を見ているうちに、つい「こんな人が本当にいたのだろうか?」と思ってしまった。忌野清志郎のようなミュージシャンは2度と現れないだろう。(岡本貴之)
●撮影:山本倫子
〈忌野清志郎 ロックン・ロール・ショー 渋谷公会堂Love&Peace〉
2014年5月2日(金)渋谷公会堂
忌野清志郎
奥田民生/Char/トータス松本/仲井戸“CHABO”麗市/真心ブラザーズ
〈セットリスト〉
~OPENING映像~
1.あの娘のレター~ワンダフル・ワールド(トータス松本)
2.よそ者(トータス松本)
3.Oh! Baby(トータス松本)
4.(Sittin’on)The Dock of the Bay(トータス松本)
5.ボスしけてるぜ(仲井戸“CHABO”麗市)
6.ぼくとあの娘(仲井戸“CHABO”麗市)
7.まぼろし(仲井戸“CHABO”麗市)
8.夜の散歩をしないかね(仲井戸“CHABO”麗市)
9.あの歌が思い出せない(真心ブラザーズ)
10.お墓(真心ブラザーズ)
11.わかってもらえるさ(真心ブラザーズ)
12.よごれた顔でこんにちは(真心ブラザーズ)
13.デイ・ドリーム・ビリーバー(真心ブラザーズ×奥田民生×浜崎貴司)
14.シュー(奥田民生)
15.スローバラード(奥田民生)
16.かくれんぼ(奥田民生×Char)
17.SF(奥田民生×Char w/トータス松本)
18.つ・き・あ・い・た・い(出演者全員)
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