SEBASTIAN X、最大規模の〈春告〉も大成功! ——OTOTOYライヴ・レポート
4月19日。前日に降っていた雨はあがったものの、春の暖かさが陰をひそめ少し肌寒い。そんな日に、SEBASTIAN X主催の野外ライヴ〈TOKYO春告ジャンボリー2014〉が行われた。3年目の開催となる今回は、それまでの上野水上野外音楽堂から一気に規模を拡大。日比谷野外大音楽堂に場所を移して開催された。
会場に入ると、メンバーの手づくりと思われる顔はめパネル(観光地などによく置いてあるもの)が。さっそく顔をはめて写真を撮っている人の姿もちらほら。よくみると、喫煙所やトイレの案内板にも、メンバーが描いたイラストが使われている。さらに場内では、巫女風の衣装を着たかわいらしい売り子が「ありりおみくじ」なるものを売り歩いている。筆者もやってみると、見事に大吉を引き当てることに成功。オリジナルの文面はユーモアたっぷりで、中を開けて読んだら思わず笑ってしまった。売り子曰く、サイン入りのものも含まれているらしい。すべてのものが手作り感満載。この場に足を踏み入れた瞬間から、もう〈春告〉ははじまっているのだ。
SEBASTIAN Xの永原真夏(Vo)と工藤歩里(Key)によるユニット、音沙汰からライヴがスタート。彼女たちは、客席のなかに設けられたアコースティック・ステージにて演奏。イベントのはじまりを陽気に祝福した。続いて登場したBLACK BOTTOM BRASS BANDは、客席のなかを練り歩きながら演奏。パレードのようなその光景は、まさに野外ライヴならではのもの。そしてメイン・ステージにN’夙川BOYSが登場すると、バンド・サウンドに客席は歓喜。彼らのド派手な演奏とパフォーマンスは、場内の熱を一気に上昇させた。
再びアコースティック・ステージに場を移すと、大森靖子が野外の開放的な空気に緊張感をもたらす。「あたし天使の堪忍袋」では、観客の合唱が響くなか大森は客席を突き進む。そのままメイン・ステージまで辿り着くと、真っ黒なパーカーを脱ぎ捨てて絶叫。場内にざわめきと強烈なインパクトを残した。続く東京カランコロンがメイン・ステージに登場すると、そんな空気も一転。観客は立ち上がって一斉に手拍子。いちろー(Vo、Gt)いわく、SEBASTIAN Xとは「結構前からの知り合い」とのことで、初期の代表曲「ラブ・ミー・テンダー」などを演奏するサービスも。ラストの「J-POPって素敵ね」では曲に合わせて客席が手を振り、場内はハッピーな空気に包まれた。
ここでしばしの休憩を挟む。この日は持ち込みOKで再入場も自由だったため、気軽に近くのコンビニに買い出しに出かけたり、会場の外で休憩することもできる。もちろん、場内の売店でお酒やつまみを買うこともできる。そんな気軽さも、このイベントの大きな魅力のひとつだ。
後半のライヴはB-DASHからスタート。結成から17年を数えるベテランは、若手に負けじとパワフルなステージを披露。「愛するPOW」「平和島」など、惜しげもなくヒット曲や代表曲を連発。途中、GONGON(Vo、Gt)がSEBASTIAN Xからのリクエスト曲を中心に演奏していることを明かす。そんな彼らのステージを、SEBASTIAN Xのメンバーも客席でうれしそうに見守っていた。アコースティック・ステージのトリは、奇妙礼太郎が務める。「春を告げようぜ」と宣言して歌いだすと、客席は一気に沸きあがる。「赤いスイートピー」で場内の一体感を高めると、「我輩は猫である」では哀愁たっぷりな歌声を聴かせる。最後は「オー・シャンゼリゼ」の大合唱で締めくくった。これほど野外の似合う男がいるのだろうか。そう思うくらいに、すっかり日が暮れた場内に響き渡る歌声は心地良かった。
いよいよこの日の主役、SEBASTIAN Xのライヴがはじまる。まずは飯田裕(Ba)、沖山良太(Dr)、工藤歩里の3人がステージに登場。最後に永原真夏が勢いよくステージに現れると、「こんばんは、SEBASTIAN Xです!!」と元気いっぱいに挨拶。1曲目の「サディスティック・カシオペア」がスタートすると、永原はくるくると踊ったり客席にマイクを向けたり、この瞬間を誰よりも待ち望んでいたと言わんばかりにのびのびとステージを駆け回る。「MIC DISCOVERY」のコール&レスポンスで観客の体温を上昇させると、永原は「楽しんでる? わたしはめちゃくちゃ楽しんでる!」と笑う。
ここでスペシャル・ゲストのBLACK BOTTOM BRASS BANDがステージに呼び込まれる。彼らのホーンでゴージャスに彩られた「世界の果てまで連れてって!」が演奏されると、場内のテンションは最高潮に。あっという間にラストの「ヒバリオペラ」へ。この曲では「春告」「2014」「日比谷」「大成功」というコール&レスポンスまで飛び出し、場内はハッピーな空気に包まれる。演奏が終わると、永原がステージのひとりひとりを紹介。最後は客席に向かって「みんなみんな大好きだよ!!」と絶叫した。
アンコールに応え、再びステージにSEBASTIAN Xの4人が戻る。「恋の歌を作りました」という紹介から、まさかの新曲を披露。思わぬプレゼントに、客席はよろこびの歓声で応える。最後に演奏されたのは「ワンダフルワールド」。心のこもった演奏に客席の歌声が重なり、再び場内がひとつになる。「本当にありがとう!!」という永原の言葉を残し、大きく手を振りながら満足そうにメンバーはステージを去った。
バンドの音が鳴り止みしばらくすると、永原だけもう一度ステージに戻り、マイクをとおさずに「ありがとう」と残った観客に何度も声をかけていた。そんな姿も含めて最後まで暖かくて、愛情が随所に溢れるイベントだった。肌寒かった気温も忘れてしまうくらいに、彼らの演奏も熱に帯びていた。会場の規模が大きくなっても、この熱はまったく薄れることがないことを体現してみせた。大きくなった〈春告〉、そしてSEBASTIAN Xがこれからどのような展開を見せるのだろうか。ますます未来が広がっていくような予感を、強く感じさせる一日だった。(前田将博)
〈SEBASTIAN X presents “TOKYO春告ジャンボリー2014″〉
2014年4月19日(土)@日比谷野外大音楽堂
■音沙汰
1. ホームレス銀河
2. SUPER GOOD
■BLACK BOTTOM BRASS BAND
1. MERCY, MERCY, MERCY
2. Fire
■N’夙川BOYS
1. プラネットマジック
2. Freedom
3. Candy People
4. 物語はちと?不安定
■大森靖子
1. OverTheParty
2. あまい
3. エンドレスダンス
4. ハンドメイドホーム
5. 新宿
6. あたし天使の堪忍袋
■東京カランコロン
1. 少女ジャンプ
2. 16のbeat
3. 恋のマシンガン
4. ラブ・ミー・テンダー
5. J-POPって素敵ね
■B-DASH
1. KIDS
2. 愛するPOW
3. M-11
4. 平和島
5. Race Problem
6. 炎
7. ちょ
■奇妙礼太郎
1. 天王寺ガール
2. まんがの歌
3. LOVESTORY
4. 赤いスイートピー
5. 我輩は猫である
6. オー・シャンゼリゼ
■SEBASTIAN X
1. サディスティック・カシオペア
2. DNA
3. MIC DISCOVERY
4. 世界の果てまで連れてって! (w / BLACK BOTTOM BRASS BAND)
5. スーダラ節 (w / BLACK BOTTOM BRASS BAND)
6. ヒバリオペラ (w / BLACK BOTTOM BRASS BAND)
7. 新曲
8. ワンダフルワールド
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