アドビの“iPhone離れ”を経営陣が認める

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Flashから『iPhone』アプリを書き出す機能『Packager for iPhone』について、米Adobe Systems社のFlashデベロッパーリレーション主任プロダクトマネージャーであるMile Chambers氏が自身のブログで「今後(開発の)追加投資をするつもりはない」と投稿し、一部メディアで「Flash CS5のiPhone向けツールの開発打ち切り」「iPhone向けFlashを断念」と報道されている内容に対して、Adobe社の経営陣が事実であることを認めました。これにより、アドビの“iPhone離れ”の動きが鮮明になったといえます。

これは4月22日、アドビ システムズが米国本社の社長兼CEOであるShantanu Narayen氏と、上級副社長ら経営陣を一同に会して報道機関向けに開催した事業戦略発表会で明らかになったもの。発表会では、4月12日に発表したデザイン・開発向けソフトウェア製品群『Creative Suite 5』を中心に、事業担当の上級副社長らが今後の戦略を語りました。

クリエイティブソリューション事業部門担当 上級副社長兼ゼネラルマネージャーのJohn Loiacono氏は、Flashプラットフォームに関連したプレゼンテーションで『Packager for iPhone』について「出荷はするが、アップルがこの機能でリコンパイルしたアプリを承認しないだろう。これをサポートするかどうかはアップル次第」と発言。質疑応答で前述の報道に関して確認を求められたところ、「今後その機能には投資しない」と、事実であることを認めました。

アドビはオーサリングされたコンテンツをパソコン、タブレットPC、スマートフォン、ネットブック、テレビ、ゲーム機などあらゆるプラットフォームで動作させる『Open Screen Project』を推進しています。発表会ではアップルが『iPhone』や『iPad』でFlash Playerを搭載しないことや、『iPhone』の新OSでアップルが推奨する環境以外からクロスコンパイルしたアプリを禁止するなど一連の動きを「閉じられたシステム」(Narayen氏)と批判。「オープンなエコシステム(複数の企業が協調して発展させていく構造)で、どんなスクリーンでもコンテンツを流通させたいパートナーと協業していく」(同氏)とコメントしました。

これで『Packager for iPhone』は、リリースしたものの、だれも使わない機能になることはほぼ確定といえますが、今後アドビはオープンなAndroidプラットフォームへの傾倒を強めていくと見られます。FlashクリエーターもFlashゲームをAndroidアプリに移植する動きを見せるなど、アドビとユーザーの“iPhone離れ”が加速していきそうです。これに対して、アップルは何らかのリアクションを起こすのでしょうか。

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宮原俊介(エグゼクティブマネージャー) 酒と音楽とプロレスを愛する、未来検索ブラジルのコンテンツプロデューサー。2010年3月~2019年11月まで2代目編集長、2019年12月~2024年3月に編集主幹を務め現職。ゲームコミュニティ『モゲラ』も担当してます

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