非正規社員とか派遣社員とかってみんなコンサルタントって呼べばいいんじゃない?

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金融日記

呼び方でこんなにイメージが違ってきてしまうのですね。ちょっとびっくりです。今回は藤沢数希さんのブログ『金融日記』からご寄稿いただきました。

非正規社員とか派遣社員とかってみんなコンサルタントって呼べばいいんじゃない?

「もっと早くしてくれないと仕事に遅れちゃうじゃないか!」
失業給付の申請窓口に並ぶスペイン人労働者
僕も若かったころはマクロな観点から「今の日本経済の問題点は労働市場があまりにも硬直化しているせい *1 で、企業も、これから日本の将来を担っていく若者も本来の実力を発揮できないでいるから、大企業の正社員や公務員の過剰な解雇規制を大幅に緩和するべきだ」などと随分と立派なことをブログに書いてきたんだけど、公務員と労働組合が支持母体の民主党 *2 にそんなことをいっても労働市場の流動化が行われることなど万に一つもないことに気がつき無駄な努力をするのを随分昔にやめることにした。

そして、民主党は、案の定、派遣労働のさらなる規制(今派遣社員の人の職はどうなる?)、日本郵政のアルバイトの正社員化(その給料だれが払うんだ?)、官僚の天下りを禁止して定年までの終身雇用を半強制(よけい金かかるしやる気でないんじゃない?)などなど、さらに日本の労働市場を硬直させる政策を矢継ぎ早に実行しようとしている。

こうなったら企業としては、もう正社員を雇ったら負けといってもいい。

もし雇ってヘンなのだったら、会社が潰(つぶ)れる寸前にならない限り首にもできないし給料も減らせないのだから数億円の損失だ。

やはり日本の企業は「なるべく正社員は雇わない」+「出来るだけ海外移転」が今後生き残っていくための基本戦術だろう。

そこで先日『Twitter』でつぶやいたら結構、反響があった。
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しかしこれだけの正社員への過剰な保護を考えると、会社ってのは正社員を雇ったら負けだな。本当にコアになる一握りのメンバーだけ正社員にして、後は外注とかコンサル契約でプロジェクト回すのが吉じゃないだろうか。まぁ、新卒の若者は大変だろうけど。kazu_fujisawa
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takapon_jp 俺(おれ)いまそんな感じですね RT @kazu_fujisawa: ということで、今後は日本でも個人事業コンサルが増殖して、彼らの営業手段がブログ+ツイッターになると予想してみる。そして若年層の失業率めちゃアップw /via @fu4
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僕は昔まだアカデミックな研究者だったころ、共同研究でヨーロッパに数ヵ月滞在していた時のことをふと思いだした。

気楽な貧乏研究者であった僕は、毎晩毎晩パーティーに出かけて行って遊んでいたのだが、そこで仲良くなった飲み友達がなぜか異常にコンサルタントが多かったのだ。
しかも聞いたことがある一流企業のコンサルタントだ。『アストラゼネカ』とか『エリクソン』とか『IBM』とか『ノキア』とか。

僕はコンサルタントというと、大前研一の本をたくさん読んでいたこともあって、企業の経営戦略にかかわる超優秀な人たちだと思っていた。

こんな若造がそんな一流企業のコンサルタントなんて、さすがにヨーロッパというのはエリート教育が盛んだから、小さいころから英才教育でも受けたのかなぁと当時は思った。

で、2001年にITバブルがはじけた時、彼ら「コンサルタント」はみんな失業した。

要するに、ヨーロッパのコンサルタントって日本の派遣労働者とか非正規社員のことだったのだよ。

スペインとかフランスとか解雇規制が日本より厳しい国は、企業は本当に必要な一握りの人材しか雇わないから、若年者の失業率は常に25%ぐらいだ。

あまりにも企業の負担が重いので、闇(やみ)の労働市場が発達していて、働きながらちゃっかりと失業保険までもらっている人もたくさんいる。

その点、コンサルタントというのは、プロジェクト単位で雇ったり、景気がよくて人出が足りない時にも雇えるし、必要がなくなった時に契約を更新しないことで雇用調整ができるから、企業にとっては使いやすいのだ。

そこで逆転の発想を思いついたのだが、日本でもコンサルタントをもっと増やした方がいいんじゃないか?

労働者にとっても企業にとっても、民主党政権のへんちくりんな労働規制を回避するいい方法になるし、何よりコンサルタントって響きがすごくかっこいい。

最近、ネットやテレビで派遣村 *3 とかが有名になって「非正規社員」とか「派遣社員」ってなんかすごくネガティブな言葉になってしまった。

フルタイムの正社員なんて窮屈な仕事はやりたくないから、非正規社員を好きでやっている人もたくさんいるわけで、もともとニュートラルな言葉がこんなにネガティブになってしまったのはいい迷惑だろう。

もう身分制度の下の方の人という印象だ。

たとえばあなたにガールフレンドがいて、彼女の両親にはじめて会うというようなシチュエーションを考えてみよう。
———
「紹介するわ。私の彼の由紀夫君」
「はじめまして。みずほさんと交際させていただいている由紀夫です」

 中略

「ところで由紀夫君は何をやってるのかな?」
「今、自動車工場で派遣社員やってます」
「・・・」(気まずい沈黙)

 中略

「みずほ、女の命は短い。彼とはもう別れた方がいい」
———
というような展開になってしまうとも限らないではないか?
では、こういってみてはどうだろうか?

———
「紹介するわ。私の彼の由紀夫君」
「はじめまして。みずほさんと交際させていただいている由紀夫です」

 中略

「ところで由紀夫君は何をやってるのかな?」
「今、トヨタ自動車の工場で生産ラインのコンサルタントやってます」
「へぇー、若いのにすごいね」
「いえいえ、まだ見習いですから安月給でこき使われてますよ」
「若いころの苦労は買ってでもしろっていってなぁ。わしも昔は随分苦労したもんだよ」

 中略

「みずほ、お前なかなか男を見る目あるじゃないか。そろそろ結婚とか考えたらどうだ?」
———
というような展開になる可能性が非常に高いのではないか?

由紀夫君はまったく嘘(うそ)をついていないし、やっている仕事も同じだ。ただ呼び方をちょっと変えただけだ。

ちょっと呼び方を変えるだけでこんなにみんなが幸せになれるのなら、やらない手はないのではないだろうか?

結局のところ日本社会なんて、みんな大して変わらない給料で、変なプライドや世間体に縛られながら生きているのだから。

編集部リンク補足
*1:日本経済の問題点は労働市場があまりにも硬直化しているせい
『金融日記』 2009/12/21 「労働市場改革の経済学 ―正社員保護主義の終わり― 八代尚宏」参照
http://blog.livedoor.jp/kazu_fujisawa/archives/51630684.html

*2:公務員と労働組合が支持母体の民主党
『金融日記』 2010/01/08 「この一年間で面白かった政治・経済の一般書5冊」参照
http://blog.livedoor.jp/kazu_fujisawa/archives/51639724.html

*3:派遣村
『金融日記』 2009/12/09 「派遣村はまた必ず出現する」参照
http://blog.livedoor.jp/kazu_fujisawa/archives/51625664.html

執筆: この記事は藤沢数希さんのブログ『金融日記』からご寄稿いただきました。

文責: ガジェット通信

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